Web施策のスケジュール管理は、経験豊富なチームでも気を抜くとすぐにほころびが出ます。公開日だけ決めて走り出した結果、「なぜか毎回、納期直前でバタつく」「どこで遅れたのか誰も説明できない」といった状況に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
Webサイト制作やLP、広告運用、システム連携など、Web施策はタスク同士のつながりが複雑で、関係者も多くなりがちです。その割に、スケジュール管理の方法は「なんとなくのExcel管理」「担当者の頭の中頼り」のままというケースも少なくありません。
この記事では、Web施策のスケジュールが遅れがちな背景を整理しながら、「どこをどう見直せば現実的な計画に変えられるのか」という視点で、具体的な管理のポイントを解説していきます。現場でありがちなつまずきどころを一つずつ分解し、今日から試しやすい対処法をまとめました。
Web施策のスケジュールが遅れがちな時に見直したいポイント
なぜWeb施策のスケジュールは遅れやすいのか?
Web施策ならではの遅延要因
Web施策は関係者が多く、要件が曖昧になりやすい点が特徴です。企画段階で合意が不十分だったり、デザイン案の微修正が続いたりすると、作業の先送りや連鎖的な遅延が発生します。さらに、外部システム連携やブラウザ差異など、実装特有の不確定要素も多く、想定外の手戻りが出やすいことも遅延要因となります。
また、オンライン広告・コンテンツ公開・システム改修など、複数のWeb施策を同時に進行させるケースも多く、ひとつの案件の遅れが他案件の着手タイミングや担当者の空き時間に波及しやすい構造になっています。リモートワーク環境では口頭確認が減る一方で、ツール上の記録が不十分な場合も多く、「誰が何を待っているのか」が見えにくくなりやすいことも、Web施策特有の遅延要因と言えます。
「気づいたら納期ギリギリ」になる共通パターン
よくあるパターンは、次の3つです。
- 公開日だけが決まっていて工程が雑であること。
- タスクが大まかで依存関係が見えていないこと。
- クライアント・法務・セキュリティなどの確認リードタイムを見込んでいないこと。
これらが重なると進捗の遅れに気づくのが遅れ、対応の余地がなくなります。
さらに、「担当者ごとの工数上限を見ていない」「他案件との兼務状況が共有されていない」といったリソース視点の抜けも典型的です。その結果、スケジュール表上は線が引いてあるだけで、現実的にこなせるかどうかの検証が行われず、末期になってから「そもそも回らない計画だった」と気づくパターンにつながります。
まずは現状把握:どこでスケジュールが崩れているのか?
企画〜要件定義フェーズで起きがちなズレ
要件が曖昧、優先順位が不明確、関係者の合意が取れていないことが主な原因です。要件追加を口頭でやり取りし、記録が残らないケースも多く、後工程で齟齬が判明します。
特にWeb施策では、KPIやターゲット像、コンテンツの役割分担(Webサイト、LP、広告、メールなど)があいまいなまま走り出し、「あとからマーケティング側の方針が変わる」「法務・セキュリティレビューでNGが出る」といったことが起こりがちです。要件の粒度が揃っていない(具体度がメンバーごとに違う)状態でWBSを引いてしまうと、後半フェーズで大幅な設計変更が発生し、スケジュール崩壊の起点になります。
デザイン・制作フェーズでの手戻り
デザインの方向性が二転三転すると、実装側に大きな負担がかかります。デザインの粒度不足(ワイヤーのみで詳細未定)や、配色・文言の確定遅れが手戻りを生みます。
また、デザインレビューの基準が共有されていないと、「想像していたトーンと違う」「スマホで見た印象が想定と違う」といった主観ベースの差し戻しが増えます。Web施策ではPC・スマートフォン・タブレットなど複数デバイス前提のため、各ブレイクポイントでどこまで表現を揃えるか、どのコンポーネントを共通化するかといった設計を前もって決めておかないと、後からの修正が雪だるま式に膨らみます。
実装・テスト・公開直前でのトラブル
ブラウザやデバイス差、外部APIの仕様変更、ステージング環境と本番環境の差異などが、公開直前に発覚することがあります。テスト工数が不足していると、不具合対応で公開が遅れます。
さらに、SEO、計測タグ、フォーム連携、セキュリティ設定など、目に見えにくい「裏側の作業」が抜け落ちがちです。これらは多くの場合、マーケティング部門、情報システム部門、外部ベンダーなど複数部門にまたがるため、誰が最終責任を持つか曖昧なまま進み、「タグは入ったが計測テストをしていない」「本番ドメインでの動作確認がギリギリになった」といった、最後の最後での発覚につながります。
見直しポイント1:タスクの分解とWBS設計
