Webマーケティング内製化でよくある失敗パターンと避けるための工夫
Webマーケティングの内製化に踏み切ったものの、「想像以上に大変だった」「結局、外注時より成果が落ちた」といった声は珍しくありません。検索すると成功事例ばかりが並びますが、現場ではむしろ「失敗パターン」のほうが数多く起きています。とくに、外注からWeb施策を引き取るフェーズでは、引き継ぎ不備や人材不足、ツール選定の迷走などが重なり、サイトや広告運用が一時的に麻痺してしまうケースも見られます。
本記事では、「内製化すればコストが下がるはず」「ノーコードなら誰でも運用できるはず」といった期待先行の判断が、なぜWebマーケティングの現場でつまずきにつながるのかを整理しながら、ありがちな失敗パターンを具体的に取り上げます。そのうえで、目的やKPIの設計、体制づくり、外注からの移行ステップ、運用とガバナンスの整え方など、現実的な打ち手を解説していきます。内製化を検討中の企業も、すでに着手して違和感を抱えている企業も、一度立ち止まって見直すための材料としてご活用ください。
なぜ今「Webマーケティング内製化」が注目されるのか
内製化を進める企業が増えている背景
クラウドやSaaS、ローコードの普及、DX推進の流れによって現場主導の改善が容易になったこと、外注依存による意思決定の遅延やブラックボックス化への反省から、内製化への関心が高まっています。
また、広告代理店や制作会社に丸投げした結果、データやノウハウが社内に蓄積されず、「ベンダーを変えるたびに1からやり直し」になってしまうことへの危機感も背景にあります。日本企業では特に、長年の外注によってレガシーな運用が固定化していたケースが多く、DXの一環として「自社で運用できるスキルと仕組み」を持とうとする動きが強まっています。
「コスト削減」だけではない内製化の本当のメリット
内製化の主な利点は、迅速な仮説検証、顧客理解を反映した柔軟な改善、ノウハウ蓄積による長期的な競争力の獲得です。短期的なコスト削減だけを目的にすると失敗しやすい点には注意が必要です。
特に、キャンペーンやLP改善、コンテンツ更新を「思いついたときにすぐ試せる」スピードは、外注では得にくい価値です。さらに、データ分析やA/Bテストの知見が社内に蓄積されることで、プロダクトや営業、カスタマーサクセスなど他部門への波及効果も期待できます。
それでも失敗が多いのはなぜか
失敗の主因は、目的設定不足、体制・スキル不足、運用設計やガバナンス不備です。多くの失敗は、「ツール選び」や「担当者の頑張り」以前に、経営・マーケティング・ITが合意した目的やKPIがないまま始めてしまう構造的な問題に起因しています。本記事では、典型的な失敗パターンと具体的な対策を解説します。
内製化の前に整理したい「目的」とゴール設定
なんとなくのコスト削減で始めるリスク
「外注費を減らす」だけを目的に始めると、必要な投資や時間を見落とし、結果的に費用対効果が悪化しやすくなります。実際には、採用・育成・ツール導入・移行の初期コストが発生し、短期的には外注より高くつくケースも少なくありません。
にもかかわらず、「来期には外注費が半減しているはず」という期待だけが先行すると、途中で予算が止まり、中途半端な体制のまま内製化が頓挫しやすくなります。
目的別の内製化パターンと優先順位
内製化には、主に次の3つの目的パターンがあります。
- スピード重視:現場でPDCAを回すための最小チームとツールを整備する。
- ナレッジ蓄積:教育・ドキュメント整備と長期的なKPI設計を重視する。
- コスト最適化:移行コストとランニングコストを明確に比較し、総コストを最適化する。
重要なのは、「3つのうちどれを優先するのか」を経営と現場で合意することです。すべてを同時に最大化しようとすると、スキル不足や工数不足で破綻しやすくなります。
成功企業が必ず決めているKPIと評価軸
たとえば、以下のようなKPIを事前に定義します。
- リード獲得単価
- 改善サイクルの短縮(日数)
- コンテンツの編集・更新頻度
- ツールの稼働率
