初めてLPを作る小さな会社が押さえたい構成と最低限の要素
「LPとは何か」を1分で整理する
LP(ランディングページ)とは、広告や検索から来たユーザーを、1ページの中で特定の目的(資料請求・購入・会員登録など)まで誘導するための専用ページです。
小さな会社がまずLPから始めるべき理由は、短期間で検証しやすく、費用対効果が見えやすいこと、そして営業活動や広告施策と直結した成果を出しやすいことにあります。
ホームページは会社全体の情報を網羅する場として、LPは一つの目的に特化して短期でコンバージョンを得る場として使い分けます。
特に広告運用とセットで考えると、「広告文 → LPの見出し → CTA(行動ボタン)」まで一気通貫で設計できるため、クリックから成約までの導線を最適化しやすいのが特徴です。
近年はノーコードツールやAIの普及により、専門部署がない小さな会社でも、短期間でテスト用LP(MVP)を立ち上げることが一般的になっています。
LP制作の前に決めるべきこと
まず決めるべきは「1つのゴール」だけ
LPは目的を一つに絞ることでメッセージが明確になり、コンバージョン率(CVR)が上がりやすくなります。
小さな会社でよくあるゴールの例は、以下の4つです。
- 資料請求
- お問い合わせ
- 来店予約
- 商品購入・申込み
目的から逆算してKPIを決めます(例:資料請求30件/月、CTR10%、CVR5%)。広告からの流入数と期待CVRから、必要なアクセス数も算出します。
あわせて、「いつまでに」「どの媒体から」どれくらい獲得したいか(例:3か月で合計90件、リスティング広告中心など)を決めておくと、LPの構成やCTAの強さ、フォーム項目数の設計基準がブレにくくなります。
ゴールを複数置きたくなる場合も、「主ゴール(例:資料請求)+副ゴール(例:メルマガ登録)」のように、優先順位を明確にしておくことが重要です。
誰に向けたLPかを決める「ペルソナ」の作り方
「なんとなく全員向け」のLPにすると、訴求がぼやけてしまいます。初心者でも作りやすいペルソナの項目は、次の通りです。
- 基本情報(年齢・職業・立場)
- 悩み・不満
- どんな場面で検索するか
- 検討基準(価格・安心感など)
ペルソナは1〜2人に絞ったほうが、導線や文言を作りやすくなります。
可能であれば、既存顧客3〜5名への簡単なヒアリングや、競合LPのレビュー欄・口コミサイトを確認し、「実際に使われている言葉」をメモしておくと、キャッチコピーや見出しの精度が上がります。
さらに、「このペルソナならどんなキーワードで検索するか?」を想像し、それに近い文言をLPのタイトルや見出しに入れておくと、広告や検索流入との一貫性が高まり、クリック後の離脱が減りやすくなります。
最低限押さえたいLPの基本構成
全体構成(マップ)の基本
小さな会社向けのシンプルなLP構成は、次の流れが基本です。
- ファーストビュー
- ベネフィット紹介
- 詳細説明・サービス内容
- 実績・お客様の声
- 料金・プラン
- よくある質問
- クロージング(申込みエリア)
ユーザーは読み飛ばしながら見ることが多いため、各ブロックは短い見出しと要点(箇条書き)で見せ、重要情報はページ上部に集約します。
この構成は、AIDMAなどの行動心理モデル(注意 → 興味 → 欲求 → 記憶 → 行動)をベースにした典型的な流れです。「上から順番に読ませる」のではなく、「どのセクションから読んでも要点が分かる」ようにすることで、スクロール途中での離脱を減らしやすくなります。
各セクションごとの作り方
ファーストビュー:3秒で「自分ごと」にさせる
ファーストビューに入れる主な要素は、次の4つです。
- キャッチコピー(ベネフィットを直球で伝える)
- サブコピー
- メイン画像
- 目立つCTAボタン
避けるべきなのは、抽象的なキャッチコピーや会社視点の説明です。良い例は、「ターゲットの悩み+解決後の状態」を短く示す文言です。
スマホで確認すべきポイントは以下の通りです。
- 視認性(文字の大きさ・余白)
- ファーストスクロール内にボタンが見えているか
- 画像サイズや読み込み速度
CTAボタンの文言は「今すぐ無料で資料請求」「まずは相談する」など、行動を具体的に示します。ボタンの色は背景とコントラストが出るものを選びます。
メイン画像は、ターゲットの利用シーンやビフォー/アフターが一目で伝わるものを選び、「誰向けの」「何の」「どんな結果が出るサービスか」が3秒で分かる状態を目指します。
また、広告の見出しやバナーで使っているメッセージとファーストビューの文言を揃えることで、「クリックした内容と違う」というギャップを減らし、直帰率を下げやすくなります。
