地方企業こそ、今こそWeb集客に取り組むべき理由
「うちのような地方企業が、Web集客なんてしても意味があるのだろうか」――人口減少や若者の流出が進むなかで、こんな迷いを抱える経営者は少なくありません。昔つくったホームページから問い合わせがほとんど来なかった経験があれば、「やっても同じことになりそうだ」と感じるのも無理はないでしょう。
ただ、今の集客の構造を冷静に分解してみると、地方企業ならではの強みを生かしながら、現実的な負担で成果を積み上げる道が見えてきます。地域の人は、すでに「まずスマホで検索して比較する」前提で動いているにもかかわらず、多くの地元企業はMEOやホームページ、SNSを十分に整えきれていません。だからこそ、基本的な対策を一歩ずつ積み重ねるだけで、「同じ市内で真っ先に見つかる存在」へ近づいていけます。
本記事では、地方企業がWeb集客で直面しがちな課題を整理しながら、限られた人員と予算でも取り組みやすい方法を具体的にお伝えしていきます。
「うちみたいな地方企業でもWeb集客で本当に成果は出るのか?」
地方の企業の経営者・ご担当者の方から、よくいただくのが次のような声です。
- 「人口も少ないし、そもそも母数が少ない」
- 「Webなんて都会の会社の勝負でしょ」
- 「ホームページを昔作ったけど、ほとんど問い合わせが来なかった」
こうした感覚はもっともですが、現在の仕組みを丁寧に分解していくと、
- 地方だからこそ効きやすいWeb集客の方法がある
- しかも、全国大手と真正面から戦う必要はない
という現実が見えてきます。
実際、地方中小企業の多くは、リソースも予算も限られるなかで「全国展開」ではなく「地域密着」で成果を出しています。競合も、全国大手ではなく、同じ市町村や隣接エリアの数社〜数十社にすぎません。
さらに、地方にはいまだにWeb運用が手つかずの企業が多くあります。
- MEO(Googleビジネスプロフィール)をきちんと整備していない
- KPI(問い合わせ数・応募数)を設定せず、なんとなく情報発信している
- 「作って終わり」のホームページが放置されている
このような状況が一般的です。そのため、基本的な対策を1〜2年継続するだけで「地域No.1の見え方」を獲得している企業も少なくありません。
以下では、地方の中小企業が直面しやすい典型的な課題を整理しつつ、「現実的に、どこからどう変えていけばよいのか」を具体的に解説します。
地方企業がいまWeb集客に取り組むべき理由
人口減少・商圏縮小が進む地方市場の現実
地方では、人口減少・高齢化により「何もしなくてもお客さまが増える」時代は終わっているのが現実です。かつては自然増と口コミだけで成り立っていた業種(工務店・建設・医療・専門店・サービス業など)も、次のような変化に直面しています。
- 若年層が都市部へ流出し、新規顧客候補が減っている
- 同じ商圏内での企業数はそれほど減っておらず、競争はむしろ激化している
- 生活者は「まずスマホで検索して比較」するのが当たり前になった
加えて、住宅・医療・士業・福祉など、従来「地域の付き合い」で決まっていた領域でも、
- 「〇〇市+業種名」での比較サイト・ポータルの利用
- Googleマップの口コミ評価の確認
- SNSでの雰囲気・人柄のチェック
が当たり前になっています。
つまり、従来と同じ集客手段のままでは、じわじわとシェアを奪われていく構造になっています。
「紹介・口コミだけ」では限界が来る構造的な理由
紹介・口コミは非常に強力な集客手段ですが、次のような弱点があります。
- 紹介のスピードはコントロールできない(増やしたいタイミングで増やせない)
- 既存顧客の属性に依存するため、新しい客層やエリアに広がりにくい
- ネガティブな口コミが出たときのカバー手段が少ない
特に人口減少が進む地方では、「口コミに頼っている顧客層そのもの」が年々縮小していきます。そのため、「紹介頼み」は中長期的にリスクが高い状態です。
一方で、Webを軸にすると、次のような利点があります。
- 「地域名+サービス名」で探している「今、検討している人」に直接リーチできる
- 検索・SNS・口コミサイトを通じて、紹介を増幅できる
- 採用・パート募集など、別の目的にも横展開できる
実際、地方の工務店や整骨院などで「紹介+MEO+口コミ返信」を組み合わせるだけで、問い合わせが2〜3倍になった例も珍しくありません。
「紹介・口コミをやめる」のではなく、「Webでそれを何倍にも増幅する」イメージを持つと、投資する意味が見えやすくなります。
Web集客は「全国勝負」ではなく「地域No.1争い」
多くの地方企業が誤解しているのが、「Web=全国の強豪と戦う世界」というイメージです。
実際には、地元のお客さまが検索しているのは、
