Web集客を代理店に任せるか自社で行うかを決めるための整理の考え方
「Web集客は代理店と自社、どちらが正解か」を考える前に全体像を整理する
Web集客の主な手法と役割(SEO/広告/SNS/アフィリエイト)
一口に「Web集客」といっても、その中身はいくつかに分かれます。大きく分けると次の4つです。
| 手法 | 概要 | 特徴・向いているケース |
|---|---|---|
| SEO(検索エンジン最適化) |
Google検索などで自社サイトを上位表示させる施策です。 キーワード選定、コンテンツ作成、内部施策(サイト構造・タグ最適化)、外部施策(被リンク獲得)などが含まれます。 |
成果が出るまで時間はかかりますが、軌道に乗ると「半自動的に集客し続ける資産」になりやすい手法です。 中長期で安定したリード獲得を目指すBtoB企業や、広告費を抑えたい中小企業が土台として投資することが多く、オウンドメディア構築や記事コンテンツとの相性が良い点も特徴です。 |
| 広告(リスティング広告・ディスプレイ広告など) |
Google広告、Yahoo!広告などに出稿し、検索結果やバナー枠に広告を表示する方法です。
|
お金をかければすぐに配信でき、結果が出るのも早い一方で、止めればすぐに止まります。 広告費+手数料(代理店委託の場合は広告費の20〜30%が一般的)という投資になるため、LTVが高い商材やスケールを狙うECでよく使われます。短期キャンペーンや新サービスのローンチにも向いています。 |
| SNS広告・SNS運用 |
X(旧Twitter)、Instagram、Facebook、TikTokなどでの広告出稿やアカウント運用です。
|
BtoCや採用、ブランド認知などと相性が良い手法です。 近年は動画・ショート動画広告(Instagram Reels、TikTokなど)やUGC(ユーザー投稿)と組み合わせた施策が増えており、指名検索やSEOへの間接的な効果も期待できます。 |
| アフィリエイト |
ASP(アフィリエイトサービスプロバイダ)を通じて、ブロガーやメディア運営者に成果報酬で商品を紹介してもらう仕組みです。 |
広告費は「成果発生時のみ」のことが多く、固定費を抑えやすい一方で、管理やアフィリエイターとの関係構築に手間がかかります。 ASPの選定、報酬単価の設計、成果承認ルールづくり、禁止表現の管理など「制度設計」の難易度が高く、この部分を代理店に任せる企業も多い領域です。 |
実際には、これらを組み合わせてWeb集客全体を構成します。
たとえば「SEOで指名検索・比較検討層を拾い、広告で短期売上をつくり、SNSで認知とファンを増やし、アフィリエイトで新しい媒体を開拓する」といった形で、ポートフォリオとして考えるのが現実的です。
代理店運用と自社運用の違い
代理店運用
- 戦略設計から施策実行、分析・改善までを外部の専門会社に任せる形です。
- SEO代理店、広告運用代理店、アフィリエイト代理店、SNS運用代理店、総合型代理店などがあります。
- 費用構造は「月額固定」「広告費の◯%」「成果報酬」などが一般的です。相場感としては、SEOなら月7,500円〜50万円、広告運用なら月30万円〜といったイメージです。
- 最新のノウハウやツール、プラットフォームとのコネクションを活かしやすいことが特徴です。
- 多くの代理店はGoogle/Yahoo認定パートナーや大手ASPと連携し、AI最適化・独自ダッシュボード・自動レポートなどを活用して多数のクライアントを同時に運用しています。
自社運用(内製)
- 社内の担当者がSEOや広告、SNSなどを自分で企画・運用する形です。
- Google Analytics、Search Console、広告管理画面、各種SEOツールなどを自社で活用します。
- 費用は主に「人件費+広告費+ツール費用」です。代理店手数料がない分、外部コストは抑えやすい一方、社内工数を割く必要があります。
- ノウハウが社内に蓄積され、長期的には「Web集客を自社の強み」にしていきやすい点がメリットです。
- 特に最近はGoogleや各SNSの自動入札・自動最適化機能が進化しており、基礎を押さえれば中小企業でも自社運用で一定の成果を出しやすくなっています。
