Webで新規顧客を増やす前に整理したい「数字のチェックリスト」
「新規顧客をWebで増やしたい」と考えたとき、多くの方がまず思い浮かべるのは、InstagramやGoogle広告、SEO対策といった施策ではないでしょうか。ところが、こうした手段だけを増やしても、思ったほど成果につながらないケースが少なくありません。
成果が伸び悩む背景には、「1人の顧客からどれくらい売上と利益が見込めるのか」「その獲得にいくらまで使えるのか」といった根本的な数字があいまいなまま、集客だけを強化しようとしている状況があります。
本記事では、平均単価やリピート回数、LTV、許容CPA、現状のアクセスやCVRなどを整理し、「いまの事業がどれくらい新規顧客を受け止められる状態か」を数字で確認していきます。そのうえで、Web経由の新規顧客獲得を無理なく伸ばすための考え方を、チェックリスト形式でまとめました。
平均単価・リピート回数
平均単価
1人あたりの平均購入額はいくらかを把握できているか確認します。
リピート回数
一定期間内に、1人あたり平均して何回購入してくれるかを把握できているか確認します。
粗利率
粗利率の把握
売上に対して、どれくらいが粗利として残るかを把握できているか確認します。
仕入・外注費・決済手数料なども含めて、概算で問題ありません。
LTV(顧客生涯価値)
LTVの算出方法
「平均単価 × 購入回数 × 粗利率」で、1人あたりのLTV(顧客生涯価値)を算出できているか確認します。
BtoBの場合の考慮点
BtoBの場合は、契約継続期間やアップセル・クロスセルによる売上も加味してLTVを算出できているか確認します。
許容CPA(1人あたりの獲得単価)
許容CPAの設定
LTVのうち、何%までを新規顧客獲得コストとして使ってよいか、許容CPAを明確に設定できているか確認します。
事業としての採算ライン
設定したCPAの水準であれば、事業全体として黒字化できるラインになっているかを確認します。
目標新規顧客数(または新規リード数)
新規顧客数の算出
「売上目標 ÷ 平均購入額(またはLTVの回収期間)」から、月間で必要な新規顧客数を算出できているか確認します。
BtoBの場合の逆算
BtoBの場合は、「リード数 → 商談数 → 成約数」の各ステップの転換率を踏まえて、必要な新規リード数・商談数・成約数を逆算できているか確認します。
現状のアクセス数
サイト全体のアクセス
サイト全体で、月間どれくらいのアクセス数(セッション数)があるかを把握できているか確認します。
チャネル別のアクセス内訳
広告、自然検索、SNS、紹介など、チャネル別のアクセス状況をおおまかに把握できているか確認します。
現状のCV数・CVR
CV数の把握
月間で、問い合わせ・購入・資料請求などのCV(コンバージョン)が何件発生しているかを把握できているか確認します。
CVRの把握
CVR(CV数 ÷ アクセス数)がどれくらいかを把握しているか、またチャネルごとのCVRの違いを把握できているか確認します。
必要アクセス数の試算
必要アクセス数の計算
「目標新規顧客数 ÷ 現状(または目標)のCVR」で、達成のために必要なアクセス数を計算できているか確認します。
現状とのギャップの把握
算出した必要アクセス数と、現状のアクセス数とのギャップがどれくらいあるかを把握できているか確認します。
予算と想定CPC
月間予算の設定
月に投下できるWebマーケティング予算はいくらか(テスト期間の3ヶ月分も含めて)を明確にできているか確認します。
想定CPCの設定
業界相場やこれまでの実績を踏まえ、想定されるCPC(クリック単価)がどれくらいかを把握できているか確認します。
クリック数とアクセス数の整合
「予算 ÷ CPC」で概算クリック数を算出し、そのクリック数が、目標達成に必要なアクセス数と整合しているか確認します。
チャネルごとの役割・期待値
リスティング広告
顕在層からどれくらいのCVを獲得するか、その際の想定CPA・CPC・CVRをどの程度と見込むかを整理します。
SNS広告
どのようなセグメント(属性・興味関心など)を狙うか、そこからどれくらいのCVを期待するかを明確にします。
SEO・オウンドメディア
半年〜1年のスパンで、どれくらいのアクセス増加・CV増加を目標とするかを設定します。
MEO・店舗向けSNS
来店数・予約数をどれくらい増やしたいか、具体的な目標を設定します。
測定・改善の体制
計測ツールの導入
Google AnalyticsやSearch Console、各種広告の管理画面など、基本的な計測ツールの導入ができているか確認します。
主要CVの計測
フォーム送信、資料ダウンロード、電話タップ、LINE追加など、主要なCVが計測できる設定になっているか確認します。
定例レビューと判断基準
毎週または毎月の定例レビューで「どの数字を見るか」と「どの基準で意思決定するか」が明確に決まっているか確認します。
運用ルール・意思決定基準
CPAに関する停止・見直し基準
CPAが許容CPAを何ヶ月連続で上回ったら広告配信を止めるか、あるいは見直すかといった基準を決めているか確認します。
新規施策の実施ルール
新しい施策(新規チャネル・キャンペーンなど)を試す際の、最低予算と最低実施期間のルールを設定しているか確認します。
外部パートナーとの目標共有
代理店や外部パートナーに運用を任せる場合でも、「目標CPA」「目標CV数」「LTV」などの指標を自社で定義し、共有できているか確認します。
数字にもとづく判断ができる状態をつくる
ここまでの項目をあらかじめ整理しておくことで、
- この目標のために、どのチャネルをどれくらい使うか
- どの程度の数字が出れば「成功」とみなすか
- どこまでが許容範囲で、どこからがNGなのか
といった判断を、最初から数字にもとづいて行えるようになります。
「新規顧客をWebで増やしたい」と考えたときは、InstagramやGoogle広告といった具体的な手段にすぐ飛びつくのではなく、ここまでのチェックリストを使い、
目標新規顧客数・許容CPA・現状の集客力
という3つの数字をまず固めておくことが重要です。
一見遠回りに見えるかもしれませんが、このプロセスを踏むことが、結果的には最短の近道になります。
Webから新規顧客を増やそうとすると、どうしても「どの施策をやるか」に意識が向きがちです。しかし、本来は「1人あたりでどれくらい利益が見込めるのか」「その獲得にいくらまでかけてよいのか」「現状どれくらい集客できているのか」といった前提の数字を固めることが先です。
本記事で整理してきたように、平均単価・リピート回数・粗利率からLTVを把握し、許容CPAを決めたうえで、目標新規顧客数と必要アクセス数を逆算していくことで、ようやくInstagramや広告、SEOといった手段の妥当性や優先順位が見えてきます。
施策選びに迷いがあるときほど、ここで挙げたチェックリストを使い、「目標新規顧客数」「許容CPA」「現状の集客力」の3つの数字を見直してみてください。数字を土台にした判断に切り替えることで、限られた予算と時間を、より納得感のあるかたちで投下しやすくなります。