「なんとなく運用」から抜け出すために──この記事でわかること
想定読者
ホームページやSNSを更新し、広告費も投じているのに、「このweb集客は本当に成果につながっているのか」とモヤモヤしていないでしょうか。アクセス数やフォロワー数のグラフは右肩上がりなのに、売上や問い合わせがほとんど変わらない。その違和感の正体は、多くの場合「目標の置き方」にあります。
なんとなくの数値や、聞きかじった指標を追いかけているだけでは、自社のビジネスにとって本当に意味のある改善ポイントが見えません。必要なのは、売上や問い合わせといったゴールから逆算した、具体的なweb集客の目標設定です。
この記事では、KGI・KPI・KPIツリーといったフレームワークを使いながら、「何をどこまで追えば、事業としての成果につながるのか」という視点で整理していきます。「なんとなく運用」から抜け出し、自信を持って数字と向き合いたい方は、ぜひ読み進めてみてください。
- ホームページやLP、SNSを「なんとなく」更新しているが、成果につながっているか自信がない方
- 広告やSEOにお金・時間をかけているのに、売上や問い合わせが増えずモヤモヤしている中小企業・個人事業主の方
- マーケティング担当になったものの、どんな指標で目標設定をすればよいか整理できていない方
「アクセスは増えた気がする」「広告は出している」ものの、「ビジネスとして成功しているのか」がわからない方を想定しています。ここで扱うのは、単なるアクセスアップ術ではなく、KGI・KPIという指標を使って「ビジネスとしての成果」に直結した目標をどう設計するかという視点です。
数字を追うこと自体が目的にならないよう、「売上」「問い合わせ」「顧客数」といった最終成果とのつながりも意識して読み進めてください。
この記事を読み終えるとできるようになること
- 「なんとなく運用」ではなく、ビジネスゴールから逆算したWeb集客の目標を設定できる
- KGI・KPI・KPIツリーなどの考え方を、自社の状況に落とし込める
- SEO・広告・SNSそれぞれで、何を目標にすべきかを整理できる
- 明日から使える「自社用Web集客目標」のひな型(5ステップ)を作成できる
さらに、SMARTの法則やペルソナ設定など、デジタルマーケティング全般で使われる基本フレームワークも整理するため、今後代理店や制作会社とやり取りするときに「どんな指標で話をすべきか」が明確になります。
よくあるWeb集客のつまずきパターン
- とりあえず広告を出してみたが、「よかったのか悪かったのか」評価できない
- 制作会社や代理店に「お任せ」で運用していて、毎月レポートは届くが、正直内容がよくわからない
- アクセス数やフォロワー数は増えているのに、売上や問い合わせがほとんど変わらない
- 社長・現場・代理店で「成功のイメージ」がバラバラで、会議のたびに話が噛み合わない
こうしたつまずきの多くは、技術力や広告予算の問題ではなく、「最初の目標設定」があいまいなことから生まれています。KGI(最終目標)とKPI(途中指標)の区別がないまま施策を始めてしまうと、どこがうまくいっていて、どこがボトルネックなのかが見えず、改善の打ち手も出しにくくなります。
なぜ「なんとなく運用」が危険なのか
「なんとなく運用」が生まれる3つの原因
1. ビジネスとしてのゴールが言語化されていない
「売上を増やしたい」「問い合わせを増やしたい」といった抽象的な願望だけで、「いつまでに」「誰から」「いくら分」増やしたいのかが決まっていない状態です。KGIとして「期末までにWeb経由売上◯◯万円」といった“言い切り”がないため、現場も「どこまでやればよいのか」がわかりません。
2. チャネルごとの役割があいまい
SEO、広告、SNS、メルマガなど複数の施策を行っていても、「それぞれがKGIにどう貢献するのか」が整理されていない状態です。本来は「SEO=中長期の検索流入増」「広告=短期の獲得強化」「SNS=認知・関係性づくり」といった役割分担をしたうえで、チャネル別のKPIを決めておく必要があります。
3. 計測指標(KPI)がバラバラ・多すぎる