加えて、「どの期間でどこまで達していれば合格とみなすか」という合意ライン(OKレンジ)を決めておくと、短期的な成果のブレによって内製化そのものが否定されにくくなります。
Webマーケティング内製化でよくある失敗パターン
1. 準備不足でスタートして「気合い内製化」になる
役割分担が決まらないまま走り出す
PMや編集責任者、運用担当が不在のまま走り出すと、現場の混乱を招きます。誰が優先順位を決めるのか、誰がKPIを追うのかが曖昧な状態では、「とりあえずできる人がやる」状況になり、炎上や属人化が一気に進みます。
特に、意思決定権と責任範囲を定義しない内製化プロジェクトは、高い確率で迷走します。
外注からの引き継ぎ不足によるブラックボックス化
外注先からの仕様や運用ルールの引き継ぎが甘いと、再現不能な状態に陥ります。レポートの出し方、広告配信のチューニングルール、SEOで重視していたポイントなど、暗黙知に近いノウハウが抜け落ちると、同じ成果を再現するまでに大きな試行錯誤コストが発生します。
短すぎる移行期間が引き起こすトラブル
移行を急ぎすぎると、ノウハウ継承やテストが不十分になります。本来は「観察期 → 共同運用期 → 完全移管」と段階を踏むべきところを、年度予算や契約更新のタイミングだけで決めてしまうと、ローンチ直後にトラブルが多発し、「やはり外注の方がよかった」という後戻りが起きがちです。
2. 人材とスキルが足りず「やりきれない」状態に陥る
1人の万能担当に任せてしまう
SEO・広告運用・コンテンツ制作などを「1人の万能担当」に任せると、専門性の低下と属人化が進みます。
内製化は「担当者のマルチタスク化」ではなく、「必要な専門性を組み合わせる体制設計」が前提です。すべてを1人に集約すると、離職や異動のたびにマーケティング機能そのものが止まるリスクを抱えます。
採用・育成の計画がなく属人化が加速する
内製化は中長期の人材投資プロジェクトでもあり、継続的な教育計画が必須です。ジョブローテーションやOJT、外部研修・伴走支援などを組み合わせて、「2年後・3年後にどのスキルセットの人が何人いる状態か」を描けていないと、常に「できる人待ち」になり、組織としての生産性が上がりません。
ノーコード/SaaSさえあればできると誤解する
ツールはあくまで手段であり、設計力と運用力がなければ効果は出ません。ノーコードやMAツールは一見「誰でも簡単に運用できる」ように見えますが、実際にはセグメント設計、コンテンツ設計、データ設計などの上流が弱いと、機能のごく一部しか使われず、「高い箱だけ買った状態」になりがちです。
3. 要件定義が曖昧で「何を作るか」から迷子になる
優先順位が決まらずスコープが膨張する
「SEOも、広告も、SNSも全部やりたい」という状態からスタートしてしまい、結局どれも中途半端で終わるケースが多く見られます。利害関係者が増えるほど要求は積み上がりやすく、要件定義に明確な切り捨て基準がないと、プロジェクト規模だけが膨張します。
CMSやツール導入が目的化してしまう
ツール選定は、本来は要件から逆算して行うべきです。
「最新のCMSに乗り換えればDXになる」「MAを入れれば自動的に顧客育成できる」といった幻想が先行すると、導入後のコンテンツ戦略や運用体制が追いつかず、宝の持ち腐れになります。まず「誰に」「どの体験を」「どのチャネルで」提供するかを言語化し、そのために必要な要件を整理することが先です。
4. 運用設計がないため「作って終わり」になってしまう
公開後の更新ルール・担当・KPIが未定のまま
ローンチまでは熱量高く進められる一方で、その後の更新頻度・更新基準・担当者の工数確保が決められていないと、数ヶ月で更新が止まりがちです。
PDCAが回らない理由:計測設計と責任の不明確さ
分析ツールを入れただけで満足し、「どの指標を誰がいつ見るのか」「どの数値になったらどのアクションを取るのか」といった運用プロセスが設計されていないと、ダッシュボードは眺めるだけの資料になってしまいます。
放置されて「Webサイト廃墟化」するまでの流れ