- 「〇〇市 工務店」
- 「△△町 整骨院」
- 「□□市 外壁塗装 口コミ」
といった「地域名+業種・ニーズ」のキーワードです。この土俵で戦う限り、ライバルは同じ市内・隣町の数社〜数十社程度に絞られます。
さらに地方では、
- MEO(Googleビジネスプロフィール)を十分に運用していない
- ホームページやSNSがほとんど更新されていない
- KPIをPVだけで見ており、問い合わせや電話数を計測していない
という企業が多数派です。そのため、「地域名での検索」「地図アプリでの表示」「口コミ数」などの軸で、“地域No.1の見え方”をつくることは、いまならまだ十分に可能です。
Web集客のゴールは「全国で1位」ではなく、「自社の商圏で真っ先に選ばれる1社になること」。この発想転換ができるかどうかで、戦略の組み立て方は大きく変わります。
地方の中小企業がWeb集客で直面しやすい5つの課題
課題1:社内にWeb担当者・ノウハウがない
経営者と総務・事務が片手間で兼任している実態
地方企業では、専任のWeb担当者がいないケースが圧倒的多数です。
- 経営者が空いた時間で更新しようとする
- 総務・事務の方に「ついでにホームページとSNSもお願い」と丸投げする
- 担当者は本来業務が忙しく、Webは常に後回しになる
このような状況では、「計画的な改善」や「効果検証」を行う余力がありません。
地方中小企業のインハウス化を進める企業の多くが「スキル不足・ノウハウ不足」を課題として挙げています。
「人がいないからできない」のではなく、「仕組みと役割分担がないから、いつまでも片手間のまま」になっているケースがほとんどです。
「誰も責任を持たない」状態が続くと起こること
- 何を目的に、どんな指標で、どこまでやるのかが決まらない
- 制作会社や外部パートナーに丸投げになり、自社の理解が深まらない
- 担当者が変わるたびにゼロからやり直しになり、ノウハウが蓄積しない
結果として、「お金と時間はかけているのに、毎年同じような悩みを抱え続ける」という状態に陥ります。
この悪循環を断ち切るには、次のような“仕組み前提”の体制づくりが必要です。
- 「メイン担当1名+サブ1名」を決める
- 月ごとのタスク(例:MEO週1投稿・事例月1本)を紙1枚に見える化する
- 外部パートナーには「仕組みづくり」までセットで依頼する
課題2:何にいくら使えばいいか、投資対効果が見えない
「PV(アクセス数)」だけ見て判断してしまう危険性
Webのレポートでよく出てくるPV(ページビュー)やアクセス数は、あくまで「どれだけ見られたか」の指標です。
PVだけを追いかけると、
- 見られているけれど、問い合わせにつながらない記事ばかり増える
- 地域外のアクセス(情報だけ見てすぐ離脱する人)を集めて満足してしまう
といった状況になりがちです。地方企業にとって本当に重要なのは、次のような「売上・採用につながるアクション」です。
- 電話の本数
- 問い合わせフォームの送信数
- 資料請求・見積もり依頼
- 来店・来場予約
- 採用応募の数
売上・問い合わせと結びつかない数字の追いかけ方
よくある失敗として、次のようなパターンがあります。
- 「Instagramのフォロワーを1万人にしたい」と目標を立てる
- しかし、ほとんどが県外・興味の薄い層で、来店には結びつかない
- それでも「数字が伸びているから良い」と勘違いしてしまう
重要なのは「誰に届いているか」「どんな行動につながっているか」であり、「数字の大きさ」そのものではありません。
地方のWeb施策の多くは、「認知を広げること」と「好感度(この会社がいいなと思われる状態)」のどこかでつまずいています。
だからこそ、
- 「問い合わせを月〇件増やす」
- 「Googleマップ経由の電話を△%増やす」
- 「採用応募を年×件にする」
といった“売上直結KPI”から逆算し、その数字に関係しない指標は追わないくらいの割り切りが必要です。
課題3:ホームページを作って終わりになってしまう
地方企業で特に多い「立ち上げ花火型」運用の失敗例
- 数十万〜数百万円かけてリニューアルする
- 公開直後は社内で話題になるが、3か月もすると更新が止まる
- 1年後には、営業時間・料金・スタッフ情報などが古いまま放置される
- 「ホームページからはほとんど問い合わせが来ない」という結論になる
このような「立ち上げ花火型」は、地方企業で非常に多く見られます。
背景としては、
- 制作会社が「納品」までをゴールにしている
- 企業側も「作ること」自体をゴールにしてしまう
- 公開後の更新・改善の制度設計がない
という構造があります。
制作会社と企業側の役割分担があいまいなまま進む理由
原因の多くは、制作段階で次のような点が決まっていないことにあります。