アクセス数、フォロワー数、いいね数、クリック数など多くの数字を見ているわりに、「だからビジネスとしてどうなのか」がわからない状態です。KPIツリーで「売上 → 問い合わせ数 → 訪問者数 × CVR」といった因果関係を分解しておかないと、「増やすべき数字」と「単なる参考値」がごちゃ混ぜになります。
よくあるNG目標例と、その問題点
- NG例1:「とにかくアクセス数を増やしたい」
→ 誰の、どんなアクセスを増やしたいのか不明で、アクセスが増えても売上につながらない可能性が高くなります。 - NG例2:「広告のクリック率を上げたい」
→ クリック率(CTR)は途中指標です。CTRが上がっても、問い合わせや購入が増えなければ意味がありません。 - NG例3:「フォロワー1万人を目指す」
→ フォロワーの“数”と“質”は別物です。ビジネスにつながる見込み客が何人いるかが重要です。 - NG例4:「売上をとにかく上げる」
→ 期限・数字・どの商品かが決まっていないため、具体的な行動に落とし込めません。
いずれの例も、「誰の、どんな行動を、いつまでに、どの程度変えたいのか」が曖昧なため、施策も評価もぼやけてしまいます。SMARTの法則(具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限)に照らすと、いずれもS・M・Tが欠けており、「現場の行動につながる目標」になっていないことがわかります。
広告費・時間・労力がムダになるメカニズム
- 目標があいまい
- とりあえず「よさそうな施策」に手を出す(広告出稿、記事量産、SNS更新など)
- 成果の良し悪しを判断する基準がないため、「もっと回す」「とりあえず続ける」になりがち
- 広告費や人件費だけが膨らみ、半年〜1年たってもビジネスインパクトが見えない
この悪循環から抜け出すには、まず「何をもって成功とするのか」を数字で定義する必要があります。KGIを決め、そこからKPIを逆算し、「どの数字が動けばKGIに近づくのか」を明確にすると、ムダな施策にリソースを投下するリスクを大きく減らせます。
Web集客の目標設定は「KGI」と「KPI」で考える
KGI=ビジネスのゴールを数字で言い切る
KGI(Key Goal Indicator)は、「ビジネスとしての最終ゴール」を示す指標です。
例
- 今期のWeb経由売上を前年比+20%にする
- 半年でホームページ経由の新規問い合わせを100件獲得する
- 1年以内にオンラインスクールの有料会員を300名にする
KGIは、経営・事業レベルで「達成したか、していないか」が一目でわかる指標であるべきです。売上高・利益・新規顧客数・契約数・LTV(顧客生涯価値)など、会社全体の成果指標とつながっているかどうかも重要です。
KPI=KGIを達成するための途中経過の数字
KPI(Key Performance Indicator)は、KGIに到達するまでの「プロセス」を測る指標です。
例
- 月間訪問者数
- 問い合わせフォーム送信率(CVR)
- 広告からのクリック数・クリック率
- メールマガジンの開封率・クリック率
KPIは、「どの工程がボトルネックになっているか」を発見するためのものさしです。さらに細かい施策レベルの指標(広告のCTR、ページ滞在時間、直帰率など)は、KPIを支える「サブKPI」として扱うと、全体構造が整理しやすくなります。
「アクセス数だけ追っても意味がない」理由
アクセス数はあくまでKPIの一部であり、KGIではありません。
アクセスが増えても、
- ターゲット外の人ばかり来ている
- 商品ページを見ずに離脱している
といった状況では、売上や問い合わせにはつながりません。
重要なのは、
「ターゲットとなる見込み客のアクセス → コンバージョン(問い合わせ・購入など)」
までを一連の流れとして捉えることです。「アクセス数 → 滞在時間・回遊 → コンバージョン率」と分解して見ることで、「集客の質」を評価できるようになります。
KGIとKPIのシンプルな関係イメージ
文章で簡易的に表すと、以下のようなツリー構造になります。
- KGI:今期中にWeb経由の売上1,000万円を達成
- KPI1:月間訪問者数 10,000人
- KPI2:サイト全体のコンバージョン率 2%