典型的には、担当変更や組織改編のタイミングでサイトのオーナーが不在となり、「更新しなくても大きな問題が起きないから」と放置されます。これを避けるには、組織変更があっても変わらない「役割としてのサイトオーナー」「データオーナー」を定めておくことが重要です。
5. ガバナンス不在で社内調整に時間とコストが溶ける
部門間で目的がバラバラ/承認フローが重い
マーケティングはリード獲得、営業は高品質な案件重視、ITはセキュリティ重視など、部門ごとにKPIが分断されていると、Web施策の優先順位が合いません。ここに複雑な稟議・承認プロセスが加わると、キャンペーン公開までに数ヶ月かかることもあります。
セキュリティ・法務・ブランドとの衝突
Cookieや個人情報の取り扱い、外部SaaSとの連携条件、ブランドガイドラインの解釈などは、後から調整すると手戻りが大きくなります。「この範囲ならマーケ側で即断可能」「ここから先は法務・セキュリティ承認が必要」といった境界を初期段階で明示しておくと、内製チームのスピードを落とさずにガバナンスを保てます。
6. ツール/技術選定のミスで身動きが取れなくなる
高機能だが運用負荷が大きいツールを選んでしまう
実際に使う人のスキルや時間を無視して「とりあえず高機能・多機能」を選ぶと、操作が複雑で誰も触れないシステムになりがちです。
過剰カスタマイズで運用コストが増大する
要望をすべてカスタマイズで実現しようとすると、アップデートのたびに検証・改修が必要となり、長期的な保守コストが跳ね上がります。
レガシー連携がネックになる
既存の基幹システムやCRMと連携する必要がある場合、「理論上は連携可能」でも、実務レベルではデータ整合性やバッチ処理の制約で運用困難になることがあります。
現場の操作性と保守性を重視し、短期のPoCだけでなく、本番運用を想定した負荷・障害時の運用フローまで含めて検討することが重要です。
7. 内製化に固執しすぎて「見えない機会損失」を生む
外部専門知見をまったく使わないリスク
SEOや広告運用、アナリティクスなど専門性が高い領域まで全て自前で賄おうとすると、学習曲線の途中で大きな機会損失が発生しやすくなります。
売上機会を逃さないためのハイブリッド型
合理的なのは、コアを内製しつつ専門部分は外部を活用するハイブリッド型です。
たとえば、戦略・KPI設計・日々の運用は内製で行いながら、大型キャンペーンや高度なテクニカルSEO、データ基盤構築などは外部パートナーと共創する形にすることで、「スピードと専門性」の両立がしやすくなります。
失敗パターンを避けるための具体的な工夫
目的とKPIを最初に「言語化」して共有する
3つの質問で内製化の目的を明確にする
以下の3点を明確に定義します。
- 誰のために行うのか
- どの指標を改善するのか
- いつまでにどの程度の効果を出すのか
ここでいう「誰」には、顧客だけでなく、営業やカスタマーサクセスなど社内の主要ステークホルダーも含めて考えると、施策の優先順位がブレにくくなります。
経営・現場・ITが合意すべきポイント
予算、リソース、SLA、セキュリティ基準を明確にしておくことが重要です。内製化は「一度やって終わり」の取り組みではなく継続投資であることを、経営層が理解しているかどうかもポイントになります。
SLA(どの程度のスピードと品質を守るか)を合意しておくことで、「過度に高い期待値」と「現実的なリソース」のギャップを早めに埋められます。
失敗プロジェクトに共通する「目的の抜け漏れ」
「DXの一環としてなんとなくやる」「周囲もやっているからやる」といった曖昧な期待値だけでは、短期的につまずいたタイミングで中止・棚上げされやすくなります。「この内製化がビジネスにどんなインパクトを出すのか」を、一枚のスライドで説明できるレベルまで言語化しておくことが重要です。
体制づくり:どんな役割が最低限必要か
中小〜中堅企業向けの現実的なチーム編成例
最低限、以下のような体制を想定できます。
| 役割 | 人数目安 | 主な役割 |
|---|---|---|
| PM | 1名 | ビジネスゴールと施策の橋渡し、全体進行管理 |