- 公開後、誰が・どの頻度で・どんな内容を更新するのか
- 問い合わせを増やすために、どのページを育てていくのか
- 反応を見て改善するための測定方法と役割分担
制作会社は「形をつくる」プロであって、「運用を続ける」責任までは負いません。企業側も公開後の運用設計を自ら主体的に考えないと、「作って終わり」になってしまいます。
成果を出している地方企業は、例えば次のように運用を設計してからサイトを作り直しています。
- 「ブログ月1本+事例ページ月1本」を最低ラインとしてルール化する
- そのコンテンツをSNSやMEOに横展開し、“1ネタ多用途”で運用する
- 四半期に1回はアクセスと問い合わせ数を確認し、改善案を決める
課題4:大手企業や都市部の競合に勝てないと思い込んでいる
検索結果で「全国大手ばかり」に見えるから諦めてしまう構図
「住宅 リフォーム」「求人 事務」「外壁塗装」など、大きなキーワードで検索すると、確かに全国大手やポータルサイトばかりが並びます。その画面だけを見ると、
- 「うちみたいな小さな会社が出てくる余地なんてない」
- 「広告費で勝てるはずがない」
- 「Webは大手の世界だ」
と感じてしまいます。
しかし、実際のお客さまは多くの場合、
- 「〇〇市 リフォーム 補助金」
- 「△△町 外壁塗装 相場」
- 「□□市 内科 評判」
といった「地域名+ニーズ」で検索します。このレベルまでキーワードを具体化すると、検索結果には地元の企業や病院、店舗が表示されます。
実は「地域キーワード」ではまだ競争が緩いジャンルも多い
地方では、
- Googleビジネスプロフィールをきちんと登録していない
- 写真や口コミがほとんどない
- 地域名を含めたコンテンツを用意していない
という事業者が多く、地域キーワードの多くは「空いているポジション」が残っているのが実情です。
例えば、「〇〇市 塗装 外壁」「△△町 整骨院 交通事故」「□□市 工務店 自然素材」といったキーワードで、「地図の上位3枠(ローカルパック)」や検索結果の上位を取りに行くことは、まだ十分に可能です。
ある長野県の工務店では、「〇〇市 工務店」「〇〇市 新築 自然素材」などのローカルキーワードで、地場の大手ハウスメーカーを押しのけてローカルパック1位を獲得し、半年で問い合わせ3倍を実現しました。
このように、“全国規模では無名”でも、“商圏内の検索結果ではトップ”というポジションは、地方ならまだ狙える状態です。
課題5:SNSやMEOを始めても、継続運用が続かない
担当者の異動・退職で一気に止まるパターン
- 若手社員が中心となってInstagramをスタートする
- 半年ほどは順調に更新していたが、異動や退職で途絶える
- アカウントだけが残り、最後の投稿が数年前の日付のままになる
こうした状況は、地方企業で頻出します。
これは「個人のやる気」に依存しており、
- 更新ルールが文書化されていない
- 代わりに引き継げる体制がない
- そもそも何を目的に投稿していたかが共有されていない
という構造的な問題が原因です。
「ネタがない」「反応がなくてやめる」という心理的ハードル
- 何を投稿したらいいかわからない
- 「いいね」が少なくて、やっていても意味がないように感じる
- 仕事が忙しいと、真っ先にSNS更新が後回しになる
このような心理的ハードルを下げるためには、
- 「完璧な投稿」を目指さない
- 「お客さまとの距離を縮める」ことを目的にする
- ネタを「仕組み」でストックしていく
といった工夫が必要になります。
例えば、
- 毎月の施工事例・お客様の声を必ず1本書く
- それをMEO・ブログ・Instagram・ショート動画に横展開する
- 「1ネタ4投稿」で考えることで、“ゼロから考える回数”を減らす
といったシンプルなルールにすることで、月3〜5時間でも継続可能な運用に変えられます。AIツールやテンプレートを活用して文章のたたき台を作る中小企業も増えています。
課題を乗り越えるための考え方:地方企業だからこそ勝てる戦い方
「全国ではなく半径〇kmで勝つ」という発想に切り替える
商圏を明確に区切るメリット
まず最初にやるべきは、「どこまでを自社の主戦場とするか」を決めることです。
- 車で30分圏内
- 〇〇市+隣接する2つの町
- 鉄道路線のこの駅〜この駅まで
といった「半径〇km」を決めることで、次のようなメリットが生まれます。
- 競合の数と顔ぶれが明確になる
- 地域名を含めたキーワード戦略が立てやすくなる
- チラシ・イベント・紹介とWebの連携が取りやすくなる
これは、限られたリソースしかない地方企業にとって、「やらないことを決める」意味も大きく、無駄なエリアやターゲットに広告費・時間を使わなくて済むようになります。