- KPI3:平均客単価 50,000円
売上 = 訪問者数 × CVR × 客単価
という関係に分解していくイメージです。このようなKPIツリーを作っておくと、「今月は訪問者数は計画通りだがCVRが低いから、LP改善を優先しよう」といった判断がしやすくなります。
まず決めるべきは「ビジネスとしてのゴール(KGI)」
何をもって「成功」とするのかを決める
Web集客の目的は、「サイトのアクセスを増やすこと」や「SNSでバズること」ではなく、ビジネスとしての成果(売上・利益・顧客数など)を生み出すことです。
そのため、最初に決めるべき問いは次のとおりです。
- 今期、この事業として「何ができれば成功と言えるか」
これを数字で言い切ったものがKGIです。経営計画や営業目標との一貫性も重要で、「Web経由でどれだけ貢献するか」を明確にしておくと、社内での合意も得やすくなります。
KGIを決めるための3つの質問
- 誰に対して
- BtoB:どんな業界・企業規模・担当者か
- BtoC:年齢、性別、地域、ライフスタイルなど
- 何を売って
- 主力商品・サービスは何か
- 高単価商品を売りたいのか、低単価でも数を売りたいのか
- いつまでにどれくらいの成果を出したいのか
- 期間(今期・半年・1年など)
- 売上金額・件数・契約数などの定量目標
この3点が決まると、KGIは次のように具体化されます。
例:
「半年で、関東エリアの中小企業向けに、当社のクラウド勤怠管理システムを50社導入し、Web経由売上1,500万円を達成する」
このレベルまで具体化しておくと、KPIツリーへの分解やチャネル別の役割設定もしやすくなります。
KGIの具体例(BtoB/BtoC/店舗ビジネスなど)
- BtoB(ITサービス)
- 1年以内に、Web経由で月次MRR(継続課金売上)100万円を達成する
- 今期中に、資料請求からの新規契約を30件獲得する
- BtoC(オンラインスクール・講座)
- 3ヶ月で、オンライン講座の有料受講者を50名獲得する
- 1年でLTV(顧客生涯価値)を1.2倍にする
- 店舗ビジネス(美容室・クリニック・飲食店など)
- 半年でWeb経由の新規来店予約を150件獲得する
- 1年でWeb経由のリピート来店率を+15%改善する
ビジネスモデルによってKGIの切り口(売上、契約数、予約数、LTVなど)は変わりますが、「誰に・何を・いつまでに・どれだけ」が明確であることが共通点です。また、短期(3ヶ月〜半年)と中長期(1年〜2年)のKGIを階層的に持っておくと、現場のアクションと経営目線を両立しやすくなります。
次に分解する「Web集客のKPI」の考え方
KPIツリーで売上を分解する
まず、定番の分解式を押さえます。
売上 = 訪問数 × CVR(成約率) × 客単価
例
- 訪問者数:10,000人
- 成約率:2%(0.02)
- 客単価:20,000円
売上 = 10,000 × 0.02 × 20,000 = 4,000,000円
どこを改善するとKGIに最もインパクトがあるかを考えるのが、KPIツリーの役割です。たとえば「訪問数は十分だがCVRが低い」ならLP改善が優先、「CVRは悪くないが訪問数が少ない」ならSEOや広告強化、といったように打ち手が明確になります。
「問い合わせ数」「予約数」に分解するパターン
BtoBや店舗の場合、「売上」よりも先に「問い合わせ数」や「予約数」がKGIになるケースも多くあります。
例:BtoBサービス(KGI:月間問い合わせ数50件)
- 問い合わせ数 = サイト訪問数 × 問い合わせCVR
- サイト訪問数 = 検索流入+広告流入+SNS流入 など
例:実店舗(KGI:月間予約数100件)
- 予約数 = 予約ページ訪問数 × 予約完了率
- 予約ページ訪問数 = トップページ訪問数 × 予約ページ遷移率
このように、「最終的に増やしたい行動(問い合わせ・予約など)」を起点に、手前のステップへとさかのぼって分解していきます。必要に応じて、「資料DL → 無料相談 → 見積依頼 → 受注」のような営業プロセスまで含めたKPIツリーを作ると、営業側のKPIとも連動させやすくなります。