よくある勘違い
「代理店に任せればすぐ売上アップする」
- 実際には、商材の競合状況、LP(ランディングページ)の質、商品力、LTV(顧客生涯価値)など、代理店の外側にある要因も大きく影響します。
- KPIや目標、責任範囲を詰めないまま丸投げすると、「広告は出しているのに利益が出ていない」という状態になりがちです。
- 成果報酬型であっても、「どこまでを代理店の責任範囲とするか」をすり合わせておかないと、「クリックは増えたが売上は増えない」「リードは多いが質が低い」といった不満が残りやすくなります。
「自社でやれば必ずコストが安い」
- 手数料は削減できますが、その代わりに「担当者の人件費」「勉強・試行錯誤の時間」がかかります。
- ノウハウがない状態で広告を自社運用すると、短期的には「代理店手数料以上に無駄な広告費」を垂れ流すケースも珍しくありません。
- 特にリスティング広告やSNS広告は、キーワード設定やターゲティングを誤ると「クリックはされるが全く売れない」という事態が起こりやすく、月数十万円単位の機会損失になりえます。
「うちはBtoBだからWeb集客は向いていない」
- BtoBでもリード獲得や資料請求、セミナー集客など、Webで成果を出している企業は多数あります。
- 手法やKPIの設定をBtoB向けに設計すれば、代理店でも自社運用でも十分に戦うことが可能です。
- 例えば「資料請求◯件/月」「ホワイトペーパーDL◯件」「ウェビナー申込◯件」といった指標を設定し、SEO+コンテンツ+リスティング広告で中長期的にリード獲得の仕組みを作るのが定番です。
どちら向きかをイメージするためのチェックリスト
今の体制・予算・目標で「代理店向き/自社向き」をざっくり判定する
次の質問に答えてみてください。
-
Web集客の専任担当者はいますか?
・いない/兼務で手一杯 → 代理店寄り
・1人以上専任を置ける → 自社寄り -
月に投資できる広告・施策予算はいくらですか?
・〜10万円程度 → 自社寄り(または小規模な内製支援)
・30万円以上 → 代理店も十分検討対象
・100万円以上 → 代理店+自社のハイブリッドも現実的 -
いつまでに成果を出したいですか?
・3ヶ月以内に結果が欲しい → 広告系は代理店が有利
・1〜2年かけて土台を作りたい → 自社SEOやコンテンツも候補 -
Web集客を「自社の強み」にしたいですか?
・はい → 自社運用またはハイブリッド
・いいえ/そこまでこだわらない → 代理店寄り -
経営として「広告・マーケの専門用語」を追いかける余裕はありますか?
・あまりない → 実務は代理店、意思決定だけ社内が現実的
・多少はキャッチアップできる → 内製・ハイブリッドも視野に入る
これらを総合すると、次のようなイメージになります。
- 予算はあるが人がいない+早く結果が欲しい → 代理店向き
- 予算は限られるが、人と時間は多少割ける → 自社向き
- ある程度予算も人もある → ハイブリッド向き
実際の現場では、「最初は代理店メイン→半年〜1年かけて自社比率を増やす」といった移行パターンも多く、状態に応じて柔軟に組み合わせる前提で考えると判断しやすくなります。
ノウハウの蓄積状況から3タイプに分けて考える
-
ほぼノウハウなし
- 今までWeb広告をほとんどやっていない、SEOも手付かずである。
- 社内に「Google広告を触ったことがある人」がいない。
- → 序盤は「内製支援型の代理店+小さな自社テスト」がおすすめです。
- 月数万円〜の小規模予算でテストを回しながら、代理店からアカウント設計やレポートの見方を学び、1年ほどかけて基礎を固めるイメージです。
-
少し経験がある
- 自分で広告アカウントを作り、少額で回した経験がある。
- SEOの基礎は学んでいて、ブログ更新などはしている。
- → ハイブリッドに向きやすく、「自分たちでできる範囲」と「代理店に任せる範囲」を整理すると成果が出やすくなります。
- 例えば「運用は自社、戦略レビューと改善提案だけ月次で代理店に依頼」など、コンサル寄りの利用をすると費用を抑えつつ精度を上げられます。
-
既にある程度運用している
- 月数十万円〜数百万円単位で広告を回している。