「誰に」「何を」届けるのかを絞り込む手順
- 利益率が高く、今後も伸ばしたいサービスを1〜2つに絞る
- そのサービスをよく利用してくれる「理想的なお客さま像」を明確にする
(例:30〜40代の共働き夫婦、小学生の子どもがいる、地元出身など) - その人がスマホでどんな言葉で検索しそうかを書き出す
(例:「〇〇市 新築 自然素材」「〇〇市 子育て リフォーム」) - そのキーワードで検索したときに、自社がどう見えていてほしいかを逆算する
この「誰に・何を」の軸を決めることが、MEO、ホームページ、SNSなど、すべての施策の判断基準になります。
うまくいっている企業ほど、「ターゲット」と「キーワード」を紙1枚にまとめ、社内・外部パートナーと共有したうえで運用を始めています。
Web集客のゴールを「売上直結のKPI」に変える
PVではなく「問い合わせ数・電話数・来店数」を見る理由
地方企業がWeb集客を考えるとき、ゴールは次のようにシンプルです。
- 電話が何件増えたか
- 問い合わせフォームから何件入ったか
- 来店・来場予約がどれだけ増えたか
- 採用応募がどれだけ増えたか
これらが増えない限り、PVがどれだけ増えても意味がありません。
小さな会社でも追えるシンプルな指標設計の例
例えば、次のような3〜4つの指標に絞ると運用しやすくなります。
- 月あたりの新規問い合わせ数
- Googleビジネスプロフィール経由の電話の本数・ルート検索の回数
- 「地域名+サービス名」での検索順位(3〜5個のみ)
- 口コミの件数と平均評価
これだけでも、毎月の数字を1枚のシートにまとめて追いかければ、「どの施策が効いているのか」「どこを改善すべきか」が見えてきます。
例えば地方工務店やクリニックでは、
- 「問い合わせ数」「通話数」「予約数」だけを追いかける
- 成果につながっていないページやSNS投稿は思い切ってやめる
- 効いている導線(例:MEO→電話)に時間を集中させる
といった“シンプルKPI運用”に切り替えることで、限られた人員でも着実に成果を積み上げている例が増えています。
施策1:まずはMEO(Googleビジネスプロフィール)から整える
地方企業と相性が良い「MEO」とは何か
MEO(Map Engine Optimization)は、Googleマップやローカル検索で上位に表示されるための対策です。
地方のように「実店舗・来店」がゴールになるビジネスでは、広告よりも先に取り組むべき“土台”と言えます。
「〇〇市+業種」で検索されたときに何が起きているか
お客さまが「〇〇市 整骨院」「△△町 工務店」と検索すると、画面には次のような流れで表示されます。
- 画面上部に、地図と3つの店舗・会社のリスト(ローカルパック)が表示される
- その下に、通常のホームページの検索結果が並ぶ
多くの人は、まずこのローカルパックの中身を見て、
- 評価(★の数)
- 口コミの件数と内容
- 写真の雰囲気
- 営業店舗・場所のわかりやすさ
をざっと確認します。ここで「しっかりしていそう」「口コミが良さそう」と感じた先に電話やルート検索が発生します。
ホームページより先に見られている画面の正体
現在は、「ホームページに来る前に、Googleビジネスプロフィールでほとんどの判断がなされている」ケースが増えています。
- 問い合わせ前に「写真」と「口コミ」で印象が形成される
- 電話ボタン・ルートボタンがあるため、ホームページを見ずに行動する人も多い
- 最新情報(臨時休業・イベント・キャンペーン)もここで確認される
このため、「まずはGoogleビジネスプロフィールを整える」ことが、地方企業のWeb集客において最優先の施策になります。
実際に、地方の整骨院や内科クリニックでは、MEOを整備しただけで「Google経由の通話数が1.5〜2倍」「サイトクリック数が3倍近くに増えた」といった事例も報告されています。
最低限やるべきGoogleビジネスプロフィールの整備
NAP情報・カテゴリ・営業時間・商品・サービス
次のような基本情報を正しく整備することが重要です。
- 会社名・住所・電話番号(NAP)が正しく統一されているか
- カテゴリが業種に合っているか(メイン+サブカテゴリ)
- 営業時間・定休日・特別営業時間が最新か
- 商品・サービス欄に主要サービスがわかりやすく登録されているか
ここが誤っていると、地図の表示精度にも影響しますし、ユーザーの信頼も損ないます。
また、NAP情報はホームページやその他のポータルサイトとも整合性を取ることが重要です。記載がバラバラだと、Google側の評価も下がりやすくなります。
写真・投稿・口コミ返信のポイント
