社長が自分で進めるWeb集客 忙しくても最低限おさえたいポイント

目次

「社長が自分でWeb集客」に取り組む意味

「忙しいから、Web集客は担当者や外注に任せたい」と考える社長は多いと思います。
それでも、あえて「社長が自分でWeb集客」に関わる意味は、大きく3つあります。

1. 経営の軸をそのままお客様に届けられる

Web集客の成否は、「誰に、何を、どんな言葉で伝えるか」で決まります。
これはまさに経営そのもののテーマです。

経営者しか持っていない視点や哲学をWebに落とし込めると、「なんとなく良さそう」ではなく「この会社にお願いしたい」と思ってもらえる濃い見込み客が集まります。

特に中小企業や専門性の高いBtoBでは、「社長自身の物語」や「意思決定の基準」がそのままブランドになります。ここを外注任せにすると、どの会社のサイトも似た表現になり、価格以外で選ばれにくくなりがちです。

2. 外部依存から脱却し、集客を「資産」にできる

広告や営業マンによる集客は、「止めた瞬間に集客も止まる」手法です。
一方で、社長主導で作ったコンテンツ(記事・動画・コラムなど)は、サイト上に蓄積されるほど、24時間365日働く「資産」になります。

たとえば「社長の考えをまとめた記事」「よくある質問への回答」「判断基準を解説した動画」などは、一度作れば何年も見られ続け、検索やSNS経由で新規の見込み客を連れてきます。

広告費が高騰する時代だからこそ、自社の土台となる集客の仕組みを社長が設計しておく意味は大きいです。広告をゼロにするのではなく、「初動は広告+社長コンテンツ」で成果を出しつつ、中長期的にはオーガニック(検索・紹介)比率を高めていく考え方が現実的です。

3. 会社全体の動き方が変わる起点になる

社長がWeb集客の全体像と数字を理解すると、営業・制作・カスタマーサポートなど、他部署との連携がスムーズになります。

  • 「Webからこういう問い合わせが増えているから、営業トークもこう変えよう」
  • 「このページが見られているから、サービス改善のヒントになる」

といった形で、会社全体が同じ方向を向きやすくなります。

さらに、CRMやマーケティングオートメーションを組み合わせれば、「問い合わせ〜提案〜受注後フォロー」までの流れを一気通貫で見える化できるようになり、「感覚ではなくデータで議論する文化」をつくる起点にもなります。


社長が先に押さえるべきゴール設定と数字の基準

Web集客を始める前に、最低限決めておきたいのが次の3つです。

1. ゴール(最終的に何を増やしたいのか)

「Web経由でどんなアクションを何件欲しいのか」を数字で決めておきます。

例としては、次のようなものです。

  • 月間の新規問い合わせ件数
  • 資料請求や見積もり依頼の件数
  • 店舗来店予約の件数

ここで大事なのは、「PV(アクセス数)を増やす」ことをゴールにしないことです。アクセスはあくまで途中経過であり、「問い合わせ」「予約」「売上」などの“お金に近い指標”を起点に逆算したほうが、施策の優先順位をつけやすくなります。

2. KPI(途中のチェックポイント)

いきなり売上だけを追っても、原因が分かりません。
最低限、次の数字は毎月見るようにしておくと良いです。

  • サイトの訪問数(セッション数)
  • 問い合わせや資料請求への遷移率(コンバージョン率)
  • 1件の問い合わせを得るのにかかった広告費(CPA:獲得単価)

可能であれば、「問い合わせから成約までの成約率」「1件成約あたりの粗利」まで見られると、広告に投下してよい上限額(LTVとのバランス)も判断しやすくなります。

これが分かると、「CPA◯円までなら攻めてOK」という“攻めの基準”を現場に渡せるようになります。

3. 期間の目安

あらかじめ「どれくらいの期間で成果を見るか」の目安を決めておくと、短期の結果だけで振り回されにくくなります。

  • 広告:テストから2〜3ヶ月で「続ける/やめる」の判断
  • SEO・コンテンツ:効果が見え始めるのは3〜6ヶ月、安定するのは1〜2年

特にSEOは「育成型の投資」です。短期成果は広告や既存顧客アプローチで取りに行きつつ、並行してコンテンツ資産を積み上げていく“二刀流”で考えるとバランスが良くなります。

