中小企業の経営者が知っておきたいマーケティングの全体像

中小企業の売上が頭打ちになる原因の多くは、マーケティングの「全体像」が見えないまま、目の前の施策に振り回されていることにあります。営業や広告を増やしても、誰に何をどう売るのかが整理されていなければ、コストばかり膨らみ成果は安定しません。本記事では、中小企業の経営者が押さえておきたいマーケティングの全体像を、実践しやすいステップで整理していきます。

目次

中小企業の経営者が知っておきたいマーケティングの全体像

なぜ「マーケティングの全体像」を知らないと損をするのか

全体像を知らないままでは、手当たり次第に施策を増やしてしまい、コストと時間を浪費しやすくなります。限られた資源を最も効果的に使うには、「誰に・何を・どう届けるか」を戦略的に決める必要があります。これができていないと、売上やLTV(顧客生涯価値)が伸びにくくなり、大きな機会損失につながります。

また、営業任せ・担当者任せになりやすく、属人的なやり方から抜け出せません。「全体像」がないままWeb制作会社や広告会社に相談すると、個別サービスの提案に流されてしまい、核心である「どこに集中するか」の議論が抜けてしまいます。全体像を押さえていれば、外部パートナーとの会話でも経営者側が主導権を持ち、判断できるようになります。

「営業や宣伝=マーケティング」ではない理由

営業や宣伝は、マーケティングの一部に過ぎません。マーケティングは事業設計そのものであり、「誰に(ターゲット)・何を(提供価値)・どう売るか(チャネル・コミュニケーション)」を統合する上位概念です。営業活動が効率よく機能する土台をつくることが本質です。

具体的には、商品の設計(Product)、価格の決め方(Price)、どこで売るか(Place)、どう知らせるか(Promotion)といった4P全体を設計する活動がマーケティングです。営業は、マーケティングで定めた「狙うべき顧客」「訴求メッセージ」「提案の型」に沿って動く実行部隊と捉えるとイメージしやすくなります。

中小企業こそ全体像が重要になる3つの背景

  • 人手・予算が限られるため、選択と集中が必要であること
  • 顧客の情報収集がオンライン中心になり、発信と測定が必須になっていること
  • 市場が成熟し差別化が難しく、戦略的なポジショニングが成果を左右すること

加えて、日本の中小企業では「いいモノを作れば売れる」という前提が崩れつつあり、従来型の紹介頼み・営業頼みだけでは安定的な成長が難しくなっています。インターネット上で全国・他業種の選択肢と比較される現在、「どの市場に絞り」「何で選ばれるか」を設計しないと、価格競争に巻き込まれやすくなります。

まず押さえたい:中小企業のマーケティングとは何か

限られた人・時間・資金を「どこに集中させるか」を決める仕組み

マーケティングとは、資源配分の意思決定のことです。どの顧客セグメントに投資するか、どの施策に重点を置くかを決め、無駄を削っていきます。

「すべての顧客に対応する」「すべてのチャネルに出す」のではなく、「この1〜2種類の顧客」「この1〜2チャネル」に絞り込むための根拠をつくることが役割です。たとえば、既存顧客のリピートを伸ばす方が新規開拓よりも利益率が高いと分かれば、メール・LINE・アフターフォローに予算と人を集中させるといった判断がしやすくなります。

「誰に・何を・どのように売るか」を一枚図でイメージする

ターゲット(誰に)・バリュープロポジション(何を)・チャネルと施策(どう)を一枚の図にまとめると、社内で共通理解が生まれます。

この一枚図には、可能であれば「なぜそのターゲットなのか(市場環境・競合状況)」と「どんなKPIで成果を測るか」まで簡単に書き添えます。そうすることで、経営・営業・現場の会話が揃いやすくなります。経営会議や社内共有の場で毎回見返せる「マーケティングの地図」として機能させることが重要です。

やるべきことと「やらないこと」を決めるのがマーケティング

中小企業は、全方位に手を出すことはできません。「やらないこと」を明確にして、勝てる分野に集中することが成功の鍵です。

たとえば、「Instagramはやらない」「展示会には今年は出ない」「個人向けではなく法人向けに集中する」など、あえて切り捨てる領域を決めることで、残した領域に深く投資できます。フレームワークは、その「やらない理由」を論理的に説明するための道具でもあります。

ステップで理解する「マーケティングの全体像」

ステップ1:経営目標から逆算して「売上の作り方」を分解する

売上=客数×客単価×購入頻度でボトルネックを見つける

売上を数式で分解すると、改善すべきポイントが明確になります。客数が足りないのか、客単価を上げる余地があるのかを見ていきます。

さらに、「新規客数」「既存客のリピート回数」「アップセル・クロスセルの有無」まで細かく見ると、どこにテコ入れすべきかがよりクリアになります。単に「売上アップ」とするのではなく、「問い合わせ数を◯件から◯件に」「平均単価を◯円から◯円に」といった具体的なKPIに落とし込むことが、次のステップの前提になります。