ざっくり工程だけで進めていないか
「企画→デザイン→実装」といった大項目だけで管理していると、どこで止まっているかが見えません。タスクは必ず作業単位に分解し、誰が何をいつまでに完了させるかを明示します。
Web施策では、例えば「LP制作」と一言で言っても、構成案作成、原稿作成・校正、画像選定・撮影指示、ワイヤー作成、デザインカンプ、コーディング、動作テスト、計測設定など、複数の専門タスクに分かれます。ここまで分解して初めて、担当者アサイン、所要日数、依存関係を現実的に検討できるようになり、「気づいたら止まっていたタスク」を減らせます。
Web施策におけるWBSの基本構成(企画〜リリースまで)
典型的には、次のような流れに分けます。
- 企画(要件定義、KPI設定)
- 構造設計(情報設計、ワイヤー)
- デザイン(ビジュアル、レスポンシブ対応)
- 実装(フロントエンド、バックエンド)
- テスト(機能・表示・UX)
- 公開・運用
加えて、Web施策ならではの要素として、
- ドメイン・サーバー準備
- 計測・解析設定(GA、GTM等)
- SEO・OGP設定
- レギュレーションチェック(法務・ブランド)
- リリース後の効果測定と改善サイクル
もWBSに含めておくと、抜け漏れが減ります。WBSを作る際は、少なくとも大項目レベルでこれらの工程を行として持ち、プロジェクト固有のタスクをぶら下げていくのが有効です。
「3階層」でタスクを分解して見えるリスク
大項目→中項目→小項目の3階層で整理すると、見落としやすい依存関係や確認ステップ(文言確定、画像素材受付、SEO設定など)が明確になり、手戻りリスクを事前に把握できます。
例えば「テスト」という大項目の下に、「機能テスト」「ブラウザ表示確認」「フォーム送信・計測確認」といった中項目を置き、さらに「主要ブラウザ○種類」「主要デバイス○パターン」などの小項目に分けると、必要なチェック観点と時間を具体的に見積もれます。同様に、「要件定義→承認」「デザイン→承認」「仕様変更→影響分析→再見積もり」といった承認ステップを小項目として明示することで、スケジュールに現れにくい作業時間を可視化できます。
見直しポイント2:工数見積もりと依存関係の整理
楽観的な見積もりになってしまう3つの理由
楽観的な見積もりが生まれる代表的な理由は、次の3つです。
- 過去実績を無視した希望見積もり
- 確認作業の時間の過小評価
- バッファを入れないスケジュール圧縮
これらを避けるには、実績ベースで見積もり、確認リードタイムを明記し、バッファを設けることが重要です。
Web施策は「ツールやテンプレートを使えば早くできそう」という思い込みから、特に制作・実装工数を軽く見積もりがちです。実際には、コンテンツや素材の待ち時間、レビューの往復、環境設定など「作る以外の時間」が相当部分を占めます。過去プロジェクトのWBSと実績時間を比較し、「どこで何%オーバーしがちか」を把握しておくと、楽観的な見積もりを防ぎやすくなります。
デザイン・実装・確認の「待ち時間」をどう見込むか
各工程に「承認待ち時間」を明示して日数を見込むことが重要です。例えば、デザイン承認に3営業日、コンテンツ確定に5営業日、法務チェックに7営業日など、実績から標準値を設定します。
このとき、「社内承認」「クライアント承認」「外部パートナーからの素材提供」など、待ち先の種類ごとに標準リードタイムを決めておくと、案件ごとに繰り返し活用できます。また、承認者が多い場合は“並列承認”が可能か、“順番承認”しかできないかも事前に確認し、スケジュール上の並行可能性を検討することが重要です。
依存関係を洗い出す簡単なチェックリスト
依存関係を整理する際は、次の観点から一つずつ書き出します。
- このタスクは、他の何が完了していないと始められないか
- 外部提供物はいつ確定するか
- 承認フローは誰を経由するか
依存の有無を可視化すると、遅延の起点が見つかります。
Web施策では特に、「コンテンツが確定しないとデザインが固まらない」「デザインが固まらないと実装着手できない」「計測要件が固まらないとタグ設計ができない」といった、上流の不確定性に多くのタスクがぶら下がっています。WBS作成時に各タスクに「前提タスク」の欄を設けて記入しておくと、ガントチャートに落とし込んだ際に自動的に依存関係を線で表現でき、ボトルネック候補を視覚的に把握できます。
見直しポイント3:ガントチャートとツールの使い方
スケジュール管理が破綻しやすい「Excelの限界」
Excelは柔軟ですが、依存関係の自動更新や複数メンバーの同時編集、通知機能が弱く、変更管理が煩雑になります。小規模でも同時編集や履歴追跡が必要であれば、専用ツールのほうが有効なケースが多くなります。
