マーケティングの現場では、気づけば日々の“火消し”に追われ、戦略的な施策が後回しになりがちです。そこで鍵になるのが、「週単位」でのマーケティングタスク管理です。1週間を起点に、目標とタスクを結びつけ、月曜に優先度を整理することで、複数チャネルや他部署対応を抱えながらも、数字に直結する仕事へ着実に時間を配分しやすくなります。
週単位でマーケティングタスクを管理する時のコツ【概要】
なぜ「週単位のタスク管理」がマーケティングに有効なのか
マーケティングは複数チャネルの運用や他部署との連携が多く、日次だと全体を俯瞰しにくく、月次だと対応が遅れてしまいます。週単位は調整と実行のバランスが良く、優先度を速やかに反映できる点で有効です。
特に、セールスやカスタマーサクセス(CS)などからの新規依頼が週末〜週明けに集中しがちな組織では、「今週やるべきこと」と「来週以降に回すこと」を月曜日の段階で仕分けできるため、突発対応に追われにくくなります。また、週次報告(ウィークリー)を前提にすると、上長や経営層がプロジェクトの状況を定期的に把握でき、軌道修正のタイミングを逃しにくくなります。
日次でも月次でもなく「週」を基本単位にする理由
週は調整やレビューを定期的に行いやすく、急な依頼も翌週の計画に組み込みやすい単位だからです。
アジャイル開発の「スプリント」(1〜2週間)の考え方と同様に、1週間は「計画 → 実行 → 振り返り」を一通り回すのにちょうどよい長さとされています。日次では戦略的な施策の進捗が見える前に終わってしまい、月次では問題発見が遅れます。週単位であれば、日々の細かなタスクと月次KPIの双方を接続しやすく、「やりっぱなし」や「月末の帳尻合わせ」を防ぎやすくなります。
この記事で学べること
この記事では、週の設計、月曜プランの作り方、デイ・シーミング、ツール運用、週次レビュー、現場での対処法までを実践的にまとめています。
あわせて、AsanaやTrelloなどのツールを使ったタスクの「見える化」の方法や、スクラムのスプリントのようにチームで週単位のリズムを共有する手法にも触れます。
週単位マーケティングタスク管理の基本設計
1週間=168時間という前提をどう活かすか
1週間の時間をブロックで可視化し、業務・会議・余裕時間をあらかじめ決めておくと、無理なスケジュールが減ります。
ローラ・ヴァンダーカムの「168時間管理」の考え方では、まず1週間を15〜30分単位で記録し、「実際に何に時間を使っているか」を把握します。その上で、
- コア業務(企画・制作・分析など)
- コミュニケーション(会議・1on1・外部折衝)
- 管理・雑務(経費精算、事務処理)
- バッファ(急ぎ対応・トラブルシュート)
といったカテゴリごとに、事前に時間枠を確保しておくと、週の途中で予定が崩れにくくなります。
マーケターは会議やチャット対応で時間を奪われがちですので、「集中作業ブロック」を1〜2時間単位でカレンダーに予約しておくと効果的です。
週のゴール設定:KPIとタスクをつなぐ考え方
週のゴールはKPIに直結する成果(例:リード獲得件数、CTR改善ポイントなど)に設定し、そこから逆算してタスクを配置します。
たとえば、月次目標が「MQLを◯件創出」であれば、週次では「この週に必要なMQL数」と「そのための施策(LP改善、広告調整、メール配信など)」を明確にします。さらに、
- プロジェクト単位のアウトカム(例:新LP公開、キャンペーン設計完了)
- それを構成するタスク(例:ワイヤー作成、コピー案出し、レビュー依頼)
を分けて設計し、「週終わりに何が完了していれば前進とみなせるか」を定義しておくと、週次レビューで評価しやすくなります。
ダッシュボードを活用し、KPIとタスク進捗を同じ画面で見られるようにしておくと、数字と行動の結びつきが明確になります。
「プロジェクト」と「タスク」を分けて設計する
プロジェクト(キャンペーン単位など)にタスクを紐づけ、優先度と担当を明確にすることが重要です。
具体的には、
- プロジェクト:SNSキャンペーン、ウェビナー、ナーチャリングメールシリーズなどの「成果物・テーマ単位」
- タスク:記事構成作成、バナー依頼、配信設定、レポート作成などの「実行単位」
として分離します。
AsanaやTrelloでは、プロジェクトをボードまたはリストとして作成し、その中にタスクカードを配置する形で運用できます。さらに、ラベルやタグで
- 優先度(高・中・低)
- 所要時間(15分、30分、2時間など)
- 実行場所(@オンライン、@外出)
を付けておくと、週の中で時間が空いたときに「今できるタスク」をすぐに選べます。
月曜日にすべてが決まる:週のスタート時のプランニング術
月曜朝に必ずやるチェック項目
月曜朝には、次のようなステップで週のプランニングを行うと効果的です。
- ダッシュボードで先週のKPI(CV数、CPA、開封率など)を確認する
- 完了・未完了タスクを整理し、未完了分を今週のどこに組み込むか再配置する
- 今週フォーカスするプロジェクト(例:新キャンペーン立ち上げ、改善スプリント)を3つ程度に絞り込む