| マーケティング担当 | 1〜2名 | KPI設計、施策立案・実行、データ分析 |
| コンテンツ編集 | 1名 | 記事・LPなどの企画・編集・ライティング |
| 広告運用 | 兼任可 | 配信設計、入札調整、レポーティング |
| 技術支援 | 外部含む | CMSや計測、連携などの技術面サポート |
PMは単なる進行管理ではなく、「ビジネスゴールと施策をつなぐ役割」として位置づけると、部門間調整や優先順位決定がスムーズになります。
必須スキルと外部で補うべきスキル
自社で持つべき必須スキルと、外部で補うべきスキルを切り分けます。
- 社内で必須:PM、基本的なデータ分析力、編集・ライティング力
- 外部活用が有効:高難度のSEO技術、BI構築、特殊なシステム開発
自社の強み・弱みを踏まえて、「どこまで社内でやると競争力になるか」「どこから先は専門性が高すぎて非効率か」を定期的に見直すことも大切です。
属人化を防ぐドキュメントとナレッジ共有
テンプレート化と定期的なナレッジレビューを運用します。
具体的には、キャンペーン実施後に「施策概要・結果・学び」を1ページにまとめる「ラーニングシート」を標準化し、月次で共有・レビューする場を設けます。これにより、担当者が変わっても学びが組織に蓄積されていきます。
外注から内製へ「賢く移行」するステップ
移行期間の設計(フェーズ分割)
外注から内製への移行は、次のような段階を設定するとスムーズです。
- 引き継ぎ観察期
- 共同運用期
- 完全内製化
観察期では、外注先の作業内容・判断基準・チェックポイントを詳細に記録し、どの業務が内製に向くか・向かないかを見極めます。
まずどこから内製化すべきか(優先順位)
低リスクで頻度の高い業務から着手すると現実的です。
たとえば、日々のコンテンツ更新や記事作成など、運用に近い領域を先に内製化することで、チームが成功体験を積みやすく、ツール操作やワークフローにも慣れやすくなります。
引き継ぎ時に必ず確認すべき項目
以下のような内容は、必ずチェックリスト化して引き継ぎます。
- 運用フロー
- 各種設定値
- 計測タグの設置・管理方法
- 緊急時の対応手順
- 連絡先・エスカレーションルート
加えて、「過去にうまくいかなかった施策」や「暗黙的なNGルール(社内事情やブランド面)」なども、可能な限り引き出しておくことで、同じ失敗を繰り返す確率を大きく下げられます。
運用設計:日々の業務と改善サイクルを仕組み化する
週次・月次で回すべきWeb運用ルーティン
運用ルーティンの一例は以下の通りです。
- 週次:KPIダッシュボードの確認、軽微な改善の実行
- 月次:深掘り分析と翌月以降の施策計画
四半期ごとには、「そもそものKPI設定やチャネルミックスが妥当か」を見直すレビュー会を設けると、惰性運用を防げます。
データ計測とレポートフォーマットの標準化
主要指標、施策ごとの費用対効果、A/Bテストの結果を1枚にまとめるテンプレートを用意します。
ここに「次回の仮説・打ち手」と「実行担当・期限」まで書き込む運用を標準にすると、レポートがそのままアクションプランとして機能します。
「小さくテストして素早く改善」するためのルール
仮説 → 小規模実装 → 定量評価 → スケールという流れを基本とします。
テスト1回ごとに、「どの数字がどれだけ動いたら次のステップに進むか」を事前に決めておくと、感覚ではなくデータに基づいて意思決定しやすくなります。
ガバナンスと社内調整をスムーズにするコツ
承認フローをシンプルにする工夫
承認フローは、閾値を決めて自動承認/要承認を分け、例外処理は明文化します。
たとえば、次のようにルール化します。
- 自動承認:ブランドに大きく関わらない微修正、既存フォーマットの範囲内での更新
- 要承認:新しいキャンペーンコンセプト、法的リスクがある可能性のある表現
このように具体化することで、判断の迷いとムダな待ち時間を減らせます。
部門間の利害をすり合わせる打ち合わせの進め方
定例会議で短時間に意思決定できる体制を整え、ファシリテーターを明確にします。