- 外観・内観・スタッフ・商品・施工事例などの写真を10〜30枚程度登録する
- 月に1〜4回程度、「お知らせ」「キャンペーン」「施工事例」などを投稿する
- 口コミをいただいたら、必ず丁寧に返信する(感謝と具体的なお礼を添える)
- ネガティブな口コミにも、事実確認と誠実な対応方針を回答する
これだけでも、「情報が整っていない競合」と比べて大きな差別化になります。
特に口コミは、地方ほど「知り合いの紹介+ネットの評価」が意思決定の決め手になりやすく、「件数」「内容」「返信の丁寧さ」がそのまま信頼の指標として見られます。
成功事例:地方工務店がMEOで大手ハウスメーカーを抜いたケース
週3投稿と口コミ運用で問い合わせが増えたプロセス
ある地方の工務店では、
- 自社サイトはシンプルなものがあるだけ
- 広告予算もほとんどない
という状況から、MEOに集中投資しました。具体的には次のような取り組みです。
- Googleビジネスプロフィールの基本情報を徹底的に整備
- 週3回、施工写真と一言コメントを投稿(着工・途中・完成・お客様の声など)
- 引き渡し時に、お客様に口コミ投稿を丁寧に依頼
- いただいた口コミには、すべて代表・担当者名で返信
これを6か月継続した結果、
- 「〇〇市 工務店」「〇〇市 新築 自然素材」でローカルパック1〜3位に常時表示
- Google経由の電話・ルート検索が約2〜3倍に増加
- ホームページ経由の問い合わせも、約3倍に増加
という成果につながりました。
かけたコストと、得られた成果
- 外部コンサルにスポットで初期設計・運用の型づくりを依頼(数十万円)
- 運用は社内の1名が週1〜2時間で対応
- 広告費はほぼゼロ
にもかかわらず、1棟あたり数百万円〜数千万円の案件が毎年コンスタントに増えるようになり、「地域の検索結果上では、大手ハウスメーカーよりも見つけてもらいやすい状態」を実現しました。
同様のアプローチは、整骨院・美容室・飲食店・士業・クリニックなど、地域密着型のあらゆる業種に応用できます。大きな予算よりも、地道な運用と地域特化の見せ方がものを言う領域です。
施策2:ホームページを「情報パンフレット」から「集客装置」に変える
「作って終わり」から「更新して育てる」サイトへ
地方企業サイトでよくある3つの欠点
- 自社目線の情報だけで、利用者が知りたいことが書いていない
(料金・事例・よくある質問が不足している) - スマホで見たときに、文字が小さい・ボタンが押しづらい
- どこから問い合わせればいいかがわかりづらい
これらはデザインの好み以前の「基本的な使い勝手」の問題です。
地方のサイトリニューアル事例でも、「見た目はきれいだが導線が悪く、問い合わせが減ってしまった」というケースは少なくありません。
まず改善すべきはデザインよりも導線と中身
次のような点から改善していくと、問い合わせ率は大きく向上しやすくなります。
- サイトのどのページからでも「電話」「問い合わせフォーム」「LINE」などにすぐ行けるようにする
- 最上位メニューに「初めての方へ」「サービス案内」「料金」「事例」「よくある質問」「会社概要」「アクセス」を分かりやすく配置する
- それぞれのページで、お客さまが不安に思うポイントに答える
デザイン刷新に大きな費用をかける前に、「導線」と「中身(コンテンツ)」を優先的に整えることが重要です。
成功している地方中小企業の多くは、高価なデザインよりも「読みやすさ・分かりやすさ・問い合わせしやすさ」を徹底し、そこに地域名入りの事例やFAQを積み上げています。
地域密着ビジネスが載せるべきコンテンツ
よくある質問・料金・事例・お客様の声・スタッフ紹介
地方の生活者が不安に感じるのは、主に次の3点です。
- この会社・お店は信頼できるのか
- 自分に合っているのか
- 料金はどのくらいかかるのか
これに答えるために、次のようなコンテンツが有効です。
- よくある質問(Q&A):初めての方が不安に思うことをまとめる
- 料金表:明確な金額、あるいは価格帯や料金例を掲載する
- 施工事例・事案紹介:ビフォーアフター写真、具体的な内容、エリア、期間など
- お客様の声:実名(またはイニシャル)と写真があるとなお良い
- スタッフ紹介:顔写真と簡単なプロフィール、仕事への想い
これらはそのままSNSやMEO投稿にも流用でき、「作って終わり」ではなく「作れば作るほど他チャネルでも使える資産」になります。
「地域名×サービス」で検索されるページの作り方
- ページタイトルに「〇〇市の□□サービス」と地域名を入れる
- 見出しの中にも自然な形で地域名を織り込む
- 実際に対応しているエリア(市町村名)を明記する
- 地域特有の事情(気候・補助金・暮らしのスタイル)に触れる