自社に必要なKPIだけを選ぶコツ
すべての指標を追う必要はありません。ポイントは次の2つです。
- KGIとの距離が近い指標を優先する
- 例:問い合わせ数、予約数、カート投入数、成約率、リピート率 など
- 自社で実際に改善できる指標に絞る
- 自社でコントロール可能なもの(ページ内容、導線、広告設定など)に関連するKPIを選びます。
「なんとなく気になるから」とすべてをKPI化すると、結局何も改善されません。KPIは「優先して変えに行く数字」であり、それ以外の指標は「状況把握のための参考値」と割り切ることが、運用をシンプルにするコツです。
追うべきではない“ノイズKPI”の見分け方
次のような指標は、「完全に不要」とは言えないものの、KGIと直結しない場合が多く、優先度は下げてよいことが多いです。
- 単純なページビュー(PV)数だけ
- SNSの「いいね数」やフォロワー数だけ
- ブログ記事の掲載本数だけ
これらはあくまでも「状況把握の参考指標」にとどめ、
「それが増えるとKGIにどう貢献するのか」
と説明できないものは、メインKPIから外す判断も必要です。特に社内報告や代理店との打ち合わせでは、「ノイズKPI」ではなく、「問い合わせ数」「予約数」「CVR」などの本質的な指標を中心に会話するよう意識してください。
SMARTの法則で「なんとなく目標」を卒業する
SMARTとは何か
SMARTの法則は、良い目標設定のチェックリストです。
- S:Specific(具体的)
- M:Measurable(測定可能)
- A:Achievable(達成可能)
- R:Relevant(関連性がある)
- T:Time-bound(期限がある)
この5つを満たすと、行動につながる“使える目標”になります。Web集客に当てはめると、「誰向けの」「どのチャネルで」「どの指標を」「いつまでにどこまで改善するか」を言語化することが求められます。
ダメな目標がSMARTだとこう変わる(ビフォーアフター)
-
ビフォー:「問い合わせを増やしたい」
アフター:
「今期(4〜9月)中に、ホームページ経由の新規問い合わせを、月平均20件から35件に増やす」 -
ビフォー:「広告の成果を良くしたい」
アフター:
「3ヶ月以内に、リスティング広告経由の1件あたりの問い合わせ獲得単価(CPA)を、現状15,000円から10,000円まで改善する」 -
ビフォー:「ブログから集客したい」
アフター:
「半年で、月間オーガニック検索流入を5,000セッションまで伸ばし、その中から資料請求10件/月を獲得する」
SMARTに言い換えるだけで、「何をすればよいか」が見えやすくなります。特にBtoBでは「担当者の部署・役職」まで含めて具体化すると、コンテンツのテーマや広告のターゲティングもブレにくくなります。
数値と期限を入れた目標設定テンプレート
次のテンプレートを使うと整理しやすくなります。
「【期限】までに、【ターゲット】向けの【商品・サービス】で、【指標】を【現状値】から【目標値】にする」
例
- 「2025年3月末までに、都内在住の20〜30代女性向けのオンライン英会話で、Web経由の有料申込数を、月20件から月40件にする」
この形式で書けない場合、どこかがあいまいになっているサインです。書き出した目標は、経営層・現場・外部パートナーで共有し、「この数字が上がると、事業として何がどれだけ良くなるのか」まで合意しておくと、実行フェーズでのブレが少なくなります。
目標設定の前に押さえたい「誰を集客したいのか」
ペルソナがあいまいだとKPIもブレる
「誰を集客したいか」がぼんやりしていると、次のような点がすべてブレます。
- どのキーワードで集客するか(SEO)
- どんな訴求で広告を出すか
- どのSNSを使うのか
- どの指標をKPIにするか
ペルソナ(典型的な顧客像)をざっくりでも言語化しておくことが重要です。Web集客のKGI・KPIは、最終的には「そのペルソナが、どのチャネルから、どんな行動を取るか」というカスタマージャーニーと結びついています。ターゲットがあいまいだと、目標と実際の顧客行動が噛み合わなくなります。
「とりあえず全部集客」はなぜ失敗するのか
