「社長が自分でマーケティング」に踏み出したものの、SNS投稿やLP原稿づくりに追われ、本来の経営判断が後回しになっていませんか。いま求められるのは、社長がすべての実務を抱え込むことではなく、「どこで、誰に、どう勝つか」を見極める視点です。本記事では、社長自らマーケティングを学ぶうえで外してはいけない考え方と、任せ方の基準を整理していきます。
社長が「自分でマーケティング」を学ぶ前に押さえたいこと
なぜ今、社長こそマーケティングを学ぶべきなのか
デジタル化と顧客接点の多様化により、マーケティングは単なる広報ではなく「事業設計」の一部になっています。特に中小企業やスタートアップでは、社長の意思決定が市場での勝ち筋を左右します。だからこそ社長自身が戦略の原理を理解し、社内に落とし込めることが重要です。
マーケティングは「どの市場で、誰に、どんなポジションで戦うか」を決める役割を持ち、経営そのものと不可分です。ここを他人任せにすると、営業・採用・商品開発など他の施策との間にズレが生じ、「部分最適の寄せ集め」になりがちです。社長自身がマーケティングの共通言語を持つことで、事業戦略・ブランド戦略・マーケティング戦略を一つのストーリーとして束ねられるようになります。
「社長が自分でマーケティング」を抱え込んでしまう典型パターン
社内に人材がいない、予算や時間が限られている、あるいは社長本人が原体験を語りたくて実務まで手を出してしまう、といったケースが典型的です。立ち上げ期には有効でも、そのまま放置すると属人化とリソース枯渇を招きます。
特に「デジタルはよく分からないから、詳しそうな社長が全部やる」というパターンは注意が必要です。Instagramの投稿、LPの原稿作成、メルマガ配信、アクセス解析などが社長1人に集中すると、採用・組織・財務など他の重要な経営課題が後回しになります。さらに、ノウハウが社長の頭の中だけに溜まり、会社の仕組みや資産として蓄積されないまま、成長のボトルネックになってしまいます。
実務ではなく「考え方」を学ぶことが重要な理由
社長が身につけるべきなのは、個別ツールの操作知識ではなく、ターゲットの定め方、投資配分の考え方、ブランドの軸などの「判断の原理」です。これがあれば、外注やチームに任せても一貫性を保つことができます。
社長の本来の役割は、「何を目指し、どこに資源を投下するか」を決める意思決定です。具体的には、
- どの市場セグメントを優先するか
- どのチャネルにどれだけ投資するか
- 何をもって成功とみなすか(KPI・期間)
といった「判断のフレームワーク」を理解しているかどうかが重要です。ここが明確であれば、広告担当者や外部パートナーに任せる場合でも、戦略から外れた提案を見抜き、適切に軌道修正できるようになります。
視点1:経営目線でマーケティングを捉える
マーケティングを「売れる仕組みづくり」として見直す
マーケティングは個々の施策の集合ではなく、顧客が認知から検討、購入に至るまでの流れを設計することです。「売れる構造」を描けていれば、どの施策を選ぶかは後から決められます。
ここで大切なのは、「個々の施策」から考え始めないことです。まずは、
- どの入口から顧客に気づいてもらうか(検索、SNS、紹介、オフラインなど)
- どの情報を見れば「自分ごと化」してくれるか(事例、比較表、ストーリーなど)
- 問い合わせから成約まで、理想的にはどんなステップを踏んでもらうか
といった「顧客の行動設計」を描き、その上に広告やコンテンツ、営業の動きを配置していきます。社長がこの全体像を理解していると、現場の提案が「仕組み全体のどこを強化する話なのか」を見極めやすくなります。
3Cで考えると社長の判断がブレなくなる
顧客(Customer)
誰が課題を持ち、誰が決裁者なのかを明確にします。年齢や業種といった属性だけではなく、
- どんな状況で
- 何に困っているのか
といった具体的なシーンで捉えることが重要です。
競合(Competitor)
同業他社だけでなく、顧客が現在選んでいる代替手段(自社運用、人手対応、何もしない選択など)も含めて把握します。
自社(Company)
人材、技術、関係性、立地、社長の原体験やネットワークといった「目に見えづらい強み」も含めて棚卸しし、「勝てる土俵」を決めます。
3C分析の目的は、「自社が勝てる局地はどこか」を見つけることです。特に中小企業には、大企業のようにあらゆる市場を追いかける余裕はありません。上記の観点で整理すると、「この領域なら小さくても圧倒的に勝てる」というニッチが見えてきます。ここを社長自身が決めることで、現場の迷いが減り、意思決定の軸が揃います。
経営資源の配分としてマーケティングを考える