例えば、「〇〇市で自然素材の家づくりをお考えの方へ」といった切り口のページを作ることで、「地域名+ニーズ」の検索に対応しやすくなります。
地方では、「地域名+サービス名」での競合コンテンツがまだ少ないため、半年〜1年コツコツと地域密着の記事を増やしていくだけで、上位表示を狙えるケースが多く見られます。
小さな会社でもできるコンテンツの仕組み化
1つの記事をブログ・Instagram・ショート動画に横展開する方法
1つの施工事例やお客様の声から、次のように複数のコンテンツを作ることができます。
- ブログ記事として「お客様の事例紹介」を1本作成する
- その中から、ビフォーアフター写真+短いコメントを抜き出し、Instagramに投稿する
- 現場の様子や完成した空間をスマホで撮影し、15〜30秒のショート動画にしてYouTubeショートやリールに投稿する
こうすることで「1つのネタ」を3倍活用できます。
地方企業の人手不足を補うには、この「1コンテンツ多チャネル展開」の発想が不可欠です。
月に1本しか書けなくても成果につなげるコツ
- 毎月必ず「1本だけは事例記事を書く」と決める
- その1本をMEO投稿・Instagram・ショート動画に展開する
- 半年〜1年続ければ、12〜24本分の「地域密着コンテンツ」が蓄積する
量を増やすことよりも、「続けられる形にすること」が重要です。
成功している地方企業の多くは、「完璧な記事を毎週」ではなく、「7割の出来でいいから毎月1本+横展開」を標準とし、社内で誰でも回せるようにテンプレート化しています。
施策3:SNSを「なんとなく投稿」から「信頼づくりの場」に変える
地方企業がSNS運用で陥りがちな勘違い
バズを狙う必要はない理由
地方企業にとってのSNSの目的は、
- 地域のお客さまに「身近な存在」と感じてもらう
- 検索や紹介で知った人が、安心して問い合わせできるようにする
ことであり、「全国でバズること」ではありません。
むしろ、バズを狙った投稿は日常の業務やブランドイメージとズレるリスクもあります。
フォロワー数より大事な指標
次のような「深さ」を示す指標の方が重要です。
- 地元の人がどれくらいフォローしてくれているか
- 来店・問い合わせの際に「SNSを見て」と言ってくれる人の数
- お客様とのコメントのやりとりやDMでの相談件数
地方の整骨院や美容室などでは、フォロワーが数百人でも、その大半が商圏内の人であれば、十分に予約や指名に直結することがわかっています。
お客様との距離を縮める投稿ネタの作り方
「日常」「人」「地域」が武器になる
地方企業の強みは、「顔が見えること」「地域に根ざしていること」です。投稿ネタとしては、次のような「日常」がそのまま信頼づくりの素材になります。
- スタッフの紹介・一日の様子
- 現場でのちょっとした工夫や裏側
- 地域のイベントへの参加・協賛
- 季節の変化と仕事のつながり(雪・台風・花粉の時期など)
スタッフ・現場・地域イベントの見せ方
- 顔写真は笑顔や自然な表情を意識する
- 「誰が」「どんな想いで」仕事をしているかを一言添える
- 地域イベントでは、「どこで」「何をしていたか」「誰が来てくれたか」を紹介する
- お客様の許可が得られれば、一緒の写真やコメントも掲載する
こうした積み重ねが、「この会社なら安心して頼めそう」という心理的ハードルを下げてくれます。
SNS単体で売上を追うのではなく、「MEOやホームページで見つけた人が、最後の一押しとして見る安心材料」と捉えると、役割と期待値が明確になります。
施策4:外部パートナーとの付き合い方を見直す
なぜ「全部外注」も「全部自社」もうまくいかないのか
制作会社・広告代理店・コンサルそれぞれの得意不得意
| パートナー種別 | 得意なこと | 不得意になりがちなこと |
|---|---|---|
| 制作会社 | デザインやサイト構築 | 継続的な集客運用 |
| 広告代理店 | 広告運用 | コンテンツづくり・地域理解 |
| コンサル | 戦略立案・設計 | 日々の実務作業の代行 |
「全部外注」にすると、
- 社内にノウハウが蓄積しない
- 担当者が変わるたびにゼロから説明が必要になる
- 成果が出なくても何が原因かわからない
一方、「全部自社」でやろうとすると、
- 専門知識を学ぶ時間が捻出できない
- 設計が甘く、ムダな努力になりがち
- 担当者の異動・退職で運用が崩壊する
というリスクがあります。
地方では、そもそもデジタル人材の採用が難しいため、「自社完結」にこだわると、結局何も進まない状態に陥りがちです。
逆に、全部外注では「専門用語だらけのレポートを眺めるだけ」で終わり、経営判断につながりません。
地方企業に合う「ハイブリッド」の進め方
おすすめは、
- 戦略設計と初期の型づくりを外部に手伝ってもらう