特にWeb施策のようにタスクの前後関係が頻繁に変わるプロジェクトでは、「ひとつのタスクの延期がどこまで波及するのか」を即座に把握する必要があります。Excelでこれを手作業で更新していると、更新漏れやバージョン違いが発生し、「ツール上のスケジュールと現場の認識がずれている状態」が常態化します。リアルタイム共同編集や変更履歴の自動記録ができる環境へ移行することで、このギャップを大幅に減らせます。
ガントチャートで押さえるべき4つの情報
ガントチャートでは、次の4点を必ず表示します。
- 開始日・終了日
- 担当者
- 依存関係
- 進捗率
これだけで全体の遅延ポイントとボトルネックが把握しやすくなります。
加えて、Web施策のガントチャートでは「マイルストーン(要件確定、デザインFIXなど)」を明示的にプロットし、それぞれの到達期限をひと目で分かるようにしておくと、関係者全員が「今どこに向かっているのか」を共有しやすくなります。進捗率は単なる感覚値ではなく、完了タスク数/全タスク数や、予定工数に対する実績工数など、定義を決めて運用することが重要です。
Web施策と相性の良いツールの選び方(専用ツール vs スプレッドシート)
予算や案件数が少なければ、スプレッドシートでテンプレート化して運用する方法も有効です。複数案件やチームでの同時管理、通知やワークフローが必要であれば、Asana、JIRA、Backlog、Lychee Redmineなどの専用ツールを検討してください。
スプレッドシートは、プロジェクト概要、タスクリスト、担当者、ステータス、期限、進捗率などの基本情報をまとめるのに適しており、関数や条件付き書式を活用すれば、期日超過タスクの自動色分けや進捗サマリーの自動計算も可能です。一方、専用ツールはガントチャートとチケット管理が一体化しており、コメント、ファイル添付、通知などを一元管理できるため、案件数やメンバー数が増えるフェーズでは、コミュニケーションロスの削減と変更管理の効率化に大きく寄与します。
見直しポイント4:マイルストーンと「余裕」の設計
公開日だけ決めてもスケジュール管理はうまくいかない
公開日だけでは途中の遅延を把握できません。各フェーズごとにマイルストーン(合格点)を設けることが重要です。
マイルストーンは「いつまでに何が完了しているべきか」を、具体的な成果物とセットで定義します。例えば、「○月○日:トップページデザイン案FIX」「○月○日:計測要件定義完了」「○月○日:ステージング環境での総合テスト完了」といった形でチェックポイントを細かく配置することで、早期に遅れを検知し、リスケジュールやスコープ調整の判断材料にできます。
Web施策に必須のマイルストーン例
Web施策では、次のようなマイルストーンが代表的です。
- 要件確定
- ワイヤー承認
- ビジュアル確定
- 機能実装完了
- 総合テスト開始
- ステージング承認
- 本番公開
加えて、
- ドメイン・サーバー設定完了
- 計測タグ実装・検証完了
- 法務・セキュリティレビュー完了
- 運用マニュアル・引き継ぎ完了
なども重要なマイルストーンです。これらを初期段階でスケジュールに組み込んでおくと、公開直前になってから「ドメイン設定が間に合わない」「計測が正しく動いていない」といった致命的な抜け漏れを防ぎやすくなります。
バッファをどこに・どれくらい置くべきか
重要なのは、工程単位でバッファを設置することです。目安としては、設計段階に対して10〜20%、テスト段階に対して20〜30%程度を見込むと、公開直前のトラブルに備えやすくなります。
特にWeb施策では、外部依存(クライアント承認、外部API、他システム連携)が多い工程に厚めのバッファを持たせるのが有効です。全体の最後にまとまったバッファを置くよりも、「要件定義」「デザイン」「実装」「テスト」といった主要フェーズごとに小分けでバッファを配置したほうが、遅れの早期検知と調整がしやすくなります。また、複数案件を抱えるメンバーには、カレンダー上で予備時間としてブロックしておく運用を取り入れると、想定外のタスク発生時に吸収しやすくなります。
見直しポイント5:進捗管理の仕組みとコミュニケーション
週次・日次で見るべき進捗指標
週次ではマイルストーンの進捗とリスク、日次ではブロッカー(作業停止の原因)とその解消予定を確認します。進捗率だけでなく「残作業量」を重視してください。
Web施策では、「完了タスク数」「遅延タスク数」「今週中に承認が必要なタスク数」「クリティカルパス上のタスクの遅延状況」などを定点で見ると効果的です。週次レビューの中で、「どのタスクが誰の承認待ちになっているか」「どのタスクが別案件とのリソース競合を起こしているか」を可視化し、優先順位の付け替えや担当変更を検討できる場を設けることで、遅延の長期化を防げます。
ディレクター・デザイナー・エンジニア間の情報共有ルール