ベネフィット(得られる未来)を分かりやすく伝える
機能説明よりも、「導入後にどう変わるか」を示すことが重要です。小さな会社ならではの強みを整理するためには、次のような視点で考えます。
- 他社より速い点
- サポートの手厚さ
- 地域密着であること など
分かりやすく伝える型として、「Before(導入前の悩み)→ After(導入後の状態)」を箇条書きにする方法があります。図やアイコンで視覚化すると、一目で理解されやすくなります。
コピーを書く際は、「Problem(問題)→ Agitation(問題を放置した場合のリスク)→ Solution(解決策)」の「PAS」型を使うと、「よくある失敗や放置した場合のリスク → それを避ける具体策としての自社サービス」という流れがストーリーとして伝わりやすくなります。
数値や期間(例:「3か月で●●%削減」など)を出せる場合は、このセクションで簡潔に示しておくと、後の料金説明との比較で「コストパフォーマンスの良さ」を感じてもらいやすくなります。
サービス内容を「誤解なく」説明する
サービス説明のブロックに入れる最低限の要素は、次の通りです。
- 何を提供するか
- 誰に向けたサービスか
- どのように提供するか
導入までの流れは、「問い合わせ → ヒアリング → 納品」といったステップ表示で示すと、ユーザーに安心感を与えられます。写真や図解は、実際の作業風景やフロー図など、過度な演出を避けたものを使い、誤解を生まないようにします。
特にBtoBや高単価サービスの場合は、以下の点にも簡単に触れておくと、問い合わせ後のミスマッチやクレームを防ぎやすくなります。
- どこまでが標準に含まれるか
- どこからがオプションか
- 対応できないケースは何か
専門用語が多くなりがちな分野では、用語の横に一言の補足(カッコ書きなど)を添えておくと、専門外の決裁者にも理解されやすくなります。
信頼を高めるための「証拠」の置き方
用意しやすい信頼材料は、次のようなものです。
- お客様の声
- 事例・導入実績
- 資格・受賞歴・メディア掲載
お客様の声には、具体的な効果(数値や期間)とあわせて、顔写真や名前(許可を得たもの)を掲載すると信頼性が高まります。声の数が少ない場合は、詳細な事例を1〜2件深掘りして掲載する方法も有効です。
あわせて、以下のような情報があると安心材料になります。
- 導入社数
- 累計の実績年数
- 地域の商工会・業界団体への加盟状況
口コミがまだ少ない場合は、代表挨拶やスタッフ紹介、オフィス写真など「顔が見える情報」を補うことで、無機質なLPになることを防げます。
料金・プラン・条件をシンプルに見せる
料金表は選択肢を3つ以内にし、最低価格と推奨プランを明確に示します。
よくある質問であらかじめ説明しておくべき項目は、以下の通りです。
- 追加費用の有無
- 契約期間
- 解約・キャンセル条件
「高い」と思われにくくするには、費用対効果(導入後の期待できる成果)やサポート内容を、数値や時間を用いて示すと納得感が増します。
料金を非公開にする場合でも、「この規模ならだいたい●●円〜」「見積り無料・3営業日以内に提示」など、目安やプロセスを示さないと、不安から離脱されやすくなります。
また、「一番選ばれているプラン」にはラベルやデザイン上の強調を加えることで、迷っているユーザーの背中を押しやすくなります。
不安をつぶす「よくある質問」と安心材料
ユーザーが感じやすい不安は、例えば次のようなものです。
- 導入後に手間が増えないか
- 本当に効果が出るのか
- 費用が予想外に増えないか
FAQには、代表的な質問を3〜8個程度掲載します。返金保証やお試しプランを用意できる場合は、ここで明記して安心感を高めます。
このセクションは、「問い合わせ前に直接は聞きづらいこと」を代弁してあげる場所でもあります。たとえば次のようなポイントを記載します。
- 失敗例があった場合、どのように対応するのか
- サポート窓口は電話かメールか
- 対応時間はいつか
サポート体制とセットで示すことで、申込み直前の心理的ハードルを下げやすくなります。
また、法務的な観点で問題となりやすい「絶対」「必ず」などの表現は避け、客観性のある書き方を心がけることも重要です。
最後の一押し:クロージングと申込みフォーム
クロージングのセクションで書くべき主な要素は、次の3つです。
- 行動を促す一言(例:「まずは無料相談」)
- 申し込み後の流れ(例:「24時間以内に担当からご連絡します」)
- ベネフィットの簡潔な再掲