「老若男女すべてのお客様が対象」というスタンスは、一見間口が広いように見えて、次のような結果を招きがちです。
- メッセージがぼやけて刺さらない
- 広告のターゲティングが雑になりCPAが高騰する
- サイトの導線も“なんとなく”になりCVRが上がらない
「この商品・サービスで、特に獲得したいのはこの層」という優先順位をつけることで、KPIや施策も絞り込めるようになります。また、ペルソナを明確にすると、「その層がよく使う検索キーワード」「見ているSNS」「重視する情報」がクリアになり、チャネル別のKPI設計も現実的になります。
Web集客の目的別に目標を変える考え方
目的によって、設定すべきKGI・KPIは変わります。
すぐに売りたい場合(短期売上重視)
- KGIの例
- 今期中のWeb経由売上
- 今月の新規契約数・注文数
- KPIの例
- 広告経由のコンバージョン数(CV数)
- カート投入数・申込完了数
- CPA・ROAS など
見込み客を増やしたい場合(リード獲得)
- KGIの例
- メルマガ登録数
- 資料請求・無料相談申し込み数
- KPIの例
- ホワイトペーパーDL数
- セミナー申込数
- LP訪問数 × 登録率 など
認知を広げたい場合(中長期のブランド育成)
- KGIの例
- 指名検索数
- ブランド名+商品名の検索回数
- 直接流入数
- KPIの例
- 記事PV・滞在時間
- SNSでのブランドメンション数
- 動画再生数 など
目的が変われば、追うべき数字も変わります。「何を優先したいフェーズなのか」を最初に決めてください。中長期の「顧客体験」を重視し、NPS(推奨度)やレビュー評価などを補助的なKPIに置くケースも増えています。
施策ごとにどう目標を置くか(SEO・広告・SNSなど)
SEOの目標設定のポイント
検索キーワードの選び方とKPI例
- 狙うキーワードは「ビジネスとの距離」で選ぶ
- 「○○ やり方」「○○ 比較」など検討度の高いキーワードを優先
- ターゲットが実際に使いそうな言葉かどうかを確認
- SEOの代表的なKPI例
- 指名キーワード・サービス名での検索順位
- 主要10〜20キーワードの平均掲載順位
- オーガニック検索流入数
- 検索流入からの問い合わせ・資料請求数
「記事本数」や「文字数」はあくまで手段であり、KPIにするなら「検索流入数」や「その先のコンバージョン数」を重視します。また、検索流入ユーザーの滞在時間や直帰率もサブKPIとして追うと、「集客できているが内容が合っていない」といった課題も見つけやすくなります。
広告運用の目標設定のポイント
CPA・CTR・CVRなど見るべき指標
広告は数値指標が明確な分、目標を立てやすいチャネルです。
- CPA(Cost Per Acquisition):1件の成果(問い合わせ・購入など)を獲得するのにかかった広告費
- CTR(Click Through Rate):広告が表示された回数に対するクリック割合
- CVR(Conversion Rate):LP訪問者のうち、何%が問い合わせ・購入したか
広告のKGIはたとえば、
- 「月間Web経由の新規顧客20件を、1件あたりCPA1万円以内で獲得する」
といった形になり、KPIとして、
- インプレッション数
- CTR
- LPのCVR
などを追っていきます。媒体ごと・キャンペーンごとにKPIを分けておくと、「どの媒体に予算を厚くするべきか」の判断もデータに基づいて行いやすくなります。
SNS・コンテンツの目標設定のポイント
フォロワー数よりも重視したい指標
SNSは「フォロワー数」や「いいね数」に目が行きがちですが、ビジネス目標と直結しづらいことも多くあります。
重視したい指標の例は次のとおりです。
- SNS投稿からサイトへの流入数
- SNS経由の問い合わせ・資料請求・購入数
- 投稿ごとの保存数・プロフィールリンククリック数
- DM・コメントからの相談数
KGIが「見込み客リストの獲得」であれば、「SNS経由のメルマガ登録数」「LINE登録数」などがKPIになります。ブランド認知を重視するフェーズでは、「ブランド名のハッシュタグ数」や「ポジティブな言及数」など定性的な評価も補助的にモニタリングすると、長期的な集客力の変化を捉えやすくなります。