- 社内にマーケ担当がいて、数字も見られている。
- → 「一部を代理店でブーストする」「コンサル・セカンドオピニオンとして代理店を使う」といった形が効果的です。
- 既存のアカウントを第三者に監査してもらい、「構造の見直し」「LTV前提の入札戦略」「新しい媒体(SNS、アフィリエイト)追加」といった打ち手を検討すると、伸び悩みを突破するきっかけになりやすいです。
まず整理したい「目的」と「期限」と「予算」
何のためのWeb集客かを明確にする
Web集客の「目的」があいまいなまま、代理店か自社かを決めるのは危険です。主な目的と、それに合いやすい手法は次のとおりです。
-
売上アップ(EC・店舗・サービス申し込みなど)
- 広告運用やLP改善、アフィリエイトが中心になりやすいです。
- 特にECでは「1注文あたりの利益」と「リピート率(LTV)」から、どこまで広告費を許容できるかを逆算し、その枠内で代理店を使うか自社で回すかを設計します。
-
リード獲得(資料請求・問い合わせ・セミナー申込など)
- BtoBなら、SEO+ホワイトペーパー+リスティング広告の組み合わせが王道です。
- 「1リードあたりいくらまで出せるか(許容CPA)」を先に決め、その範囲内で媒体配分や代理店費用を考えるとブレにくくなります。
-
認知拡大・ブランド構築
- SNS運用やSNS広告、動画広告などが主力になりやすいです。
- 直接のコンバージョンだけでなく、「指名検索の増加」「SNSフォロワー数」「動画再生数」など中間指標もKPIに含めることで、代理店とのコミュニケーションがスムーズになります。
目的が違えば、使うべき手法・KPI・求めるスキルセットも変わります。
目的を定めずに代理店を選ぶと、
- 成果報酬のアフィリエイト代理店に頼んだが、そもそもLTVが低くて採算が合わない。
- 認知が目的なのに、CV(コンバージョン)だけを追いすぎてブランドを傷つけた。
といったミスマッチが起こりがちです。
逆に目的を明確にしておくと、「短期売上を重視しているので広告運用に強い代理店を選ぶ」「長期のSEO基盤を作りたいので内製支援型を選ぶ」といった選び方がしやすくなります。
いつまでに・どれくらいの成果を出したいのか
短期(〜3ヶ月)で結果が欲しいケース
- 例:新サービスのローンチ、決算期までの売上目標達成、イベント集客など。
- リスティング広告やSNS広告など、「お金をかければすぐ配信できる施策」が中心になります。
- この場合、初動から最適化を早く回せる代理店が有利になりやすいです。
- ただし短期で黒字化を求めすぎるとテストが十分にできず、将来的な最適解を逃すこともあるため、「3ヶ月は学習期間」と割り切るかどうかも合わせて決めておきます。
中長期(1〜2年)で土台をつくりたいケース
- 例:検索からの安定的なリード獲得、オウンドメディア構築、ブランド認知の継続的な向上など。
- SEO、コンテンツマーケティング、SNS運用など、時間を味方につける施策が中心になります。
- 長期で考えられるなら、自社運用を育てていく価値が大きくなります。
- 実務としては「半年ごとのマイルストーン(記事本数・流入数・CV数)」を設定し、必要に応じてSEOコンサル型の代理店に伴走してもらうケースが増えています。
| 期間 | 向きやすい運用主体 | 主な施策 |
|---|---|---|
| 短期(〜3ヶ月) | 代理店が有利 | リスティング広告、SNS広告、短期キャンペーン |
| 中長期(1〜2年) | 自社運用が有利 | SEO、コンテンツマーケティング、継続的なSNS運用 |
実際には「短期は代理店で広告、長期は自社でSEO・コンテンツ」といった役割分担をすることで、リスク分散と学習を同時に進める企業が増えています。
投資できる金額と社内リソースを見える化する
1. 月いくらまで広告・施策に回せるかを決める
- 「広告費」だけでなく、「代理店手数料」や「ツール費用」も含めて考えます。
| パターン | 内訳 | 月額イメージ |
|---|---|---|
| 代理店+広告 | 広告費20万円/月+代理店手数料20% | 総額24万円/月 |
