「Webマーケティングを強化したいが、社内に知見がない」。そんな状態で焦ってSEOや広告に手を出すと、時間も予算も消耗しがちです。本記事では、担当者不在・分析できない・何から始めればよいか分からないといった状況から一歩抜け出すために、中小企業が最初に整えておきたい準備と考え方を整理してお伝えします。
社内にWebの知見がない会社が最初に取り組むべき準備
「社内にWebの知見がない」状態で、まず確認すべきこと
そもそも何に困っているのかを整理する
問い合わせ不足、認知不足、広告費の無駄遣いなど、具体的な課題を書き出します。目的が曖昧なまま施策を始めると、取り組みが迷走しがちです。
特に中小企業では、「なんとなくWebをやらないといけない気がする」という動機だけでスタートし、検索流入・SNS・広告に同時多発的に手を出して失速し、「Webは効かない」という誤解だけが残るケースがよくあります。
まずは「売上向上」「採用強化」「既存顧客のロイヤルティ向上」など、経営課題とのつながりも含めて整理しておくと、その後のKPI設計がしやすくなります。
「担当者不在」「分析できない」「何から始めていいか分からない」の3大パターン
自社の課題を、「担当者がいない」「分析できない」「何から始めていいか分からない」という3つのパターンで整理します。
- 担当者がいない:意思決定が遅れる
- 分析できない:改善のサイクルが回らない
- 何から始めていいか分からない:手が止まる
調査では、「知見不足」が成果不振要因の31%、「分析不足」が23%、「リソース不足」が18.5%と、これら3つがセットで発生していることが分かっています。自社の状態を「人(担当者)」「分析」「スタート地点」という3つの軸で切り分けておくと、「まず人を決めるべきか」「簡易レポートだけでも見られる体制が必要か」など、打ち手の優先順位を明確にできます。
自社はどのパターンに近いかを簡単にチェックする
現状のタスク(誰が何をしているか)と、データ(アクセスや広告の基本数値)の有無を基準に、自社の状態を分類します。
例えば、次のようなチェック項目を一覧化し、◯×をつけていくだけでもボトルネックが見えてきます。
- サイトはあるが更新担当が曖昧
- GA4は入っているが誰も見ていない
- 広告は代理店任せでレポートも読み解けない
ここで完璧な棚卸しを目指す必要はありません。「何が分からないかが分かる」レベルまで把握できていれば十分です。
Webマーケティングの全体像をざっくり押さえる
中小企業が知っておけば十分な4つの基本(SEO/広告/SNS/自社サイト)
中小企業がまず押さえておくべき基本は、次の4つです。
- SEO:検索からの集客を安定させる基盤
- 広告:短期的に成果を出しやすい即効性の手段
- SNS:ファンや見込み顧客との関係構築
- 自社サイト:問い合わせ・資料請求・来店予約などのコンバージョンを生む場所
2020年代以降は、AI検索を意識したコンテンツ作りも重要になりつつありますが、最初の一歩としては、上記4つを「顧客との接点をつくる仕組み」として理解しておけば十分です。
重要なのは、どのチャネルも単独の「点」ではなく、「自社サイトで行動してもらうための入口」としてつながっていることを意識することです。
BtoBとBtoCでどこが違うか
BtoBとBtoCでは、Webマーケティングの重点が異なります。
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BtoB:リードの質と関係構築が重要
- ホワイトペーパーのダウンロードやセミナー申込など、「営業につなぐための名刺獲得(リード獲得)」が主なKPIになります。
- MAツールやメルマガなどでナーチャリング(見込み顧客の育成)を行う流れが一般的です。
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BtoC:拡散性と購入導線の最適化が重要
- 認知から購入までの距離が短いことが多く、LP(ランディングページ)やECサイトのCVR(コンバージョン率)改善が成果に直結します。
いずれの場合も、「営業プロセス全体のどこをWebで補強するか」を先に決めておくと、チャネル選択のミスが起きにくくなります。
「全部やる」のではなく「やらないこと」を決める
リソースが限られる中小企業では、Web施策を「全部やる」のではなく、優先すべきチャネルを1〜2つに絞ることが重要です。
社内に知見がない段階で、SEO・広告・SNS・メルマガ・動画など、あれもこれもと同時に進めると、どれも中途半端になりやすく、ノウハウも蓄積されません。
一方で、例えば次のように「やること・やらないこと」を明確にすると、PDCAのスピードと学習効率が一気に高まります。
- 「今年はSEOと既存顧客向けメルマガに集中する」
- 「まずはリスティング広告とLP改善に絞る」
外注に丸投げすると危険な理由
なぜ外注依存になりやすいのか
社内にWebの知見がない場合、「即戦力がほしい」という理由から、すべてを外注に任せがちです。しかし、その場合、判断基準やノウハウが社内に残りにくくなります。