「自社用のWeb集客目標」を作る5ステップ
ステップ1:現状の数値を棚卸しする
まずは「今どこにいるのか」を把握します。
- 月間訪問者数(チャネル別:検索、広告、SNSなど)
- 問い合わせ数・予約数・購入数
- コンバージョン率(訪問者数に対する問い合わせ・購入率)
- 広告費・CPA・ROAS など
できる範囲で、過去3〜6ヶ月分を見るとトレンドもつかみやすくなります。Googleアナリティクスや広告管理画面などのデータを一度スプレッドシートなどにまとめておくだけでも、次回以降の目標設定がスムーズになります。
ステップ2:今期(または半年)のKGIを決める
棚卸しした現状をふまえ、次を決めます。
- 期間:今期、半年、四半期など
- 指標:売上・問い合わせ数・予約数・有料会員数 など
- 目標値:現状とのギャップを見ながら、現実的だがチャレンジングな数字に設定
例
- 「今期(4〜9月)で、Web経由の新規問い合わせ件数を月20件から月35件にする」
経営計画との整合性も確認し、「Webからの貢献分」を明確にしておくと、社内の協力も得やすくなります。
ステップ3:KPIツリーで必要な数字を逆算する
KGIからKPIツリーをつくって逆算します。
例
- KGI:月間問い合わせ35件
- 現状:月間訪問2,000人、CVR1% → 問い合わせ20件
- 目標:訪問3,000人、CVR1.2% → 約36件
このように、「訪問数」「CVR」のどちらをどの程度上げればよいかを数字で整理します。必要に応じて、訪問数を「検索流入」「広告流入」「SNS流入」と分割し、それぞれのチャネルでどの程度伸ばすべきかも決めていきます。
ステップ4:チャネル別にKPIを割り振る
さらに、「どのチャネルで何をどれくらい達成するか」を決めます。
- 自然検索(SEO):
「半年で検索流入を月1,200セッションから1,800セッションにする」 - リスティング広告:
「月問い合わせ15件をCPA1万円以内で獲得する」 - SNS:
「月問い合わせ5件をInstagram経由で獲得する」
このように割り振ることで、各チャネルの役割と期待値が明確になります。代理店や外部パートナーがいる場合は、このチャネル別KPIまで共有しておくことで、「レポートのどの数字を一緒に見るべきか」も共通認識にできます。
ステップ5:週次・月次で追う指標をシンプルに決める
最後に、「実際にモニタリングする数字」を3〜5個に絞ります。
- 月次
- KGI:売上・問い合わせ数・予約数など
- 主要KPI:訪問数・CVR・CPAなど
- 週次
- 広告クリック数・コンバージョン数
- 主要ページへの流入数
- 新規コンテンツ公開数 など
「見る数字が多すぎて追えない」という状況を避けるためにも、“最重要3指標”を決めることをおすすめします。この3指標をシンプルなダッシュボードや1枚のレポートに整理しておくと、忙しくても「今どんな状況か」をすぐに把握できます。
実例でイメージする:中小企業のWeb集客目標設定
例1:BtoBサービス(資料請求を増やしたい)
- ビジネス背景
クラウド業務ツールを中小企業向けに提供。営業が訪問してクロージングするモデル。 - KGI
「半年で、Web経由の資料請求を月10件から月30件に増やす」 - KPIツリー
- 資料請求数 = サイト訪問数 × 資料請求CVR
- サイト訪問数 = 検索流入+広告流入+リファラル流入
- 主要KPI
- 月間サイト訪問数:3,000 → 6,000
- 資料請求LPのCVR:1% → 1.5%
- チャネル別KPI
- SEO:業界名+課題系キーワードでの検索流入月2,000セッション
- リスティング広告:CPA1万円以内で月10件の資料請求
- ホワイトペーパー施策:月ダウンロード10件
このケースでは、「資料請求後の成約率」も営業側のKPIとして押さえておくと、Webで獲得したリードの“質”も評価しやすくなります。
例2:実店舗(来店予約を増やしたい)
- ビジネス背景
都内の美容クリニック。予約制。 - KGI