申込みフォームは、項目を最低限(氏名・連絡先・問い合わせ内容の簡単な選択肢など)に絞り、完了までのステップを明示します。個人情報の取り扱いについては、プライバシーポリシーへのリンクと同意チェックを必ず設置します。
フォームの離脱を減らすためのポイントは、以下の通りです。
- 必須項目は本当に必要なものだけにする
- 入力補助(プレースホルダーの例文、プルダウン選択など)を活用する
- 送信後のサンクスページで、次の行動(資料ダウンロード・追加案内など)を明確に示す
あわせて、スマホでの入力のしやすさ(キーボード種別の指定、ボタンサイズなど)も必ずチェックしておきます。
LP制作ツールと運用の進め方
初心者でも使いやすいLP制作ツールの選び方
ノーコードツールのメリットは、制作スピードの速さとコストの低さです。一方で、テンプレート感が出やすいことや、細かな表現に限界があることはデメリットといえます。
すぐに試したい場合は、Wix・Canva・STUDIOなどが候補になります。長期的に運用したい場合は、WordPress+LPプラグインや、専門のLPビルダーを検討するとよいでしょう。
外注する場合は、デザインと法務チェックを依頼し、内製する場合は仮説検証(MVP)を優先する方針が効率的です。
社内リソースが限られる小さな会社では、次のような流れが現実的です。
- ノーコードで4週間以内にMVP版LPを公開する
- 広告やSNSで小さく集客する
- 数値を見ながら改善する
ツール選定の際は、次の点が自社の運用体制に合っているかどうかを確認しておくと、公開後の運用が楽になります。
- スマホ対応のしやすさ
- 計測タグの設置可否
- チームでの編集・承認フローの有無
「作って終わり」にしないためのチェックと改善
公開前のチェックポイント
公開前に必ず確認しておきたいポイントは、次の6つです。
- スマホでの見え方
- 誤字脱字や表現の不備
- リンク・ボタンの動作
- 申込み完了までの導線
- 計測タグ(UTM・アクセス解析)の設定
- 法的表現の確認(景品表示法など)
改善サイクルの回し方
改善サイクルは、小さく・早く回すことが重要です。まずA/Bテストすべき要素は、以下の3つです。
- 見出し
- ファーストビューの画像
- CTAの文言
2〜4週間ごとに仮説を検証し、成果が出たパターンを伸ばしていきます。
改善用の予算と時間は、あらかじめ「制作費とは別枠」で確保しておくと、「公開したが何も改善できない」という事態を避けられます。
解析ツール(例:Googleアナリティクス)やヒートマップを使い、次のような点を確認しながら改善していきます。
- どこでスクロールが止まっているか
- どのボタンが押されていないか
1回のテストで変える要素は1つに絞るというルールを守り、地道に最適化していくことが、長期的な成果につながります。
まとめ:小さな会社にとってのLPの位置づけ
LPは「とりあえず作る」ものではなく、「誰に・何をしてほしいのか」を明確にしたうえで、必要な要素を一つずつ積み上げていくページです。
そのために押さえておきたいポイントを、あらためて整理します。
- ゴールは1つに絞り、KPIや期間、流入元まで数字で決めてから着手する
- ペルソナは1〜2人までに絞り、「どんな場面で・どんな言葉で検索しそうか」まで具体化する
- 構成は「ファーストビュー → ベネフィット → サービス内容 → 実績 → 料金 → FAQ → クロージング」の基本形から外さない
- 各セクションごとに「悩み → 解決 → 行動」のミニストーリーを意識し、読み飛ばされても要点が伝わる形にする
- ファーストビューとCTAは、広告文や検索キーワードとメッセージを揃え、3秒で「自分向けのページだ」と分かる表現にする
- 料金・条件・提供範囲はあいまいにせず、「どこまで・いくらくらい」をできる限り具体的に示す
- 信頼材料(声・事例・実績・顔が見える情報)を散りばめて、「怪しさ」を先に取り除いておく
- フォームの項目は最小限に絞り、スマホでの入力しやすさと完了後の流れをていねいに伝える
- ツールは「最短でMVPを出せるか」「自社で更新しやすいか」を基準に選び、まず1枚を4週間以内に公開する
- 公開後は、見出し・画像・CTAなど影響の大きい部分から、1要素ずつA/Bテストを回していく
小さな会社にとって、LPは「一度きりの作品」ではなく、数字を見ながら少しずつ磨き込んでいく営業ツールです。限られた時間と予算の中でも、ここで紹介した基本と手順を押さえれば、自力でも「問い合わせが来る1枚」を十分に目指せます。