| 自社運用+広告 | 広告費20万円/月+担当者人件費 | 外部コストはほぼ20万円 |
SEOやオウンドメディア運用の代理店は「月10〜30万円の固定費+初期費用」という形も多く、1年単位でのコミットが前提になるケースが一般的です。
2. 社内でどれくらい工数(時間)を割けるかを把握する
- 「マーケ専任で1人つけられるのか」「既存メンバーが週5〜10時間程度なら出せるのか」で大きく変わります。
- 目安として、広告+SEO+分析を1人で見る場合、少なくとも月30〜40時間程度は欲しいところです。
- それ以下しか出せない場合は、「自社で基本方針+一部実務、細かい運用は代理店」といった分担の方が、成果とコストのバランスが良くなりやすいです。
3. 「お金はあるが人がいない」「人はいるが経験ゼロ」の場合の考え方
| 状況 | 考え方・方針 |
|---|---|
| お金はあるが人がいない |
|
| 人はいるが経験ゼロ |
|
代理店に任せる場合:向いている企業・期待できること・注意点
代理店に向いているケース
次のような状況なら、総じて「代理店が有利」になりやすいです。
- とにかく早く結果を出したい(3〜6ヶ月で売上・リードを増やしたい)。
- 社内にWebマーケティングの担当者がいない、もしくは兼務で手一杯である。
- 広告費として月30万円以上を継続的に投下できる。
- 商品・サービスのLTVが高く、広告投資の回収見込みが立ちやすい。
- 社内の意思決定スピードが速く、「提案に対してすぐ動ける」。
一方、月数万円の広告予算で、社内にほとんどリソースがない場合は、フルサービスの代理店よりも「小さな内製支援」や「スポットコンサル」の方が合いやすいことも多いです。
また、ニッチ業界でクリエイティブに専門知識が必要な場合は、「運用だけ代理店・原稿案は自社主導」といったハイブリッドの方が機能しやすいケースもあります。
代理店に任せると何をしてくれるのか
典型的な代理店の仕事の流れは次のとおりです。
- 現状分析・ヒアリング
事業モデル、過去の施策、競合状況、ターゲット、LTVなどを整理します。 - 戦略設計
どの媒体を使うか(SEO、リスティング広告、SNS広告、アフィリエイトなど)を決め、KPIと目標数値(CV数、CPA、ROASなど)を設計します。 - 実装・運用開始
アカウント設計、キーワード設定、クリエイティブ制作、タグ設置などを実施します。 - モニタリングと改善
日次・週次でデータを見ながら、入札調整、クリエイティブ差し替え、配信面の最適化などを行います。 - レポーティング・提案
月次レポートで結果を共有し、次月以降の改善案を提案します。
代理店の種類と特徴
-
SEO代理店
- キーワード戦略、コンテンツ企画、内部施策、外部施策などをサポートします。
- 内製化支援型(社内にノウハウを移す前提)と、完全代行型があります。
- オウンドメディアの立ち上げから記事制作・分析まで一括で請け負う会社も多く、月数十万円規模の継続契約になることが一般的です。
-
広告代理店
- Google広告、Yahoo!広告、SNS広告などの運用代行がメインです。
- LTVをもとにした入札戦略やAI最適化(自動入札、オーディエンス最適化)なども活用します。
- 大手〜中堅代理店は独自の運用ルールやダッシュボードを持っており、複数媒体を横断して成果を最適化するケースも増えています。
-
総合型代理店
- サイト制作、LP制作、SEO、広告、SNS、アフィリエイトなど、Web全体を一貫して支援します。
- 1社にまとめられる一方で、特定領域での専門性は各社で差があります。
- 「コーポレートサイト制作+集客プラン」「ECサイト構築+広告運用」といったパッケージで提案されることも多く、何が含まれているか事前に確認することが重要です。
多くの代理店は、GoogleやYahooの認定パートナー、ASPとのコネクションを持ち、AI最適化ツールや独自ダッシュボードで効率的に運用しています。
これにより、自社だけではアクセスしづらい大型メディアやアフィリエイターとのタイアップ、ベータ版機能の先行利用などのメリットを享受できるケースもあります。
コスト構造と料金相場を理解する
| 料金パターン | 概要 | 代表例 |