- セールス・CS・開発など他部署と、「何をいつまでに出すか」をすり合わせる
GTD(Getting Things Done)の考え方でも、週次レビューで「頭の中を空にし、リストを最新化する」ことがシステム運用の鍵とされています。マーケティングの現場でも同様に、月曜朝のプランニングによって、その週の判断軸をチームで共有しやすくなります。
セールス・CSなど他部門からの依頼を捌く優先度ルール
他部門からの依頼は、緊急度と影響度でランク付けし、SLA(応答時間)の基準を設けておくと対応が安定します。
例として、
- 緊急度:障害・クレーム対応 > 重要案件サポート > 通常施策相談
- 影響度:売上インパクトが大・中・小
といった2軸マトリクスで依頼を評価し、
- 「緊急かつ高インパクト」:当週中に対応
- 「緊急だがインパクト小」:標準SLA内で対応
- 「緊急ではないがインパクト大」:翌週の優先プロジェクト枠で対応
といったルールを決めておきます。
依頼はTrelloやAsanaの「インテーク用ボード/フォーム」に集約し、月曜のプランニングでまとめて優先度を決定すると、チャットベースの場当たり的な対応を減らせます。
週単位のタスクリストの作り方(粒度と量の目安)
タスクは15分〜2時間単位を目安に分け、1人あたり週20〜30件程度に収めると運用しやすくなります。
1タスクが2時間を超える場合は「構成だけ」「初稿だけ」のように分割し、逆に5分未満のものは「メール返信まとめ」「請求書処理まとめ」のようにバッチ化します。タスクリストを作る際は、
- 「今週必須」「できれば今週」「やらない(バックログ)」の3カテゴリに分ける
- 所要時間の合計が、実働時間の7〜8割に収まるように調整し、残りをバッファとする
- デイ・シーミングで決めた曜日テーマに沿って、大まかにタスクを割り付ける
といった工夫をすると、週の途中でのリスケジュールも行いやすくなります。
デイ・シーミングで集中力を最大化する
デイ・シーミングとは何か(マーケター向けの整理)
デイ・シーミングとは、曜日ごとに仕事のテーマを決め、思考の切り替えコストを減らす手法です。
Twitter創業者のジャック・ドーシーも、曜日ごとに「管理」「開発」「マーケティング」などのテーマを持たせて働いていたことで知られています。マーケターは、企画・数字分析・ライティング・会議など脳の使い方が異なる仕事を行き来しがちです。そのため、「火曜は制作」「水曜は広告運用」のようにテーマを固定すると、深い集中状態をつくりやすくなります。
また、デイ・シーミングは「他部署からの依頼をどの曜日にさばくか」といったチーム間調整の基準としても機能し、カレンダーを見れば「いま何モードで仕事をしているか」が一目で伝わりやすくなります。
典型的なマーケターの「1週間テーマ」例
マーケターの1週間のテーマ設定例は、次のようなイメージです。
- 戦略・企画の日
- コンテンツ制作の日
- 広告・オペレーションの日
- 顧客対応・社内連携の日
- レポート・改善の日
具体例としては、
- 月:戦略・企画(キャンペーン設計、ペルソナ・カスタマージャーニーの見直し)
- 火:コンテンツ制作(記事・ホワイトペーパー・LP原稿)
- 水:広告・オペレーション(入札・クリエイティブ調整、MAシナリオ編集)
- 木:顧客対応・社内連携(セールスMTG、CSフィードバック反映)
- 金:レポート・改善(分析・仮説出し・翌週プラン作成)
といった形です。
チームリーダーのように複数領域を兼務する人は、半日単位でテーマを分ける(午前=会議、午後=制作など)ことで、ある程度の柔軟性と集中の両立が図れます。
タスク・バッチングで「細切れ作業」を減らす
タスク・バッチングとは、性質の近いタスクをまとめて処理することで、細切れ作業と切り替えロスを減らす方法です。
- メール・チャット返信は、1日2〜3回の時間枠にまとめる
- バナー依頼や原稿チェックなど「レビュー系タスク」を連続させて行う
- レポート作成と分析、仮説出しを同じブロック内に配置する
といった形で、「同じ脳の使い方」をする仕事を一気に片付けていくと、集中力が持続しやすくなります。
まとめ:週単位で「忙しさの質」を変える
週単位でタスクを設計する発想は、「場当たりで忙しい1週間」から「意味のある前進が積み重なる1週間」へ切り替えるための土台になります。
1週間=168時間という前提で時間の使い方を可視化し、KPIから逆算した週のゴールを決める。そのうえで、プロジェクトとタスクを分けて整理し、月曜朝のプランニングで「今週やること・やらないこと」をはっきりさせる。さらに、デイ・シーミングで曜日ごとのテーマを決めておけば、集中すべき時間と、周囲と調整する時間のリズムも整っていきます。
忙しさの質を変えるには、「いつ・何を・どこまでやるか」を週という単位であらかじめ決めておくことが欠かせません。ぜひ、自分やチームの実情に合わせて、ここで紹介した考え方を少しずつ組み合わせ、自分たちなりの週次運用の型をつくってみてください。