成果物の受け渡しフォーマット、承認フロー、Slackやチケットのテンプレートを決め、誰が何を責任を持って決めるかを明文化します。
具体的には、「ワイヤーはどのツールで共有し、どのタイミングでFIXとみなすか」「デザイン修正依頼はどのチケットに、どの粒度で書くか」「仕様変更時は誰の承認が必要か」といった運用ルールをプロジェクト開始時に合意しておきます。また、仕様や決定事項は口頭やチャットのログに埋もれさせず、必ずWBSやチケットに反映させる“単一の情報源(Single Source of Truth)”を決めておくと、後からの解釈違いを減らせます。
リモート環境でスケジュール管理を破綻させないコツ
短いデイリースタンドアップと、デジタルでの実績記録(チケット更新、コメント)を徹底します。非同期で読める議事録と決定事項の記録が鍵になります。
リモートでは雑談レベルの情報共有が減るため、「誰が今どのタスクで詰まっているか」が見えにくくなります。毎日10〜15分程度で「昨日やったこと」「今日やること」「困っていること」を共有する場を設け、ブロッカーを早期に顕在化させることが重要です。同時に、会議やチャットで決まったことは即座にタスクやスケジュールに反映し、ツールを見れば進捗が分かる状態を維持することで、時差や働き方の違いがあってもプロジェクトを破綻させにくくなります。
見直しポイント6:複数Web施策を同時進行するときのコツ
優先度とリソース配分をどう決めるか
ROI、公開影響度、クライアント重要度で優先度を決め、リソース(人・時間)を割り当てます。重要タスクには専任を置くことで、並行案件同士の干渉を防げます。
また、「どの案件のどのフェーズがクリティカルか」を一覧で見える化し、同じメンバーにクリティカルフェーズが重ならないよう調整することが重要です。週単位で「誰がどの案件に何時間使えるか」を棚卸しし、優先度の高い施策に対しては時間ブロックを設定して割り込みを受けにくい状態を作ると、マルチタスクによる生産性低下を防ぎやすくなります。
案件管理とスケジュール管理を一体で考える
案件管理ツールでリソースの稼働率を見える化し、過負荷を防止します。スケジュールは案件を横断して調整する視点が必要です。
Web制作会社やインハウスチームでは、複数のクライアント案件・自社施策を同じメンバーが兼務することが一般的です。案件ごとのWBSだけを見ていると、「各案件ではギリギリ成り立っているが、全体としては完全にオーバーコミット」という状態に陥りやすくなります。案件管理とスケジュール管理を統合し、「誰がどの期間にどの程度の負荷か」をダッシュボードで把握できる仕組みを用意することで、案件受注・着手タイミングの判断や、外注・増員の検討がしやすくなります。
「全部急ぎ」に振り回されないための線引き
緊急度と重要度に基づく判断軸をチームで共有し、本当に優先すべき案件以外は後回しにする合意を作ります。
例えば、「法的なリスクや障害を伴うもの」「キャンペーン開始日が確定しており、移動が効かないもの」を最優先とし、「単なる要望ベースの変更」「効果検証が十分でない追加施策」は原則として次フェーズに回す、といった基準を明文化しておくと、「全部急ぎ」という状況に振り回されにくくなります。
Web施策のスケジュールが崩れがちな背景には、「ざっくりした工程管理」「楽観的な見積もり」「承認や確認の待ち時間の軽視」「複数案件のリソース衝突」といった、構造的な要因が重なっていることが多いです。
まずは、タスクを3階層で分解し、WBSに「要件定義〜テスト・公開」までの基本工程と、計測・SEO・法務チェックなどの抜けやすい作業を組み込みます。そのうえで、過去実績に基づく工数見積もりと依存関係の洗い出しを行い、ガントチャート上で開始日・終了日・担当者・依存関係・進捗率を可視化することで、「どこで止まりやすいか」を具体的に捉えられるようになります。
公開日だけをゴールに据えるのではなく、「要件確定」「ワイヤー承認」「ビジュアル確定」「ステージング承認」などのマイルストーンを早い段階で定義し、各フェーズごとにバッファを割り振ることも欠かせません。週次・日次の進捗確認では、完了率だけでなく「残作業」と「ブロッカー」を明確にして、ディレクター・デザイナー・エンジニア間の情報共有ルールに沿って記録を一本化します。
さらに、複数施策を並行する場合は、案件単位ではなく「メンバー単位の負荷」を見える化し、優先度の基準をチームで共有することが、恒常的な遅延を防ぐための前提になります。
すべてを一度に変える必要はありません。まずは、次のプロジェクトで「タスク分解」「マイルストーン設定」「承認リードタイムの明記」のうち、取り入れやすいものから試し、実績を振り返りながら、自社に合ったスケジュール管理の型を育てていくことが重要です。