|---|---|---|
| 月額固定 |
毎月決まった金額を支払う形。 戦略+実行+レポートを包括的に含むことが多い。 |
|
| 広告費の◯% |
広告費に連動して手数料が変動する形。 |
|
| 成果報酬型 |
成果(CV・売上など)に応じて支払う形。 リスクは抑えられるが、単価は高めになりがち。 |
|
料金は「何をどこまでやってくれるのか」とセットで評価することが重要です。
安さだけで選んで失敗しやすいパターン
- 異常に安い(例:月3万円でSEO全部やります)ケース
- 実作業がほとんど行われない。
- 自動レポートを送るだけ。
- 外部の質の低いリンクを大量に張られるリスク。
- 広告運用で「手数料5%」など極端に安い場合
- 担当者1人あたりの担当社数が多くなり、細かなPDCAが回らない。
代理店活用のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
|
メリットが活きやすい条件
- 広告費が一定以上あり、スケールさせる余地がある。
- 社内に窓口となる担当者がいて、必要な情報を提供できる。
- 結果が出るまでの時間とコストを許容できる。
- 「代理店に任せっぱなし」ではなく、「経営や事業側も数字を理解しよう」という姿勢がある。
デメリットが強く出やすい条件
- 予算がギリギリで、「短期で必ず黒字にしたい」と考えている。
- KPIや責任範囲があいまいで、丸投げになっている。
- 社内に担当者がおらず、代理店の報告を精査できない。
- 「とりあえず有名だから」「安いから」といった理由だけで選んでいる。
良い代理店と悪い代理店の見分け方
事前に必ず確認しておきたいポイント
- KPIの設定
- 「売上」「CV数」「CPA」「ROAS」など、何を成功とするかを合意します。
- 中間指標(クリック数、CTR、セッション数など)だけでなく、事業インパクトに近い指標をセットで追うかどうかも確認します。
- 契約期間・解約条件
- 最低契約期間(例:6ヶ月)や、成果が出なかった場合の扱い(途中解約の可否など)を明確にします。
- SEOやコンテンツは成果に時間がかかるため、短期での解約条件や途中での方向転換のルールも押さえておきます。
- レポート内容・頻度
- 月次レポートでどこまでのデータ・分析を出してくれるか。
- 口頭だけでなく、数値と仮説が整理されたレポートかどうか。
- 「結果の羅列」だけでなく、「なぜそうなったか」「次に何をするか」まで書かれているかが重要です。
- 担当者の経験
- 担当者がどれくらいの規模・業種を経験しているか。
- 担当会社数(5〜10社程度が適正で、30社以上持っていると1社あたりの時間が取りにくいことがあります)。
- 可能であれば、実際に担当になる人と事前に話し、「こちらの課題をどのように整理してくれるか」を見ておくと安心です。
見積もり比較の仕方と、よくある失敗例
- 見積もりは最低でも2〜3社から取り、月額費用だけでなく「何をどこまでやるか」の項目を並べて比較します。
よくある失敗例としては、次のようなものがあります。
- 最安値だけで選んだ結果、ほとんど改善提案がなく「配信しているだけ」になった。
- 高額な総合プランを契約したが、自社の規模に合わず使いきれなかった。
- KPIやスケジュールが曖昧なままスタートし、「思っていたより成果が出ていない」と不満だけが残った。
- 解約時にアカウントやデータの引き継ぎ条件を決めておらず、次の代理店や自社担当がゼロから構築し直すことになった。
自社で行う場合:向いている企業・必要な体制・リスク
自社運用に向いているケース
次のような状況なら、「自社運用が有利」になりやすいです。
- 予算は限られるが、マーケ担当を1人以上置ける、あるいは育てられる。
- 1〜2年スパンでWeb集客を「自社の武器」にしたい。
- 過去に代理店に任せたがうまくいかず、ブラックボックス感に不信感がある。
- ニッチな業界・商材で、自社の業界知識が非常に重要である。
自社運用は「最初の数ヶ月〜1年」が特に大変ですが、その山を越えると長期的なリターンが大きくなります。