シンプルな目標設定から始める

まずは次のような、シンプルな目標からで構いません。

  • 「6ヶ月後に、Web経由の問い合わせを今より月◯件増やす」
  • 「広告費◯万円で、1件あたりの問い合わせ獲得単価を◯円以内に抑える」

「全部はできない」社長ならではの割り切り方

社長が自分でWeb集客を進めるうえで、最初に持っておくべき考え方は「全部はやらないし、やれない」という割り切りです。割り切るポイントは3つあります。

1. チャネルを「増やす」より「絞る」

  • SEOもSNSもYouTubeも…と手を出すと、どれも中途半端になりがちです。
  • 「今期は、自社サイト+ブログ+1つのSNSだけ」のように、取り組むチャネルを意図的に限定する方が成果につながります。

大企業のように専門部署と大人数の担当者がいる会社と、中小企業・個人事業では前提条件が違います。限られた時間・人員で成果を出すには、「捨てる勇気」を持ち、チャネルごとの役割分担をはっきりさせる必要があります。

2. 社長しかできないことだけを担当する

社長が担当すべきなのは、次のような「軸づくり」の部分です。

  • 強みの定義
  • 顧客像の設定
  • サービスのコンセプト設計
  • 主要なコンテンツの原稿のたたき台

一方で、

  • 記事の清書
  • 画像作成
  • 入稿作業
  • 細かな分析

といった作業は、できるだけスタッフや外部に任せていきます。

初期フェーズで社長が「全部少しずつ」触ってみるのは有効ですが、その体験をもとに「どこを標準化して人に任せるか」を早い段階で決めておくと、後からの属人化リスクを減らせます。

3. 「完璧」より「まず1本出す」を重視する

  • 最初から完璧なLPや記事を作ろうとすると、いつまでも公開できません。
  • 7割の出来で公開し、数字を見ながら直すほうが、結果的には早く“勝ちパターン”に辿り着きます。

Webマーケティングの現場では「A/Bテスト」が前提です。1本の完璧な原稿を目指すより、「まず出して反応を見る → 改善する」というサイクルをどれだけ早く・多く回せるかが成果を分けます。


忙しい社長でもできるWeb集客の全体像

Web集客の3つの役割

Web集客は、次の3つの役割に分解するとシンプルになります。

  1. 見つけてもらう(集客)
    ・検索エンジン(SEO・MEO)
    ・広告(Google広告、SNS広告など)
    ・SNSや紹介、他メディアからの流入
  2. 興味を深めてもらう(教育・信頼構築)
    ・サービスページ、事例ページ、社長コラム、FAQ
    ・動画・セミナー・PDF資料 など
  3. 行動してもらう(問い合わせ・購入・来店予約)
    ・問い合わせフォーム、資料請求フォーム
    ・LINE登録、メルマガ登録
    ・電話・来店予約ボタン

社長は、この3つが自社のWebの中で「どこで」「どのページ」が担当しているかを一度紙に書き出してみてください。これを整理するだけでも、「どこが弱いから強化すべきか」が見えやすくなります。

たとえば「アクセスはあるが問い合わせが少ない」なら②③の導線やコンテンツに課題がある可能性が高く、「アクセス自体が少ない」なら①の施策(SEO・広告・SNS)を強化する必要があります。


営業マンではなく「Web上の分身」をつくる発想

多くの会社では、「営業マンに丸投げ」の営業スタイルから、「Webが優秀な営業マンのように働く」スタイルへの転換が必要になっています。

ここで意識したいのは、「営業マンの代わり」ではなく「社長自身の分身」をWeb上につくるという発想です。

  • 社長が対面で話すときの
    「なぜこのビジネスをしているのか」
    「お客様にどうなってほしいのか」
    「他社と違うこだわり」

これらを文章や動画にしてサイトに置いておくことで、初回面談前から価値観が合う見込み客が集まります。この「価値観の事前共有」があるかないかで、商談の質や成約率が大きく変わります。