マーケティングは、ヒト・モノ・カネ・時間といった経営資源をどこに集中させるかという「投資判断」の一部です。
- 今年は問い合わせ件数の増加を優先するのか、単価アップなのか、リピート強化なのか
- そのために、営業人員を増やすのか、Webを整備するのか、既存顧客のフォロー施策を強化するのか
といった優先順位は、マーケ担当ではなく社長が決めるべきテーマです。
また、「流行しているから」「競合がやっているから」という理由だけで新施策を増やさないことも重要です。3Cと自社のKPIに照らして、
- 今の戦略フェーズで本当に必要か
- 継続できるリソースがあるか
を基準に、「やらない施策」をあえて選ぶことで、組織全体の集中力が高まります。やる・やらないの判断基準としては、
- 自社のKPIに直結するか
- 再現可能か
- 費用対効果が見込めるかどうか
が目安になります。
視点2:社長にしかできない「言語化」とブランドづくり
「誰に・何を・なぜ提供する会社か」を一文で言えるか
自社を一文で説明できるかどうかは、そのまま意思決定の精度に直結します。ここが曖昧だと、社内浸透も難しくなります。
この一文は、いわば「簡易版のブランドコンセプト」です。
- 誰に(ターゲット)
- 何を(提供価値:機能的価値+感情的価値)
- なぜ(存在理由・ミッション)
が含まれているかを確認してください。これが整理されていないと、採用メッセージも営業トークもバラバラになり、外部パートナーにも意図が伝わりません。逆に一文が明確であれば、値引き、商品開発、キャンペーン案など、日々の細かな判断もブレにくくなります。
社長の原体験を「顧客価値のストーリー」に変える
社長の原体験は、他社と差別化するうえで大きな源泉になります。ただし「自分の苦労話」や「美談」で終わらせず、顧客が共感する価値に翻訳して伝えることが重要です。
そのためには、
- 自分は何に違和感・課題を感じたのか
- なぜその課題を放っておけなかったのか
- その結果、顧客にどんな良い変化を起こしたいのか
までを一つの線でつなげて語ります。そうすることで、単なるストーリーが「顧客にとってのベネフィット」に変わります。
このストーリーは、採用、営業、広報、Webサイト、プレゼン資料など、あらゆる場面で再利用できます。一度社長自身の言葉で書き出し、全社で共有しておくと、メッセージの一貫性が高まりやすくなります。
ブランドをロゴではなく「約束」として設計する
ブランドはロゴやデザインだけでなく、「この会社はこういう価値観で、こういう振る舞いをするはずだ」という顧客との約束です。
- 理想の顧客からどう見られたいか
- 社員が日々の判断に使えるブランド軸(価値観・行動指針)は何か
をあらかじめ定めておくことが重要です。
たとえば、
- どんな時に「それはうちらしくない」と言えるか
- 逆に、多少コストや手間がかかっても「これはやる」と言えるラインはどこか
といった判断基準を言葉として定義しておくと、現場の細かな意思決定が揃いやすくなります。これがないと、社長の頭の中にある「うちらしさ」が共有されず、「その時の気分」がブランドになってしまいます。
メッセージを社内外にブレずに伝えるためのポイント
メッセージの一貫性は、「何を言うか」だけでなく「どう言うか」にも表れます。キャッチコピーを頻繁に変えるよりも、同じ言い回しを複数チャネルで繰り返し使うほうが効果的です。
具体的には、
- よく使うフレーズやキーワードを3〜5個決めておく
- 禁止ワードや避けたいトーン(過度な煽り、専門用語の多用など)を明文化する
- 代表的な紹介文・サービス説明文を、社長監修のもとでテンプレート化する
といった工夫が有効です。こうしておくことで、社長が毎回細部までチェックしなくても、社内外のアウトプットの品質を揃えやすくなります。将来的に外注や新メンバーが増えた際にも、大きなコスト削減につながります。
視点3:自分でやり過ぎないための「仕組み」と役割設計
社長がやるべきこと/やってはいけないことを線引きする
社長
この記事でお伝えしてきたのは、「社長がマーケティングを“自分でやる人”から、“判断軸を持って任せられる人”へと役割を変えていく」視点です。
ポイントを整理すると、次の3つに集約されます。
| ポイント | 概要 |
|---|---|
| 1. 経営目線でマーケティングを捉えること |
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| 2. 社長にしかできない言語化とブランドづくりに集中すること |
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