人材育成の観点でも、「Webマーケティングのわかる社員」が社内にいることは、採用・営業・新規事業など他の領域にも良い影響を与えやすくなります。
自社運用で実際に行うことの全体像
SEOで必要な作業
- キーワード選定(顧客が検索しそうな言葉のリサーチ)。
- コンテンツ企画・作成(記事、LP、サービスページなど)。
- 内部施策(タイトルや見出し、サイト構造の最適化)。
- 効果測定と改善(順位・流入・CVを見て記事のリライトなどを行う)。
- 必要に応じて外部施策(被リンク獲得、PR施策)も検討します。
広告運用で必要な作業
- アカウント構成設計(キャンペーン、広告グループ、キーワード)。
- 入札管理(入札額、ターゲティングの設定・調整)。
- クリエイティブ制作(広告文、バナー、動画など)。
- 日次・週次の数値チェック(クリック率、CV数、CPAなど)。
- テストと改善(ABテスト、配信面の整理、除外キーワード設定など)。
- 媒体ごとのポリシー(審査規定)への対応も発生します。
使用ツールのイメージ
- Google Analytics(GA)。
- Google Search Console。
- 各種広告管理画面(Google広告、Yahoo!広告、Meta広告など)。
- 必要に応じてSEOツール(例:Ahrefs、Semrush など)。
- 表計算ソフトやダッシュボードツール(Looker Studioなど)でレポートを自作するケースも増えています。
これらを「自分たちで触れる状態」にするのが、自社運用のスタートです。
最初から完璧を目指す必要はなく、「毎月数字を見て、1つは改善する」を続けることが重要です。
どれくらいのスキルと時間が必要か
初心者が最低限身につけたい知識
- 基本的なKPI概念(PV、セッション、CV、CVR、CPA、ROASなど)。
- 検索キーワードの考え方(顕在ニーズ/潜在ニーズ)。
- 広告プラットフォームの基礎(キーワードマッチタイプ、入札戦略など)。
- GA・Search Consoleでの基本的な見方。
- 各媒体のガイドライン(禁止表現、NG業種)の理解。
月どれくらい時間を割ければ現実的に回せるか
- 小〜中規模の事業で、SEO+少額広告+簡単なSNS運用を1人で見る場合、最低でも月30時間(週7〜8時間)ほどは欲しいところです。
- 本格的に伸ばしていきたい場合は、専任1名またはチーム体制が理想的です。
- コンテンツ制作量を増やしたい場合は、外部ライターや制作会社との連携も前提に入れておくと無理がありません。
社内1人体制とチーム体制の違い
| 体制 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|
| 1人体制 |
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| チーム体制 |
|
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自社運用のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
|
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自社運用で失敗しやすいパターンと回避策
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パターン1:担当者1人に丸投げして、経営が数字を見ない。
回避策:月次で経営と担当者が数字を共有する場を設け、「どの数字を見て判断するか」を揃えます。 -
パターン2:勉強ばかりで実践が少なく、成果に結びつかない。
回避策:小さな広告予算・少数のキーワードでテストを回し、実データから学びます。「毎月最低1本はテスト施策を打つ」と決めておくと、インプット偏重から抜け出しやすくなります。 -
パターン3:SEOに過度な期待をして、1年待ってもほぼ何もしていない。
回避策:更新計画を立て、月何本/週何本といった具体的な目標を決めて運用します。途中で順位や流入の変化を見ながら、テーマやキーワードを微調整する「中間レビュー」を組み込むと効果的です。
自社運用を成功させるための最低限のステップ
-
情報収集