すでに理念や考えに共感している人との商談は、「説明」よりも「具体的な提案」に時間を割けるようになります。

その結果として、

  • 「価格だけで比べるお客様」よりも
  • 「御社の考えに共感したからお願いしたい」と言ってくれるお客様

の比率が増えていきます。経営者発信のオウンドメディアで「ファン化」した顧客を集めることで、単価やリピート率が上がった例も多く報告されています。

Web集客を「安く売るための仕組み」ではなく、価値観に合うお客様だけを集める“フィルター”として捉えていただくのがおすすめです。


外注任せとの違い:社長が自分でやるからこその強み

外注が悪いわけではありませんが、「丸投げ」は危険です。
社長が自分で関わるからこその強みは、次の3つです。

1. 意思決定が速い

サービス内容の変更、価格改定、新キャンペーンなどの経営判断を、すぐにWebに反映できるのは社長の強みです。

市場環境が変化したときに、「来月の会議で決めてから」ではなく、その日のうちにメッセージやオファーを変えられるスピード感は、中小企業の武器になります。

2. メッセージの深さが違う

外注ライターでは書けない「創業ストーリー」や「失敗談」は、読み手の共感を呼び、競合と差別化する武器になります。

特にBtoBや高単価サービスでは、「誰から買うか」が意思決定の大部分を占めます。社長の顔や考えが見えるコンテンツは、その「誰から」の部分を強くします。

3. 外注の「使い方」がうまくなる

自分で一度やってみると、

  • どの作業が時間がかかるのか
  • どこを外注するとコスパが良いのか

が分かります。結果として、外注費のムダも減りやすくなります。

また、「目的・ターゲット・ゴール数字」を明確に伝えられるようになるため、外注側も成果を出しやすくなり、「なんとなく記事を量産して終わり」といった失敗を避けられます。


自社サイト・LP:最低限整えておきたいポイント

問い合わせ後の「安心感」を伝える情報を入れる

  • 「問い合わせしたらしつこく営業されるのでは?」という不安を解消するために、
    「まずはメールでのご案内のみです」「無理な営業は一切いたしません」など、対応方針を書いておきます。
  • 対応までの目安時間(例:1営業日以内にご連絡します)も明記しておくと、離脱防止につながります。

プロフィール・代表挨拶ページを「社長メディア」として活用する

  • 一般的な経歴の羅列ではなく、
    「なぜこの事業を始めたのか」「どんなお客様と長く付き合いたいのか」「どんな案件はお断りしているのか」まで書くと、強力なフィルターになります。
  • 社長の写真や動画メッセージを掲載すると、「顔の見える会社」として信頼されやすくなります。

ブログ・オウンドメディア:社長コラムを武器にする

検索キーワードを意識しつつ「お客様の疑問」に答える

  • タイトルに「お客様が実際に検索しそうな言葉」を入れておくと、コンテンツが資産として機能しやすくなります。
  • 例:
    「製造業の社長がWeb集客に踏み出せない3つの理由」
    「地域工務店が広告費に頼らず集客する方法」など。

記事を営業・採用にも再利用する

  • 社長コラムは、見込み客向けだけでなく、採用候補者にも有効です。
  • 面接前に「この3本だけ読んでおいてください」と渡せば、価値観のミスマッチを減らせます。

広告:小さくテストするための社長視点のルール

広告とセットで「受け皿」も確認する

  • 広告経由の問い合わせに対して、
    「レスポンスが遅い」「情報が不足している」状態だと、せっかくの獲得もムダになります。
  • 広告テスト期間中は、電話・メール・チャットなどの一次対応体制も一緒に整えると、成約率が安定します。

短期の数字だけでなく「学び」を記録する

  • 「この訴求は反応が良かった/悪かった」「このターゲット設定では質が悪かった」など、学びを必ずメモに残します。
  • これが、将来の新商品・新サービスの立ち上げ時にも使える「社内ナレッジ」になり、広告代理店に丸投げしないための意思決定材料にもなります。

社長の頭の中を記事にするためのポイント

「ダメな解決策」も一緒に伝える

  • お客様が陥りがちな失敗パターンや、業界でよくある的外れな対応例を挙げると、コンテンツに厚みが出ます。
  • 「こういう業者の提案には注意してください」といった注意喚起も、信頼構築に役立ちます。

よくある質問(FAQ)をコンテンツ化するコツ

検索されやすい言葉で書く

  • 「Q. 料金はいくらですか?」「Q. どの地域まで対応していますか?」のように、実際に検索窓に入れそうな表現を意識して見出しをつくります。
  • これにより、FAQページ自体がSEOの入り口にもなります。

「社長 自分で Web集客」で検索されるページをつくる考え方

「社長目線の失敗談」を必ず1つ入れる

  • 成功事例だけでなく、「最初はこう失敗した」「この考え方を捨ててからうまくいった」といった話は、検索ユーザーの共感を集めやすく、滞在時間の向上にもつながります。
  • 検索エンジンも「ユーザーの役に立つ、読み込まれるコンテンツ」を評価するため、結果的にSEOにも良い影響を与えます。

地域ビジネスの社長がやるべきローカル集客

  • 地域ビジネスでは、Web集客=「遠方からたくさん集めること」ではありません。
    「今まさに近くで探している“今すぐ客”と確実につながること」が最優先です。
  • Googleビジネスプロフィールとホームページ、口コミ・紹介を組み合わせることで、大きな広告費をかけなくても、安定した来店・来院・問い合わせをつくれるようになります。