「今年どこを伸ばすか」を決めるシンプルな考え方

優先順位を付け、最短で効果が出る領域に資源を振り向けます。

たとえば、リピート率を5%上げる方が新規顧客を20%増やすよりもコストが低いのであれば、「今年は既存客フォロー強化の年」と決めるといった考え方です。このように「今年の重点テーマ」を先に定めておくことで、その後のターゲット選定や施策の取捨選択で迷いにくくなります。

ステップ2:市場と自社をざっくり把握する(3C・SWOTの活用)

顧客・競合・自社を紙1枚で整理する方法

顧客ニーズ、競合の強み、自社の強みを一覧化して、差別化ポイントを探します。

3C(Customer/Competitor/Company)の枠組みで、顧客の不満・要望、競合が提供している価値・価格帯、自社が得意とする技術・サービスを書き出します。重要なのは、「顧客が本当に困っていること」「競合が手薄な領域」「自社の強み」が交わる部分を見つけることです。そこが、狙うべきポジションの有力な候補になります。

自社の強みとチャンスを見つける簡易SWOTのやり方

強みと外部機会の掛け合わせに注力することで、優先領域を決めます。

まず「強み(Strength)」「弱み(Weakness)」「機会(Opportunity)」「脅威(Threat)」を箇条書きにします。その中から、「強み×機会」の組み合わせを2〜3個に絞り込みます。たとえば、「技術サポート力が強い × DX補助金でIT導入ニーズが増えている」であれば、その交点に資源を集中するといった判断になります。弱みや脅威の分析も大切ですが、限られた時間の中では、まず「どこで戦うか」を決めるために、攻めの領域から優先して検討することが現実的です。

ステップ3:「誰に」売るかを決める(ターゲット・ペルソナ)

中小企業が狙うべきは「狭くて深い」ニッチ市場

広く浅くではなく、ニッチでNo.1を目指す方が効率的です。

「業界」「企業規模」「地域」「課題の種類」などで市場を細かく区切り、競合が少なく、自社の強みが刺さる層を選びます。たとえば「製造業全般」ではなく、「従業員50人以下の地方製造業の生産管理担当者」といったレベルまで絞り込むと、メッセージもチャネルも決めやすくなります。ニッチでシェアを取ることで、紹介や口コミも生まれやすくなります。

実在の顧客1人をモデルにペルソナを作る手順

年齢・職業・課題・購入プロセスを具体化し、施策の検証材料として活用します。

実際に取引のある「理想的なお客さま」を1人選び、その人の「役職」「日常業務」「直面している悩み」「情報収集の方法(検索・SNS・展示会など)」「社内決裁の流れ」までを書き出します。ペルソナが決まると、「どんな記事を書くか」「どの媒体に広告を出すか」「商談でどの資料を渡すか」といった設計を、一貫性を持って行いやすくなります。

ステップ4:「どう見られるか」を決める(ポジショニング)

価格競争から抜け出すための「一言で言える強み」

他社と違う「一言」を用意し、社内外で統一して伝えます。

その「一言」は、顧客の頭の中で「◯◯といえばこの会社」と結び付くラベルになります。たとえば「中小製造業専門のWebマーケ会社」「地域密着・即日対応の修理会社」など、ターゲットと価値がセットでイメージできる表現が理想です。この一言を決めておくことで、Webサイトや営業資料、名刺の肩書きなど、すべての接点で同じ印象を伝えられます。

競合との違いをシンプルなマップで可視化する

品質・価格・専門性などの軸で競合と比較し、自社の立ち位置を明確にします。

縦軸・横軸を一つずつ選び(例:価格の高さ×専門性の高さ)、自社と主要競合をマッピングしてみます。「低価格・浅い専門性」のゾーンが競合で埋まっているなら、「中〜高価格・高専門性」に振るなど、空いているポジションを狙うイメージです。図にすることで、「今どこにいて、どこを目指すのか」を社内で共有しやすくなります。

まとめ:中小企業の経営者が押さえるべきマーケティング思考

本記事では、中小企業の経営者が押さえておきたいマーケティングの全体像を、「誰に・何を・どう売るか」という視点から整理してきました。ポイントは、個々の施策に飛びつく前に、経営目標から逆算して「どこで売上を伸ばすのか」を決め、限られた人・時間・資金の集中先をはっきりさせることです。

そのうえで、3CやSWOTで市場と自社を俯瞰し、「狙うべき顧客」と「自社らしい強みの活かしどころ」を絞り込むことが、ターゲット設定とポジショニングの前提になります。広く浅くではなく、ニッチで深く価値を届ける市場を選び、「◯◯といえば自社」とひと言で伝わる立ち位置をつくることが、価格競争から距離を置く近道です。

マーケティングは、やることを増やす作業ではなく、「やること」と同じくらい「やらないこと」を決める経営の仕組みです。この考え方を押さえておけば、新しい施策や提案が出てきたときも、「自社の戦略に合うか」「本当に優先すべきか」を冷静に判断できるようになります。結果として、現場の負荷を増やさずに、売上と利益の伸びを着実に積み上げていくことが可能になります。

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この記事を書いた人

Webマーケティング業界10年以上のフリーランス。
「低コストでも、効果のあるWebマーケティング」をご提供することをモットーに、多岐にわたる業種の会社さまのご支援を行っております。
※2025年1月に法人化しました。