基本的な本や公式ガイド(Googleのヘルプ、公式ブログ)からキャッチアップします。
同時に、自社と同じ業界・規模の成功事例を調べ、「どのチャネルで成果を出しているか」を把握します。 -
小さくテスト運用
月数万円レベルの広告からスタートし、施策と結果の関係を体感します。
SEOも、まずは10〜20本のコンテンツから始めるイメージです。
最初の3ヶ月は「黒字化」よりも「仕組みと数字の理解」をゴールに置くと、必要以上に焦らずに済みます。 -
KPI設定
「お問い合わせ◯件/月」「CVR◯%」「CPA◯円以内」など、数字で目標を置きます。
可能であれば「3ヶ月目でここまで、半年後にここまで」といった中間目標も決めておきます。 -
社内の役割分担
企画・運用・制作・分析の役割を誰が担うのかを明確にします。
外注ライターやデザイナーをうまく使うのも一つの方法です。
すべてを内製にこだわるのではなく、「コアは社内・手足は外部」という考え方をすると、負荷を抑えつつスピードを出せます。 -
ツール選定
最初は無料〜低価格のツールで十分です。
必要に応じて、SEOツールや広告最適化ツールを追加していきます。
ある程度運用規模が大きくなってきた段階で、ダッシュボードや自動レポートツールを導入すると、日々の分析コストを下げられます。
「代理店か自社か」の二択にしない:ハイブリッドという選択肢
代理店+自社のハイブリッドでうまくいくパターン
ハイブリッドとは、「全部代理店」「全部自社」の中間の形です。代表的なパターンは次のとおりです。
-
立ち上がりは代理店、徐々に自社へ移行
- 1年目:代理店主導でアカウントを構築し、社内担当者は運用方法を学ぶ。
- 2年目:主要な運用を自社担当が行い、代理店はコンサル・スポット支援に切り替える。
- このような「内製化支援」を前提にした代理店も増えており、最初から「最終的には自社運用にしたい」と伝えておくと、設計やレポートの内容も変わってきます。
-
SEOは代理店、広告は自社
- SEOの戦略設計・コンテンツ企画は専門性が高く、代理店がリードします。
- リスティング広告は社内で数字を見ながらチューニングします。
- 逆に「広告は代理店・コンテンツ制作は自社」という分担もあり、どこに自社の強みを置くかで決めるのがポイントです。
-
自社が戦略・コンテンツを握り、運用の手足を代理店に任せる
- 企画・KPI・方向性は社内で決定します。
- 各媒体の細かい運用やレポート作成は代理店に依頼します。
- 「戦略は自社主導で動かしたいが、日々のオペレーションまでは手が回らない」という状態を解消しやすい分担です。
また、内製化支援型代理店という選択肢もあります。これは最初から「ノウハウを社内に移す」ことを目的にした契約で、次のような特徴があります。
- 月額は比較的抑えめ。
- 定例ミーティング・運用レビュー・改善指導が中心。
- 実運用は社内担当が行う。
「すぐに全部を任せるのは不安だが、独学だけで進めるのも心配」という企業には、このタイプがマッチしやすいです。
内製化を見据えた代理店の使い方
ハイブリッドを前提とするなら、最初の契約段階から次の点を確認しておきます。
-
ノウハウ移転をどこまで含めるか
- 「運用画面の共有」「具体的な設定内容の説明」「社内勉強会の開催」などを契約事項に入れるかどうか。
- 可能であれば「チェックリスト」「設定マニュアル」「レポートテンプレート」など、資産として残る形での提供も相談します。
-
レポートやミーティングで学ぶポイント
- 数字の見方。
- 施策の判断基準(なぜそのキーワード・ターゲットなのか)。
- 改善の優先順位の付け方。
- 「その判断を自社で再現できるようになること」をゴールに、疑問点を積極的に質問していく姿勢が重要です。
-
並走期間と移行タイミングの目安
- 例:最初の半年は代理店主導、次の半年は共同運用、その後自社メインへ移行する。
- あらかじめ「いつ・どの範囲を自社に引き継ぐか」のラフなロードマップを作っておくと、双方の期待値が揃いやすくなります。
こうした前提を共有しておくことで、「代理店にお金を払い続けないと何もできない」という状態から抜け出しやすくなります。