CRM・メール配信で「追客を自動化」する考え方

「社長メッセージ」を1通だけ自動メールに組み込む

  • 自動メールは事務的な内容になりがちですが、どこか1通だけで良いので、「代表からのご挨拶」「この事業に込めている想い」を入れておくと、距離が一気に縮まります。
  • ここに事例やFAQ記事へのリンクを添えると、「営業色が弱く、読みたくなるメール」になります。

開封・クリックデータを「営業会議の材料」にする

  • 「どのテーマのメールがよく開かれているか」「どのリンクがクリックされているか」を見ることで、今お客様が関心を持っているテーマが分かります。
  • それを元に、セミナーテーマや新サービスのアイデアを出す使い方も有効です。

失敗しがちなパターンとその避け方

「誰も見ていない指標」にこだわりすぎない

  • デザインの細部や社内評価だけにこだわり、「お客様の行動」が変わっているかを見落とすケースも多くあります。
  • 「社内でのウケ」ではなく、「数字とお客様の反応」で良し悪しを判断する姿勢が重要です。

広告にお金をかけても成果が出ないときのチェックポイント

オフラインの営業プロセスとの「段差」を確認する

  • 広告やLPでは良い印象でも、実際に電話したときの対応が不親切、メール返信が遅い、見積もりが分かりにくい、といった理由で離脱してしまうケースも少なくありません。
  • Webとリアルの体験を一つの流れとして設計し、「どこにボトルネックがあるか」を営業・現場と一緒に振り返ることが大切です。

社長と担当者の認識ズレをなくすコミュニケーション

「NGワード」「避けたい打ち出し方」も明文化する

  • 「安売り感が出る表現は避けたい」「この競合と比較される言い方はしたくない」など、社長が違和感を持つ表現も最初から共有しておくと、修正の手戻りが減ります。
  • 逆に、「こういう表現は積極的に使ってほしい」というOKワードもセットで渡すと、担当者が動きやすくなります。

数字の変化を見ながら小さく改善していくコツ

「仮説と結果」を簡単にメモしておく

例:

  • 「問い合わせ率を上げるために、LP冒頭にお客様の声を追加した → 2ヶ月後に◯%改善」
  • 「SNSからの流入を増やすために、週3投稿を継続 → アクセス数が◯%増加」

こうした記録を残しておくと、自社なりの“勝ちパターンメモ”が蓄積されていきます。
将来、担当者交代や新事業立ち上げ時の貴重な参考資料にもなります。


短期の売上と、中長期の「資産づくり」を両立させる

「資産づくり」の進捗も数字で見える化する

売上とは別に、次のような「資産の蓄積量」も数字で把握しておくと良いです。

  • 公開した記事本数
  • 事例ページ数
  • 動画コンテンツの本数

「資産がどれだけ積み上がったか」を見える化しておくと、社長自身も中長期施策への投資を続けやすくなります。


社長の発信を会社全体の武器に変えるステップアップ

ステップ5:経営の意思決定にもWebデータを活用する

  • どのコンテンツが読まれているか、どのサービスページからの問い合わせが多いか、といったWebデータは、「どの商品に経営資源を集中すべきか」「どの顧客セグメントに絞るべきか」を判断する材料になります。
  • こうして「Web集客=現場の施策」から、「Web集客=経営判断の土台」へと位置づけが変わると、社内の巻き込み方や投資判断も自然と変わっていきます。

まとめ:社長が握るべき「最初の一歩」

「全部を社長が一人でやるべき」という話ではありません。

意味があるのは、

  • 経営の軸となる設計
  • ゴールと数字の基準づくり
  • 最初の一歩となるメッセージやコンテンツ

を社長が握ることです。

そのうえで、運用や細かな作業は徐々にチームや外部に任せていく。
この役割分担こそが、「忙しい社長でも続けられるWeb集客」の現実的な進め方だと考えていただければと思います。

Web集客は、社長がすべての作業をこなす取り組みではありません。自社の軸をどう打ち出し、どんな数字を追い、どこから着手するかを決める「設計者」として関わるかどうかがポイントです。
この記事でお伝えしたように、

  • どんな顧客に、何を約束する会社なのか
  • どの指標を見ながら、どの期間で判断するのか
  • 社長しか語れない物語や基準を、どのコンテンツに落とし込むのか

をまず言語化するだけでも、外注や担当者の動き方は変わります。

完璧さよりも「社長の仮説を、まず1本のページやコラムにして世に出す」ことから始めてください。その小さな一歩を起点に、数字を見て直し続けることで、自社らしいWeb集客の型が少しずつ形になっていきます。

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この記事を書いた人

Webマーケティング業界10年以上のフリーランス。
「低コストでも、効果のあるWebマーケティング」をご提供することをモットーに、多岐にわたる業種の会社さまのご支援を行っております。
※2025年1月に法人化しました。