- 日々の運用(写真撮影・簡単な投稿・事例作成)は社内で回す
というハイブリッド型です。
- 3〜6か月だけ外部の専門家に伴走してもらい、「MEOとコンテンツ運用の型」を作る
- その後は社内担当者が週数時間で回せるようにする
- 必要に応じて四半期に一度のレビュー・相談を依頼する
この形なら、コストを抑えながら社内にノウハウも残していけます。
最近は、副業のWebマーケターや地域に強い小規模コンサルと組み、「月数万円で設計とレクチャーだけ依頼し、実務は自社で行う」地方企業も増えています。
失敗しないための発注・依頼チェックポイント
「成果地点」と「KPI」を最初に必ず書面で決める
- ゴールを「ホームページを作ること」ではなく、「問い合わせを月〇件にすること」と定める
- そのためにどの指標を追いかけるか(電話数・フォーム送信数・検索順位など)を明確にする
- いつの時点でどの程度の成果を目標とするかを共有する
(例:6か月で問い合わせ1.5倍)
これらを契約前に確認しておくことで、「思っていたのと違う」というミスマッチを防げます。
地方企業の失敗パターンの多くは、「目的がサイト公開で止まっていた」「数字の定義を決めずに動き始めた」ことが原因です。
専門用語だらけのレポートをどう読み解くか
- わからない用語は、その場で「自社のビジネスでいうと何がどう変わるのか?」と質問する
- PVやクリック数だけでなく、「問い合わせ・電話・来店」につながったかを必ず確認する
- 改善案の提案があるかどうか(数字の報告だけで終わっていないか)を見る
レポートは「成果を一緒に改善していくための対話の材料」です。理解できないまま受け取るだけの状態にしないことが大切です。
「専門用語は要らないので、来月どこを変えると問い合わせが増えそうかだけ教えてください」と伝えられる関係性を作れるかどうかが、パートナー選びの重要なポイントです。
リソースが限られた地方企業のための優先順位ロードマップ
月3時間から始める「最初の3か月」でやること
まず取り組むべき3つの施策
- Googleビジネスプロフィールの整備
- 基本情報の正確化
- 写真10〜20枚の追加
- 週1回の投稿ルールづくり
- ホームページの導線と問い合わせ箇所の見直し
- 全ページから電話番号・問い合わせボタンにすぐ行けるようにする
- 「初めての方へ」「料金」「事例」を最低限整備する
- 月1本の事例コンテンツの作成と横展開
- ブログ1本 → MEO投稿 → SNS投稿へ展開
これらは、月3時間でも「やることを絞れば」十分に可能です。
逆にここを飛ばして広告だけ出しても、受け皿が弱く、費用対効果は上がりません。まず「無料〜低コストでできる土台づくり」に集中するのが、地方企業にとって最もリターンの大きい投資です。
これだけは捨ててよい作業・後回しでよい施策
- デザインの微修正に時間をかけすぎること
- すべてのSNSプラットフォームに手を出すこと(1〜2個に絞る)
- 難しい分析ツールの細かな数値にこだわること
まずは「基本情報の整備」と「問い合わせ導線の強化」に集中した方が、早く成果につながります。
分析ツールは、「問い合わせ数と、その前の導線(MEO・SNS・検索)」がざっくり追えれば十分です。細かい指標は、社内体制が整ってからで構いません。
半年〜1年で目指す「地域No.1」の状態
検索結果・口コミ・SNSがどう変わっているべきか
半年〜1年の取り組みの目安としては、次のような状態を目指します。
- 「〇〇市+サービス名」で検索したときにローカルパックで上位に表示される
- 口コミ件数が同業他社と比べて明らかに多く、平均評価も高い
- ホームページに、地域名を含む事例・コンテンツが10〜20本蓄積されている
- SNSで、お客様や地域の方とのコミュニケーションが継続している
この状態になれば、「ネット上での見え方」はほぼ地域No.1に近づきます。
さらにここから、有料広告やオンライン相談・予約システムなどを組み合わせることで、「商圏のすみずみ」までリーチを広げていくことができます。
社内体制と運用ルールの完成イメージ
- Web担当者(メイン1名・サブ1名)を決める
- 「毎月やることリスト」(MEO投稿、事例1本、SNS週1〜2本など)を文書化する
- 写真撮影・ネタ出し・投稿の分担を明確にする
- 四半期に一度、数字を振り返って改善点を話し合う場を設ける
ここまでできれば、「担当者が変わっても仕組みは回り続ける」状態になります。
地方企業にとってのゴールは、「特定の1人に依存せず、最低限の運用が組織として回る」ことです。その仕組みさえできていれば、あとは毎年少しずつ改善するだけで、Web集客は着実に“効く資産”に育っていきます。