結果として、「短期は代理店でスピードを出し、長期は自社ノウハウでコストを抑えながら伸ばす」という理想に近づけていけます。
結論の出し方テンプレート
ステップ1:現在地を整理する
まずは次の4つを紙やスプレッドシートに書き出してみてください。
- 目的
売上アップ/リード獲得/認知拡大/採用強化 など。 - 期限
いつまでに、どのレベルの成果を出したいのか(3ヶ月/1年など)。 - 予算
月いくらまで広告・施策に回せるか(広告費+代理店費用)。 - 社内リソース
マーケ担当は何人いるか、週何時間まで割けるか、スキルレベルはどの程度か。
この4つが見える化されると、「代理店か自社か」「ハイブリッドか」の判断が一気にしやすくなります。
同時に、「今足りないのはお金なのか、人なのか、ノウハウなのか」も見えやすくなり、次に打つべき一手が明確になります。
ステップ2:「代理店」「自社」「ハイブリッド」のどれを第一候補にするか決める
次のようにざっくりと当てはめてみてください。
-
すぐに結果が欲しい+人がいない → 代理店を第一候補にする
- 特に広告運用は代理店寄りで考えます。
- 併せて、「どこまでノウハウを移転してもらうか」も最初に決めておくと、中長期の選択肢が広がります。
-
予算少なめ+長期的に育てたい → 自社を第一候補にする
- SEOやコンテンツ、少額広告からスタートし、徐々にスキルを育てます。
- 必要に応じてスポットコンサルや内製支援型代理店を組み合わせると、独学よりも失敗コストを抑えやすくなります。
-
すでに少し運用経験がある → ハイブリッドを第一候補にする
- 一部を代理店でブーストしつつ、自社の強みも伸ばしていきます。
- 「何を社内で握り、何を外部に任せるか」を明文化しておくと、役割分担がクリアになります。
完全にどれか一つに決めきる必要はありませんが、「今から半年〜1年のメイン方針」としてどれを軸にするかを決めておくと、迷いが減ります。
状況が変われば、方針も柔軟に見直して構いません。
ステップ3:次に取る具体的な一歩を決める
代理店候補の探し方・問い合わせ時に聞くこと
- 業界や規模が近い事例があるか。
- 自社の目的に対して、どの手法をどう組み合わせる提案をするか。
- KPI・契約期間・レポート内容・担当者体制。
- ノウハウ移転や内製化支援にどこまで対応しているか。
- アカウントやデータの所有権・解約時の引き継ぎ方法。
自社運用の場合に最初の1〜3ヶ月でやること
- 現状の数値を把握する(アクセス数、CV数、CVRなど)。
- 目的・KPI・予算を決める。
- 小さな広告キャンペーンや、数本のコンテンツ制作からテストを始める。
- 毎月「仮説→実行→振り返り」のサイクルを回す。
- 必要に応じて、月1回程度のスポット相談先(コンサル・詳しい知人など)を確保しておく。
迷ったまま動かない期間を作らないための小さなアクションプラン
- 1週間以内に、候補となる代理店を2〜3社ピックアップして資料請求する。
- 同時に、社内で「どこまでリソースを割けるか」を話し合うミーティングを設定する。
- 1ヶ月以内に、小さなテスト施策(広告またはコンテンツ)を1つ実行してみる。
「Web集客は代理店と自社、どちらが正解か」は、会社ごと・フェーズごとに変わります。
ここまでのステップで現在地と目的を整理し、「代理店」「自社」「ハイブリッド」の中から、自社にとって現実的で納得感のある選択肢を絞り込んでいくことが大切です。
Web集客を「代理店か自社か」で迷うときは、まず手法や選択肢の前に、自社の目的・期限・予算・体制を整理することが出発点になります。
売上・リード・認知のどれを重視するのか、いつまでにどの程度の成果を求めるのか、月いくら投資できて、社内でどれくらい工数を割けるのか——この4点を書き出すだけでも、適したやり方が見えやすくなります。
そのうえで、「すぐに結果を求めるなら代理店寄り」「長期的に土台を育てるなら自社寄り」「ある程度経験や人員があるならハイブリッド」と大まかな方針を決め、半年〜1年くらいの軸を定めてみてください。
完璧な正解を探すよりも、小さく試しながら配分を調整していく発想が現実的です。迷って手を止める期間をつくらず、一歩ずつ検証を重ねていきましょう。