「3ヶ月で、Web経由の新規来院予約を月50件から月80件に増やす」 - KPIツリー
- 予約数 = 予約ページ訪問数 × 予約完了率
- 予約ページ訪問数 = トップページ訪問数 × 予約ページへの遷移率
- 主要KPI
- 予約ページ訪問数:月1,000 → 1,500
- 予約完了率:5% → 6%
- チャネル別KPI
- Googleマップ(MEO)からの予約ページ訪問数:月300 → 500
- リスティング広告経由の予約数:月20 → 35
オンラインとオフライン(来院)の接点があるビジネスでは、Webで「予約」まで獲得した後の来院率・リピート率も、中長期では重要な指標となります。
例3:ECサイト(売上アップを狙う)
- ビジネス背景
オリジナル雑貨のECサイト。既存顧客も一定数いる。 - KGI
「1年でECサイトの年商を2,000万円から3,000万円にする」 - KPIツリー
- 売上 = 訪問者数 × CVR × 客単価 × 購入頻度
- 主要KPI
- 月間訪問者数:20,000 → 30,000
- CVR:1.5% → 2.0%
- 客単価:4,000円 → 4,500円
- チャネル別KPI
- SEO:主要カテゴリキーワードでの検索流入1.5倍
- リターゲティング広告:離脱ユーザーから月50件の再購入
- メルマガ:既存顧客向けの月間再購入数+100件
このケースでは、新規顧客獲得だけでなく、「LTVアップ(購入頻度・客単価アップ)」も視野に入れたKGI・KPI設計が重要になります。
各ケースで設定したKGI・KPIの一覧イメージ
| ケース | KGI | 主なKPI |
|---|---|---|
| BtoB | 半年で資料請求月30件 | 訪問数 / LP CVR / 広告CPA |
| 実店舗 | 3ヶ月で予約月80件 | 予約ページ訪問数 / 予約率 / MEO流入 |
| EC | 1年で年商3,000万円 | 訪問数 / CVR / 客単価 / 再購入率 |
このように一覧化しておくと、チーム内での共有や月次レビュー時の振り返りもしやすくなります。
ありがちな失敗パターンとその回避法
失敗1:目標が高すぎて途中で追うのをやめてしまう
「今月から問い合わせ10倍!」のような非現実的な目標は、達成可能性が低すぎて現場のモチベーションを下げてしまいます。
回避法
- 過去の実績から「+20〜50%」程度の現実的な伸びをベースに設定する
- 長期目標(1年後)と短期目標(今月・今期)を分けて考える
SMARTの「Achievable(達成可能)」を意識し、「背伸びすれば届く」レベル感に調整することがポイントです。
失敗2:KPIが多すぎて、結局なにも改善されない
- ダッシュボードに10種類以上の指標が並んでいる
- 会議のたびに見る数字が変わる
回避法
- 「KGIと直結したKPIは3つ以内」と決める
- それ以外の数字は“参考指標”として二軍扱いにする
KPIツリーで因果関係を整理し、「どの数字が動けばKGIが動くのか」を明らかにしておくと、優先順位をつけやすくなります。
失敗3:数値だけ追って顧客の質が落ちる
- 無理な値引きでコンバージョン数だけを増やす
- ターゲット外のユーザーを大量に集めてしまう
回避法
- 「顧客単価」「リピート率」「解約率」「問い合わせの質」などもモニタリングする
- 営業・現場からのフィードバックを必ずセットで確認する
短期的な数値だけでなく、中長期のLTVやブランドイメージも含めた指標設計を行うことで、「質と量のバランス」を取りやすくなります。
失敗4:現場と経営で目標の解釈がズレる
- 経営:売上・利益を重視
- 現場:アクセス数・フォロワー数を重視
回避法
- KGIは経営層・現場で合意形成する
- KPIツリーを共有し、「この数字が上がると、最終的に売上がこう変わる」というストーリーを可視化する
KGI・KPIを文書化し、定期的な会議で見直す仕組みを作っておくと、「いつの間にか別の数字だけを追っていた」という状態を防げます。
目標達成のための「モニタリング」と「改善」の回し方
毎月チェックすべき最低限の3つの数字
- KGIそのもの
- 売上・問い合わせ数・予約数など