日本の中小企業では、「社内に詳しい人がいないから、全部代理店にお願いする」という構図が長く続いてきました。その結果、毎年の外注費だけが積み上がり、自社側には「何がうまくいったのか/いかなかったのか」を判断する材料が蓄積されない状況に陥りがちです。
さらに、代理店の担当営業が変わるたびに方針も変わり、過去の学びがリセットされてしまうリスクもあります。
ありがちな失敗パターン(よくある3つの誤解)
外注活用で起きがちな誤解として、次の3つが挙げられます。
- 外注すれば成果が保証される
- 数字の管理はすべて代理店に任せてよい
- 契約内容を細かく決めればすべて解決できる
実際には、代理店の役割は「与えられた予算や条件の中で最適化すること」であり、ビジネス全体の成功を保証できるわけではありません。
また、レポートを受け取っても、社内で内容を理解し、次の一手を考えられる人がいなければ、単なる「結果報告」で終わってしまいます。契約書も責任範囲を明確にするためのものであり、戦略設計や社内体制づくりまでをカバーできるとは限りません。
外注を使っても「社内に知見を貯める」やり方に変える
外注を活用しながらも、ノウハウが社内にたまる仕組みに変えていくことが重要です。
具体的には、次のようなルールや運用を行います。
- 自社側で「キャンペーンの目的・ターゲット・訴求軸」を明文化したブリーフを作成する
- レポートは単なる数値一覧ではなく、「打ち手/結果/考察」をセットで提出してもらう
- レポートや提案資料、会議の議事録は、社内wikiや共有ドライブに保存してストックする
こうした取り組みを続けることで、良かった施策・失敗した施策の両方が社内のケーススタディとして蓄積され、数年後には外注に全面的に頼らなくても判断できる土台が整っていきます。
最初の一歩として必ず整えたい「3つの準備」
1. 目的とKPIをざっくり決める
「とりあえず問い合わせを増やしたい」が危険な理由
「とりあえず問い合わせを増やしたい」という目標設定は、一見分かりやすいようでいて、実はリスクがあります。
問い合わせの「数」だけを追いかけ、質を無視すると、対応コストばかりが増えてしまうためです。特にBtoBでは、次のような問い合わせが増えると、営業現場の負担が急増します。
- 学生や競合からの問い合わせ
- 対象外の地域や業種からの問い合わせ
その結果、「Web経由の案件は質が悪い」という評価につながりかねません。問い合わせ数だけではなく、「成約率」「商談化率」も合わせて見ることで、マーケティングと営業の評価軸を揃えることが重要です。
売上・リード・認知…どれを優先するかの決め方
KPIを決める際は、経営目標と営業のキャパシティを基準に、優先順位をつけます。
例えば、次のような考え方です。
- 「今年は新規顧客の売上を◯%伸ばす」という方針がある場合
- 新規リード数や新規顧客からの売上をKPIに設定します。
- 既存顧客のLTV(顧客生涯価値)向上が重要な場合
- メルマガ開封率や既存顧客のリピート率などを指標とします。
営業リソースが限られる場合は、「商談化しやすいリードを厳選して獲得する」方向に振り切ることも有効です。
小さく始めるための現実的なKPI設定例
最初から精緻なモデルを作る必要はありません。小さく始め、検証を繰り返しながら調整していく方が、現実的で続けやすいです。
例えば、次のようなシンプルなKPI設定から始めます。
- 「3か月でサイト訪問数を◯%増やす」
- 「半年でSEO経由の問い合わせを月5件にする」
目安として、「月間アクセス数 × CVR」という形で考えるとイメージしやすくなります。
| 例 | 月間アクセス | CVR | 想定問い合わせ件数 |
|---|---|---|---|
| 現状イメージ | 1,000件 | 1% | 10件 |
重要なのは、次のポイントを1〜2つに絞り、継続して追いかけることです。
- どのチャネルからの流入を増やしたいのか
まとめとして押さえておきたいのは、「社内にWebの知見がない状態でも、いきなり施策に飛びつかない」という姿勢です。
まずは、自社がいま何に困っているのかを具体的な言葉で整理し、「担当者不在」「分析できない」「何から始めていいか分からない」のうち、どこに当てはまるかをざっくり把握します。そのうえで、SEO・広告・SNS・自社サイトという4つの基本的なチャネルを、「全部やる」のではなく、あえて「やらないもの」を決めながら取捨選択していく流れが現実的です。
外注に頼る場合も、「任せきり」にせず、目的・ターゲット・訴求軸を自社側で言語化し、レポートや提案を社内に蓄積していくことで、少しずつ判断材料が社内に残るようになります。
最初の一歩としては、次の3点が整っていれば十分です。
- 何に困っているのか、経営課題とセットで言語化できている
- 自社の状態(担当者/分析/スタート地点)がざっくり把握できている
- 今年どのチャネルに集中し、どこは「やらないか後回しにするか」を決めている