各部門のKPIを事前に共有し、「全体最適のKPI(たとえばLTVや売上総利益)」を上位指標として合意しておくと、個別最適の争いが起きにくくなります。
セキュリティ・法務と早めに握っておくポイント
以下のような点は早い段階で合意しておきます。
- データの取り扱い方針
- トラブル発生時の責任分担
- 外部サービスとの連携条件
あわせて、Cookieポリシーやプライバシーポリシーの更新手順、外部ツールのアカウント管理(権限付与・削除ルール)なども明文化しておくと、後からの大きな手戻りやセキュリティ事故を防げます。
ツール/SaaS選定で失敗しないためのチェックポイント
「現場が本当に使えるか」を見極める質問
ツール選定時には、次のような観点で確認します。
- 誰が操作するのか
- 月間どの程度の作業時間が発生するのか
- 学習コストは許容範囲か
さらに、トライアル期間中に実際の業務シナリオを一通り回してみることや、非エンジニアの担当者にも触ってもらうことなど、机上ではなく実務前提で検証することが重要です。
自社に合ったCMS・広告運用ツール・分析基盤の考え方
自社に合うかどうかは、次の順番で評価すると整理しやすくなります。
- 要件への適合度
- 想定される運用工数
- 将来の拡張性
- 導入・運用費用
特に、将来のチャネル追加(新しい広告媒体やMA連携など)や、多拠点・多言語展開の可能性がある場合は、その拡張性を事前に評価しておくと、数年後の作り直しリスクを下げられます。
過剰カスタマイズを避けるためのルール
「基本は標準機能で対応する」「カスタマイズはROIが明確な場合のみ行う」といったルールを設けます。
カスタマイズ要望が出たときには、「本当にシステム側で解決すべきか」「運用ルールやプロセス変更で代替できないか」を検討するチェックポイントを用意すると、不要な開発を抑制できます。
成功している企業の内製化パターンから学ぶ
段階的な内製化で成果を出した企業の進め方
成功している企業の多くは、初期は外部パートナーと伴走しながら人材とナレッジを育て、その後段階的に運用を引き取る進め方を採用しています。
一例として、次のような段階を踏むケースが挙げられます(自社の状況に合わせて組み替えて構いません)。
| フェーズ | 内製化の範囲 | 外部パートナーの役割 |
|---|---|---|
| フェーズ1 | レポートの読み方・基本運用の一部 | 施策実行の主体、ナレッジ提供 |
| フェーズ2 | コンテンツ制作・簡易施策の運用 | 設計レビュー、高度領域の実行 |
| フェーズ3 | 日々の運用と改善サイクル全般 | 戦略アドバイザー、スポット支援 |
まとめ:設計から始める内製化が遠回りのようで最短ルート
Webマーケティングの内製化は、「外注からすべてを引き上げる」こと自体が目的ではありません。自社の事業や組織にとって、どの領域を自前で担うと価値が高いのかを見極め、そのうえで投資・体制・ツール・ガバナンスを整えていく長期戦に近い取り組みです。
本記事で取り上げた失敗パターンの多くは、
- 目的とKPIがあいまいなまま始める
- 人材計画や役割分担を固めずに「気合い」で進める
- ツール導入や内製化そのものが自己目的化する
- 運用設計やガバナンスの仕組みづくりを後回しにする
といった「設計不足」から生じていました。
一方で、うまくいっている企業は、
- 最初に目的・KPI・評価レンジを言語化し、経営・現場・ITで合意する
- 小さく始めて段階的に内製範囲を広げる
- コア業務は社内に、専門性の高い部分は外部に任せるハイブリッド型を前提にする
- ドキュメント・定例レビュー・標準フローを通じてナレッジを蓄積し続ける
といった基本を丁寧に押さえています。
自社で内製化のプランを見直す際は、「どこからどこまでを、いつまでに、どの水準で内製するのか」を紙に書き出し、現在のリソースやスキル、既存の外注パートナーとの関係を含めて棚卸ししてみてください。そのうえで、段階的な移行ステップと、外部活用も含めた現実的な体制案を組み立てることが、遠回りのようでいて最短ルートになります。