- トラフィック指標
- 訪問者数(チャネル別)
- コンバージョン指標
- CVR(問い合わせ率・購入率)
この3つを押さえるだけでも、「量(訪問数)が足りないのか」「質(CVR)が悪いのか」が見えてきます。余力があれば、広告のCPAや主要キーワードの検索順位などもサブKPIとしてチェックすると、具体的な改善施策を立てやすくなります。
目標未達のときに最初に見るべきポイント
- 訪問者数は想定どおりか
- CVRはどうか
- 特定のチャネルが極端に悪化していないか
この順番でチェックすると、
- 集客側(SEO・広告・SNS)の問題なのか
- サイト内(LP・フォーム・導線)の問題なのか
が切り分けやすくなります。KPIツリーに沿って「どの段階で離脱しているか」を確認し、ピンポイントで改善案を出すのがコツです。
小さなテストでムダ打ちを減らす考え方
- いきなり大きく予算や施策を変えず、小さなテストを繰り返す
- 例:
- 広告のタイトル・画像を2パターン試す
- LPのファーストビューだけ変更してみる
- CTAボタンの文言・位置をテストする
改善は「仮説 → 小さく試す → 数字で判断」のサイクルにすることで、ムダ打ちを減らせます。このPDCAサイクルをKPIと紐づけて回すことで、「なんとなく改善」ではなく「数値にもとづく改善」が可能になります。
ツールをシンプルに使いこなすコツ
- Googleアナリティクスや広告管理画面など、すべてを見ようとしない
- 「KGIと主要KPIがわかる画面」だけをブックマークしておく
- レポートは「1枚でわかる」フォーマットを作り、毎月更新する
ツールは「すべての機能を使いこなす」必要はなく、自社のKGI・KPIがわかる範囲で十分です。必要に応じて、ダッシュボードツールやスプレッドシートで独自のレポートを作り、「毎月同じフォーマットで振り返る」ことを習慣化しましょう。
今日から始める「なんとなく運用卒業チェックリスト」
チェック1:ビジネスのKGIを言語化できているか
- 「いつまでに、誰向けの、どんな成果を、どれくらい出したいか」を一文で説明できていますか。
- 口頭ではなく、文書やスライドで共有されていますか。
チェック2:KGIと直結したKPIを3つ以内で言えるか
- 「この3つの数字が上がれば、KGIに近づく」と言い切れる指標がありますか。
- そのKPIは、自社でコントロール可能なものですか。
チェック3:いつまでに、どこまで目標を達成したいか決めているか
- 今月・今期・今年の数字目標は決まっていますか。
- それは過去実績から見て「現実的だがチャレンジング」なラインですか。
チェック4:週次・月次の「見る日」がカレンダーに入っているか
- 「毎週◯曜日の午前は数字確認」「毎月◯日は月次レビュー」のように、予定としてカレンダーに組み込まれていますか。
- その場でKGI・KPI・アクションプランを確認・更新していますか。
上記のチェックがすべて「はい」であれば、「なんとなく運用」からはかなり卒業できている状態です。どこか一つでも「いいえ」があれば、そこから一つずつ整えていくことで、Web集客の成果は着実に変わっていきます。
まずは現状のKGI・KPIを書き出し、「どの数字がビジネスゴールと直結しているか」を改めて確認するところから始めてみてください。
「なんとなく運用」から抜け出すには、まず「ビジネスとして何を達成したいのか」を数字で言い切ることが出発点です。そのうえで、KGIを起点にKPIツリーを作り、「売上・問い合わせ・予約」といった最終成果までの道筋を、訪問数やCVR、客単価といった指標に分解していきます。
すべての数字を追う必要はなく、KGIと距離が近く、自社でコントロールしやすい指標に絞り込むことが肝心です。SMARTの枠組みで「いつまでに・誰向けに・どのチャネルで・どの数字をどこまで動かすか」を具体化し、週次・月次で同じ指標をモニタリングし続ければ、「なんとなく更新しているだけ」の状態から、「数字の意味がわかる運用」へと変わっていきます。
まずは、いま自社が追っている数字を棚卸しし、「この3つが上がれば事業として前進したと言える」という指標を選び抜くところから始めてみてください。