よくある質問(FAQ):地方企業のWeb集客の不安と疑問
Q. 予算がほとんど出せません。それでも意味はありますか?
A. 意味はあります。
特にMEO(Googleビジネスプロフィール)は、基本的には無料で始められますし、写真投稿や口コミ返信も「時間」が主なコストです。
- 有料広告をいきなり始める必要はありません
- まずは、Googleビジネスプロフィールとホームページの基本情報整備から始めてください
- そのうえで、成果が出始めたら、少しずつ予算を増やしていく考え方で十分です
「0か100か」ではなく、「月数時間・数千円〜数万円の範囲でできること」から着実に取り組む方が、長期的には大きな差になります。
実際、初年度は「MEO+サイト導線改善+事例蓄積」だけに集中し、翌年から広告やツール導入に予算を回す段階的な進め方で成功している例が多く見られます。
Q. 担当者がいなくても、経営者一人でできますか?
A. スタート段階なら、経営者お一人でも十分可能です。
- 最初の3か月〜半年は「型を作る期間」と割り切る
- 自分でやりながら、「どの作業なら社内の誰かに任せられるか」を見極める
- 写真撮影や日々のネタ出しはスタッフに協力してもらい、投稿や全体管理だけ経営者が見る
最終的にはメイン担当者を1名決めて引き継ぐのが理想ですが、その前段階として、経営者自身が「Webの最低限の仕組み」を理解しておくことは大きな武器になります。
外部パートナーを入れる場合も、「何を頼み、何を自社でやるか」を判断できるようになり、ムダな出費を防ぎやすくなります。
Q. 業種的にWeb集客が向いていない気がするのですが?
A. 「まったく向いていない」業種はほとんどありません。
- 来店型ビジネス(飲食・美容・医療・小売・サービス業):MEOと口コミが直結します
- 工務店・リフォーム・士業・BtoBサービス:事例や実績の見せ方が重要です
- 採用目的:会社の雰囲気や働く人の顔が見えることで、求人媒体だけでは伝わらない魅力を伝えられます
確かに、扱う商品やサービスによって「向いている施策の比重」は変わりますが、「地域で選ばれる理由」をオンラインで伝えることは、ほぼすべての業種にとって意味があります。
むしろ地方では、「業界全体がWeb活用できていない」ケースが多いため、1社でも早く本格的に取り組めば、その業界・地域の“デジタルNo.1ポジション”を取れる可能性があります。
人口減少・人材不足が進むこれからの数年こそ、「地方だからこそできるWebの戦い方」を形にしていくタイミングと言えます。
まとめ:地方企業にとってのWeb集客は「都会の話」ではない
地方の中小企業にとって、Web集客は「都会の会社の話」ではなく、商圏が縮む時代における現実的な打ち手のひとつです。ポイントは、全国を相手にするのではなく、
- 「車で30分圏内」
- 「〇〇市+隣接エリア」
といった半径を明確に区切り、その中で真っ先に見つかり、安心して選ばれる存在をめざすことにあります。
そのための手順はシンプルです。
- MEOで基本情報・写真・口コミを整え、「検索されたときにどう見えるか」を整備する
- ホームページの導線と中身を見直し、料金・事例・よくある質問など、お客さまの不安に答える情報を用意する
- SNSで人柄や日常、地域とのつながりを見せ、「この会社なら任せられそうだ」という感覚を育てる
専任担当や大きな予算がなくても、月数時間の投下と、半年〜1年の継続で、検索結果や口コミの見え方は確実に変わります。大切なのは、一気に完璧をめざすことではなく、
- 優先順位を決める
- 小さく始める
- 続けられる形にする
ことです。
人口減少が進むいまこそ、地元で築いてきた信頼をオンラインにも丁寧に乗せていくことで、次の10年の土台が見えてきます。